間話 姉のいない日
「...おはよう」
孝介は、寝室から出て
いつものように鈴に挨拶をするが
その返事が返ってくる事はなかった。
「あっ...姉さん...居ないのか」
鈴は、実家に用事があるらしく
三日前から帰省していた。
その様子は、前に帰って行った時と
全然違っていたが何か心境変化があったのだろうか?
「ハァ...取り敢えず飯食べよう」
孝介は、朝食を作ろうとキッチンに向かう
キッチンは、鈴がいないからか
どこか寂しく感じる。
「何かあるかな......あっしまったな」
冷蔵庫を見るとそこは、
姉さんが置いていってくれた
おかずもとうの昔に無くなっており、
食材もない空の状態だった。
「あー買い物いつ行ったけ?」
思い出そうとするが、
買い物に言った記憶がない。
「ハァ...後で買い物に行かないとな」
溜息をついて、身支度を整えようと
洗面台に向かい顔を洗う。
「...あれ?」
いつもタオルが置いてある場所に
向かって手を伸ばすがそこには、何もない。
「あっ......使ったまま補充してなかった」
しまったな〜と頭を描きつつ
タオルを取りに行く。
その後も、孝介は、家事をしようとするが
ことごとく失敗してしまう。
「ハァ、姉さんがいないとこんなにも
出来ないのか...」
孝介は、寝室のベッドに座り
頭を抱えて項垂れる。
孝介が家事を出来なくなってしまったのも、
当たり前ではある。
鈴と再会し家にあげるようになってから、
家事は、ほとんど鈴がやっていた。
もちろん孝介だって、
最初の頃は、ちゃんと家事をしていたが、
まるで遅効性の毒のように、
徐々に徐々に
鈴が家事をやる比率が多くなり
気づけば食器の位置から、洗剤の予備まで
鈴好みの配置にされ気づけば
孝介が気付かぬうちに自分の部屋にも
関わらず家事をするのが
極端に減っていた。
そんな生活を孝介は、
日々送っていたのだ
家事スキルが著しく低くなっていても
仕方ない事だろう。
孝介は、ふと視線を上げると
何かを見つける。
「あっそういえば、ここ数日
飲んでなかったな」
孝介が立ち上がり
袋に近づくと中を開けた。
「うーん、結構残ってるな
...まぁいいか、無理に飲めとも
言われてないから」
そう言って。
袋を再び置き身支度を整える。
「さーて、どこ行こうかな?
コンビニでもいいけど」
「あっそういえば、
今日花火大会だったな
出店も出てるだろうし
夕飯はそこで買おう」
そう言いつつ孝介は、玄関を開ける。
『行ってらっしゃい』
「ん?」
孝介は、声の方を振り向いてニコリと笑う
「行ってきます...お姉ちゃん」
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