姉は離れ、孝介は振り返る ①

「…えっ…姉さん…」


「ごめんね…こうくん」


俺は、鈴姉さんの言葉に呆然とする。




その日は、いつもの通り学校から、

帰って来て姉さんと一緒に夕ご飯を食べてた


「…あの…こうくん、

 食事の後話したい事があるの

 時間もらってもいいかな?」


「えっ?うんいいけど」


姉さんの真剣な様子に少し驚いたが

孝介は、断る理由もないので了承した。




「…それで、話って?」


食事も終わり、片付けも終わらせた後

姉さんと問いかけた。


「あのね…こうくん

 私…こうくんのお部屋に

 来るのやめようと思う」


「…えっ…姉さん…」


「ごめんね…こうくん」


姉さんは、申し訳なさそうにこちらを見る。


「…それってつまり、

 姉さんは、俺と一緒に

 居たくないって事?」


「そう言う訳じゃないの…」


「それじゃあ、どう言う訳?

 やっぱり、告白したから…」



『鈴も決めかねてるって事でしょ

 このまま、こうちゃんのそばに居るのかを

 だって、居るつもりなら

 告白を受けるなり拒否するはずだから』


孝介は、日菜の言葉を思い出して項垂れる。

(やっぱり、姉さんは俺と一緒に居たく…)

そう悪い方に悪い方にと思考が向かうが、


スッといつの間にか隣に来ていた姉さんが

優しく俺の手を握った事により、

冷静を取り戻した。


「…こうくん、

 ごめんね言葉が足りなかったね

 私の話を聞いてくれる?」


「…うん」


姉さんは、語り出した。

実は、バイトというか仕事で書いている。

小説の仕事の締め切りが日程的に

やばいらしく数日間かかりっきりになる…


その為、うちに来てご飯の準備とかする

時間も取れないらしい。


その話を聞いて、孝介はホッとする。


「…あのだからね?」


姉さんが申し訳なさそうにこちらを見る。


「わかったよ姉さん、

 それに、いつもご飯をつくってもらって

 申し訳なく思ってたから」


「ううん、それは私がやりたくて

 やってたから…」


姉さんは、ホッとした表情になった。


「それにしても、そんなに忙しいなら

 食事とか大丈夫?

 あれだったら、俺が作るけど」


そう言うと慌てたように

「いや!大丈夫よ

 …まぁ私は、何とかするから」

と姉さんは言った。


その様子を見て心配になり、

姉さんに重ねて言うと

姉さんは、申し訳なさそうにこう言った。


「あの…こうくん、本当は嬉しいんだよ

 だけど…その…こうくんに会うとその…

 こく…あの日の事を思い出して、

 原稿に身が入らないの…」


孝介は、最初はよく分からなかったが

徐々に姉さんの言った言葉の意味がわかった。

 

「…もしかして、俺が告白したから、

 それを考えてしまって原稿に

 集中できなかったの?」



姉さんは、一度は否定しようとしたが

結局、…こくりと頷いた。


「そっか…ごめん」


孝介としては、

鈴姉さんとこれからも一緒にいる為に

告白したのだが、結果姉さんの重荷になって

逆に離れる事になってしまい。


申し訳ないやら、情けないやら

孝介は、鈴に対して頭を下げて謝る。


そんな孝介に鈴は、優しく語りかける

「…こうくん頭を上げて…ね?

 だってこれは、

 自分が返事をしてないくせに

 それを引きずった私の責任だから」


「姉さん…」


「だから、私が謝らせて…

 こうくんは、勇気振り絞って告白して

 くれたのに、返事を返せなくて

 …ごめんねこうくん…」


姉さんが申し訳なさそうに謝る。


「…そんな」


「…でもね、これもいい機会だと思うの」


「いい機会?」

と聞き返すと姉さんは、こくりと頷く。


「うん、この離れてる期間にね

 私自身の気持ちを見つめ直そうと思うの

 そうすれば返事を返せると思うから

 …だから、待ってて」


そんな姉さんの言葉を聞いて、

「…うん」としか返事ができなかった。

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