トラウマを治すには… ②

詩織さんは、仕切り直しと

コーヒーを一口飲んでから話し始める。


「…ふぅ、さて一つ目から行こうか

 孝介くん、一つ目は?」


「…姉を無条件に信用すること」


「そう正解、じゃどう言う事か

 自分で考えて見て、

 それがトラウマを克服する

 助けになるから」


詩織さんの言葉を受けて、

自分で考えて見る。


姉さんの事を信用してるかと聞かれたら、

迷う必要もなく信用していると答えるだろう

それが、ダメなのか…?


「再会した時の事を思い出して見て?」


「えっ?えっと、再会した時は、

 有名な先輩が隣に引っ越してきたな〜と

 思っててそこから、

 姉さんだとわかってそこから…あれ?」


「…何か気づいた?」


「いやその…そう言えば姉さんを

 すぐに家にあげたなって…?」


「…それは、下心あって?」


「いえ!違います!!

 …あれじゃ何で?」


「私の記憶では、君は、そんな性格じゃ

 なかったはずだけど」


確かに前の自分は、余り部屋に人を

入れたくなかったはずだ。

なのに、姉さんに会ってから、

姉さんだけは、無条件で入れる様になった。


もちろん最初は、少し抵抗感を持っていたが

姉だと分かるとそれも、消え去った。

…あ、これが姉を無条件に信用する事。


「うん理解したようね、

 じゃ二つ目、まぁこれは、

 わかりやすいわね」


「はい、俺は姉さんと離れたくなくて

 その…告白しました。」


「うん、そうだね」


そうだ…何でおかしいと感じてなかったんだ

普通に考えて、離れたくないからと

告白するのは、おかしい。


「うんそれじゃ最後は、

 いないはずの家族と会話をする

 これは、現実が辛すぎて架空に

 家族を作っちゃってそこに、

 逃げ込んでしまう症状だね

 孝介くん理解できる?」


はいと孝介は、頷く。

最初は、不思議に思わなかった。

気がついたら、

いつもお姉ちゃんが居てくれて笑いかけてくれた。…でも周りは、居ないと言う。


今となっては、おかしい所だらけだったが…


「そうよかった。

 これは、長い時間治療してきたから、

 だいぶおさまってきてると思うけど?

 最近は、どう?」


孝介は、考える。

最近は、いつも姉さんが居てくれた

おかげだろうか?

大丈夫だと思う…あっ…


「思い当たる節があった?」


「えっと…花火大会の日

 家から出る時に姉さんに挨拶した様な…

 …いや、その日いるはずないし

 あの姿は…」


「…その姉とお話しした?」


「…いや、いってきますと言っただけです。」


「そう…うんわかったわ、

 自分で気づけたし、症状的には、

 軽いから大丈夫だと思うけど

 一様、経過観察は、させてもらうね。」


「はい、わかりました。」

 




「…さて孝介くん、

 君の症状を見直して見たけど

 どうかしら?」

 

「…はい、自分が思っている以上に、

 酷いなって印象です。」


「そう、でも安心して、

 君は、この事を知って理解したんだから、

 これは、治療するにあたってとても、

 大きな一歩なんだから

 …ちょっと待ってね」


そう言って、詩織さんは、

棚から何かを取り出してこちらに来る。


「今の君なら、大丈夫だと思うから、

 マスターから預かってた物を渡すわ」





「…これは……鍵?」


詩織さんに渡された物は、

どこか懐かしいさを感じた

ストラップを付けた鍵だった。

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