4.5章 間話

間話 鈴の憂鬱 【鈴視点】

「…失礼します」


「いらっしゃいさぁ上がって、

 今日は、誰も居ないから」


「…はい、お時間をとって頂き

 ありがとうございます。」


「フフ、いいのよ」


私は、夏休みもあと数日で終わるこの日に

目の前にいる日菜の母親である東条詩織に

会いに来ていた。


「…フフ相当思い悩んでいるようね」

先を歩きながら詩織さんは、

そう聞いて来た。


「………」


「前にうちに来たのは、

 いつだったかしら?」


「…登校日の日です」


「あぁそうだったそうだった

 貴女達の高校の登校日だったわね。

 あれ?それじゃあの時貴女

 学校休んでたの?」


「…用事があって」


「そうなのね…はいこちらに入って」


そう促され案内された部屋に入ると

その部屋は、

様々な言語の本がずらりと並べられ

その部屋の中央にテーブルと

椅子が置いてあった。


「そこの椅子に座って

 あっ紅茶だけど大丈夫?」


「…はい」


椅子に座り詩織さんから、紅茶をもらう

その紅茶を一口飲むと

少しホッとした。


それで自分は、緊張していたのだと気づく


「うん落ち着いたようね

 …それで、今日再び来たのは、

 孝介くんの事?」

 

それに、こくりと答える。


「それで何を聞きたいの?」


「………」


「無言じゃ何も答えられないかな」


色々聞きたい事がある。

だが私が聞きたいのは、


「私…こうくんに付き合ってほしいと

 言われました」


「ヘェ〜それは、おめでとう」


「……驚かないんですね」


「あら?驚いてるわよ

 あの孝介くんがね〜

 それで?惚気を聞かせに来たの?」


詩織さんは、フッと笑った。

それを見て無性に腹が立つ。


「…こうくんに、

 何を吹き込んだんですか?」


私がそう言うと

目の前に座った詩織さんは、

ん〜と首を傾げ、


「吹き込んだ?いいえ私は、何も」


「嘘言わないで、

 じゃ何でこうくんが告白して来るの?」


「…知らないわね、

 それこそ孝介くんに

 聞いてみればいいんじゃない?」

 

「…聞けるわけないでしょ、

 あんなにも…辛そうな顔で告白してくる

 あの子に…」


私は、あの時のこうくんの顔を思い出し

胸が締め付けられる。


「…なるほどね、

 それで、誰かから何か吹き込まれたと」


「ええ」


「それで何で私?」


「こうくんをあんなにも

 動揺させる事ができるのは、

 数人しかいません

 その中で一番可能性があるのが」


「私ってこと?」


「はい」


「……日菜とかは、考えなかったの?」


「日菜がそんな事するはずない

 あの子は、こうくんを傷つけない」


「…なるほどねちなみに、

 孝介くん自体に問題あるとは、

 考えなかったの?」


「それは…」


考えなかったわけではない

何故なら最近こうくんに対して、

違和感を感じていたからだ。


こうくんと話していると

時々私を見ているようで見ていない

と感じる時があったり


一番感じたのは、天体観測の時

こうくんが語った思い出


『星空と一緒によね』


そんな記憶は、私の記憶にはない

だけどこうくんは、本当にあったように

語っていた。


「…考えたようね」


そんな言葉を詰まらせた私を見て、

詩織さんは、ハァーと一つため息をついて、


「確かに、話を聞いて私も

 孝介くんに誰かが何かを

 吹き込んだのだと思うわ」


「…やっぱり…」


「でもね、それで告白ってものおかしい」


「……おかしい?」


「その通りおかしい、

 おかしいのよ…」


「それは…個人的な考えですか?

 それとも…?」


「両方よ、個人としても、

 である東条詩織としても」


私は、目の前の女性を見る。

彼女の顔は、さっきまでの穏やかな顔から、

一転、真面目な医者の顔に変わっていた。



 







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