恋はおちるもの

「...ただいま」


ガチャと玄関を開ける。

孝介は、日菜と話した後

花火も見ずに一直線に家に帰って来ていた。


その顔は、お世辞にもいいとは言えず、

心の中は、ぐちゃぐちゃに

こねくり回されていた。


(......ハァ)


心の中でため息をつきながら

孝介は、靴を脱ぎ玄関からリビングに

向かうがリビングには、明かりがついており


「お帰りこうくん」


「…姉さん…」


そこには、

長い黒髪をまとめてポニーテールし

エプロンをつけた。

鈴が立っていた。


「フフ、こうくんごめんね

 数日も出かけて」


姉さんは、そう言いながら微笑む


その姿を見た孝介は、

言いようもない衝動にかられ

鈴を強く抱きしめる。


「えっ!!

 どどどどうしたのこうくん?」


鈴は、突然の事に驚きながらも

孝介の様子を観察する。


「...震えてる、

 こうくん何か嫌なことでもあったの?

 それならお姉ちゃんに言って、

 私がその原因を叩き潰すから」


鈴は、目を細め孝介に見えないように

妖しく笑うが


「いや…ただ…姉さんが居なくて…」

 

「…へ?わっ私!?」


鈴は、予想外の言葉に一瞬動揺するが

嬉しさが湧き上がってくる。


「うん…」


「そう、ごめんね

 寂しかったね」


鈴は、高なる気持ちを抑えつつ

優しく孝介の背中をやさしく撫でる。

        




孝介が鈴に抱きついて、

数分たち落ち着いた雰囲気になり

孝介の震えが落ち着き始めたとき


「落ち着いた?」


鈴は、優しく問いかける。


「えっ?あっ!…うん

 姉さんごっごめん!!」


孝介は、我に帰り

鈴から離れる。


「フフ大丈夫よ

 もう少し…抱きついてもいいのよ?」


そう言い両手を広げて鈴は、微笑む。


「だっ大丈夫!」

孝介は、それを顔を赤くしながら、

拒否する。


「そう?こうくん

 …いつでも胸貸すからね?」


そう姉さんは、優しく微笑んだ。

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