間話 目覚める

コンコン

「日菜〜起きなさい朝よ〜」


...モゾモゾ


「はぁ...入るわよ」


ガチャ

「日菜?起きてるなら起きてるって

 言いなさい」

「......起きてる」


日菜は、布団から頭だけ出して呟く


「どうしたの?

 風邪でもひいた?」

「...違う」

「そう...違うのね」


(これは、重症ね)


「今日、バイトは?」

「...休み」

「そうなの?

 だったら、ゆっくりしてもいいわね」


詩織は、ベットに腰掛け日菜の頭を撫でる。

日菜は、それを抵抗もせずに

受け入れている。


「孝介くんと何かあった?」


ビクッと日菜の体が揺れる。


「正解のようね」


日菜は、布団に頭を引っ込め

小さく「違う」と呟く


「そう?体は正直なようだけど

 …って、なんかエロいわね

 今の言葉」

「………」

「無言にならないでよ

 恥ずかしいじゃない」


日菜がくるまっている布団をパシパシ叩く。


「...もしかして、

 逆に何もなかったから、

 落ち込んでるの?」

「………」


少しの間無言の時間が過ぎた後

日菜がポツリと話し出した。


「...なんでいっつも空回りするんだろう

 こうちゃんのそばに居たはずなのに

 どんどん離れていく」


「...でも、そうなるのは、

 覚悟の上だったんじゃないの?」


「そう...だね」


「日菜は、孝介くんに遠慮しすぎだと

 思うんだよね。」


日菜は、頭を出して母親の方を見る。


「でも...こうちゃんは」


「ほら、遠慮してる

 孝介くんとこのままどんどん離れて

 行ってもいいの?」


「いや!!」


日菜は、体を勢いよく上げ叫ぶ

その目は、諦めたくないと

訴えかけていた。


「そうよね、

 あのね確かに孝介くんには、

 大きな問題があるわ」


詩織は、日菜の顔を優しく手で包み込む


「でもそれは、彼の問題であって

 日菜、あなたがこれ以上背負い込む

 必要はないの」


「...でも」


「私は、実は後悔してるの

 あの時、何故止めなかったのか

 日菜が苦しむ事になると

 わかっていたのに」


詩織は、日菜を優しく抱きしめ

優しく語りかける。


「だから、日菜、

 これからは、我慢しなくていいの」


「…本当にいいのかな?」


「ええ、いいのよ

…もっと早く言ってあげればよかったね」


詩織の胸に頭を沈めて、

考え込んでいたが、覚悟を決めたのだろう

日菜は、顔を上げる。


その目は、爛々と輝いていた。


「…血は、争えないのね

 ああ、可愛い可愛い私の娘

 …覚悟は、決まった?」


日菜は、コクリと頷く。


「…もう手遅れかもしれない」


手をぎゅっと握り締める。


「こうちゃんも絶対に傷つけるし

 もしかしたら、一生嫌われるかも...

だけど、私はやるよ」



詩織は、日菜の頭をポンポンと叩き

「……頑張ってね」

と部屋から出て行った。


「……ありがとう、お母さん」







 鈴...あなたには、絶対に渡さない」




 




 

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