知り合い?

「ご注文は、以上でしょうか?」


「はい、鈴さんもいいですか?」


「…はい」


「…わかりました、少々お待ち下さい」


頭を下げ孝介は、

爺ちゃんの元に向かう。


「爺ちゃん、注文」


「おお、わかった」


注文を受け取り爺ちゃんは、

飲み物の準備をする。

孝介は、チラチラと鈴の方を気にしている。


「ねぇ孝介くん」

「はいなんですか?詩織さん?」


カウンター席に座っている

詩織さんは、チラッと

姉さんが座る場所を見て


「…あの子確か、西宮鈴ちゃんって

 言ったかしら?日菜と同級生の」


「ええそうです」


「ふーん綺麗な子ね。

 ……好きなの?」


「グフッ!何言うですか!!」


「あら図星?

 だってさっきから、

 チラチラあの子の事見てるじゃない」


ニヤニヤと詩織さんは、見てくる。


確かに孝介は、鈴を見ていたが

それは、心配からだった。

何故なら今の鈴は、何かを恐れてビクビクしているからだった。


今日、姉さんから担当の人に会うと言うのは、聞いていた。

その時は、何かを怖がったりしていなかった。


(姉さんは、

 何をあんなにビクビクしてるんだろう?

 思い当たるのは…爺ちゃん?)


姉さんは、この喫茶店を避けていた。

一度、誘って断られた時に聞いてみたことがあるが、

『行くのが嫌ってわけじゃないんだけど

 …お祖父さんが嫌がるかもしれないから』と言っていた。


「まぁ色々あるんですよ」


詩織さんが、テーブルに肩肘をつけて、

「ふ〜ん、その色々を知りたいんだけどね」

と孝介を探る様に見る。


「なんでそんなに知りたいですか?」


「うーん、ここにあの子が人を

 連れて来たのが珍しいのと

 ……のライバルに、なりそうだし」


後半が上手く聞き取れなかったが、

それよりも前半の方が気になった。


「あの子って、

 ねっ…鈴さんと一緒に来た人ですか?」


「…ええ、あの子は「孝介」」


詩織さんの言葉を遮るように、

爺ちゃんが俺を呼んだ。


「余りお客様の事を

 聞くのは感心せんな」


「うっ…ごめん」


「それと詩織ちゃんも」


「…ごめんなさい」


爺ちゃんが俺と詩織さんを嗜めると

注文された物をお盆に乗せ

鈴姉さん達の所に向かおうとする。


「あっ…爺ちゃん俺が持って行くよ」


「大丈夫だ、

 それよりコーヒーを一杯淹れてみろ

 やり方は、教えただろう」


「えっなんで急に?」


「…気まぐれだ、

 詩織さん悪いが、孝介を見といてくれ」


「あ…はい!わかりました」


嗜められて、落ち込んでいた詩織さんは、

気を取り直して返事を返した。


それを見て、

爺ちゃんは、颯爽と姉さん達の所に向かっていった。


孝介は、その背中を見て何か違和感を

感じていたが、


「ほら!孝介くん、さっさとコーヒー作る

 準備をしなさい」


「えっ…でも」


「ほら、早く」

そう言って、立ち上がった

詩織さんが急かして孝介の

背中をグイグイ押してくる。


「わっわかりましたから」


その勢いに負けて、

孝介は、カウンターに押し込まれ

早速コーヒーを淹れる事になった。






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