空虚な星空③ 【日菜視点】 

「日菜〜そろそろ孝介くんよんで

 来てくれる?」


「わかった!!」


私は、こうちゃんを呼びに

寝ている部屋に向かう。


「トントン、こうちゃん入るよ」


ガチャ

私は、ドアを開けて中に入ると

異変に気がつく。


「…こうちゃん?」


こうちゃんが…いない?

部屋の中は、誰もおらず毛布が

雑に落ちているだけだった。


「えっとトイレに行ってるだけかな?」


口では、そう言うが胸騒ぎがする。

私は、お母さん達の所に急いで向かう。



「お母さん!!」


「ん?あれ孝介くんは?」


「えっと部屋に居なくて」


お母さんの顔が厳しくなる。


「どうした?」


「お父さん」


私達の様子がおかしいと気づいた

お父さんと里紗がこちらに近づいて来た。


「あのねこうちゃんが…」


私は、今の状況をお父さん達にも伝えた。

「それは…探した方がいいね」


頷き合って探しに行こうとする。

そんな私達に向かってシスターが歩いてくる。


「ここに居たのねそろそろ花火始まるわよ」


「シスター!!そんな場合じゃ

 こうちゃんが」


「孝介くんがどうしたの?」


「居なくなったんです!!

 部屋にいった…

「孝介くんなら先に待ってるわよ」」


「へ?」


「だから、花火見える場所で

 先に待ってるわよ」


それを聞いて私達は、ほっと息をはく


「そうよかったわ…それじゃ私達

 も行きましょう」


私達は、こうちゃんの所に向かって歩いて行く。



「なるほどね、だからみんな焦ってたのね

 …でもそうね、GPSは持たせてるけど

 もう少し対策した方がいいかしら?」

「いえあんまりガチガチにすると

 ストレスになるわ」

「でも安全の方が大事でしょ?」


目の前を歩くお母さんとシスターが

話し合ってる。


「気になるかい?」


「…うんん」


お父さんの言葉を否定する。

本当は、気になる…でも、

私があそこに参加しても何の意味もない


「嘘ね、お姉ちゃん気にしてるくせに」


里紗がフンと嫌味たらしく口に出す。


「確かに私も孝介の事は可哀想だと思うわよ

 だけどお姉ちゃんは、構いすぎだと思う」


「…そんな事」


「そんな事あるでしょ、

 …なんで孝介ばっか…」


「…里紗!!」


パンパン

「…はいはい、ケンカしない落ち着いて」


私が里紗を怒ろうとした時、

お父さんが私達を止める。


「喧嘩してない、ただ里紗が…」


「わかってる、里紗」


「私は!……ごめんなさい」


里紗が反論しようとするが

お父さんに見つめられた為か

渋々ながら謝る。


「うん謝れて偉いね、

 日菜も許してくれるかい

 里紗も寂しかっただよな?」


「なっ!お父さん違う!!」


里紗が恥ずかしそうにお父さんに

抗議する。


「……寂しかったんだね

 ごめん里紗」


「そんなんじゃないからッ!

 お姉ちゃんも謝らないで!!」

里紗が顔を真っ赤にして怒る。




「…何してるのかしらあの子達」


「仲良しでいいじゃない」


詩織とシスターは、後ろをチラリと見て

談笑する。


「そうね、あの人も楽しそうだし

 いつも仕事で寂しそうにしてたから」


「そう…ん?」


シスターが前を見る。


「孝介くん?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る