鈴の憂鬱② 【鈴視点】
「こうくんが…おかしい…」
本当は、否定したかったけど
何故か理解してしまった。
「まぁおかしいと言うと聞こえが悪いから、
問題を抱えてると言った方がいいかな」
「問題を…ならなおさら
そんなこうくんに吹き込んだ
人間が許せない」
どんな理由でこうくんを
あんな風にしたんだろう許せない
私は、机の下の拳を握りしめる。
「まぁ貴女は、そうでしょうね」
詩織さんは、紅茶を口に含む。
「あっ!ちなみに、
本当に私は、吹き込んでいないからね」
「それは…一応わかりましたけど、
もしかして…吹き込んだ人間を
知ってるんじゃないんですか?」
「えぇ知ってるわよ」
あっさりと目の前の詩織さんは答える。
「…誰ですか?」
「答えるとでも?」
目の前の彼女を睨み付ける。
「そんなに睨みつけないでよ〜
それに私は、悪くないと思っているもの」
「なっ!?…なにを…?
こうくんが傷ついてるんですよっ!!」
「そうね」
「そうねって…ッ!!」
「じゃ逆に聞くけど貴女は、
孝介を傷つけたことはないの?」
「…それは」
わかってる私が、こうくんの心に
傷をつけたのは…だから…だからこそ
私は、こうくんが傷つかないように、
守らないと…
「それにあの子は、
悪意があって行動した訳じゃないと思うし
あの子なりに、今の状況を進めようと
した結果じゃないかしら」
「悪意が無かろうと
こうくんを傷つけるのは、許せません
私は、姉なんだからこうくんを守る
義務があるんです。」
「はぁ…それは、傲慢と言うものよ
人って言うのは、
どう転んでも生きていれば
傷つくものでしょ?
それは、貴女だってそう」
「………」
「だから、私たちが孝介くんにする事は、
守ることではないと思うけど」
「…守る事じゃない…」
「私は、そう思ってるし行動してる。
まぁ私としては、孝介くんに対して
今まで過保護にしすぎたと思ってる。
でもそれじゃいつまで経っても
立ちおれないと今は考えてるわ」
そう言うと詩織さんがふっと微笑む
「だから、鈴ちゃん
私から貴女にアドバイスと言うか希望?
もし貴女が本当に孝介くんの事を思うなら
今の関係を見直して見ない?」
「こうくんとの関係を…」
「まぁ考えて見て?
今の貴女なら考えられると思うから」
・
・
・
「今日は、ありがとうございました」
私は、玄関から外に出る。
もう少し話しをしたいと思ったが
あちらに用事があるらしく
お開きになった。
「いいのよ、私も守秘義務があるから、
深い事は言えなかったし
それより、最後に聞きたい事が
あるんだけどいい?」
「はい?かまいませんけど」
「もし、孝介くんが何も問題なく
真剣に告白してきたらどうしてた?」
「えっ!?それは、もちろん……」
もちろん…もちろん…その先の言葉が出てこない。
私は、どうしてただろう......。
その光景を見ていた
詩織さんは微笑みながら、
「フフ、…なるほどね
その態度でわかったわ
それじゃまたね」
そう言って、
さっさと玄関の扉を閉めてしまった。
「えっあの!?」
私は、高鳴る胸を押さえながら立ちすくむしかなかった。
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