夏の距離 ③

昼のピークも過ぎ落ち着いた喫茶店


「店員さ〜ん、飲み物おかわりお願いします〜」


「私は、チーズケーキを」


「あら、食べ過ぎじゃない?

 太るわよ」


「大丈夫、…大丈夫よ」


「…目を背けないの」


孝介は、目の前の二人を見て、

呆れていた。


「…………詩織さん、日菜姉」


「あら、店員さん注文は以上よ」


「はぁ…」


孝介は、目の前にいる祖父に、注文を書いた紙を渡す。


爺ちゃんは、笑いながら受け取り

チーズケーキを直接、

日菜姉に渡さず、何故か俺に渡して、

飲み物を準備を始める。


「…お待たせしました。

 こちらチーズケーキになります。」


「はーいありがとう、こうちゃん

 …?どうしたのそんな顔をして」


「なんで、カウンターに座ってるのに

 わざわざ俺を通すの?」


詩織さんと日菜姉は、カウンターに座っている。


その前にには、爺ちゃんも目の前にいるのだならば、わざわざ俺に注文せず、

爺ちゃんに直接言ってもいいと思うのだが、


「いいじゃないか、

 今日は、お客さんも少ないし、

 孝介が人気者と言う証拠じゃないか」


はっはっはと笑いながら爺ちゃんが、

飲み物を渡してくる。


「ほら、できたぞお客さんに」


「だから、ハァ…お待たせしました。」


「はいありがとう」


詩織さんがくすくす笑いながらお礼を言う

何か、家族がバイト先に来てるみたいで

なんだか恥ずかしい。


「孝介くん恥ずかしがってる〜」


「もうお母さんあんまりこうちゃんを

 いじめないで」


日菜姉が詩織さんを嗜める。


「あら、日菜だってノリノリだったじゃん」


「うぐっ、…まっ、まぁそんなことより

 こうちゃん、これをはい」


「何これ?」


言葉に詰まった日菜姉は、

話題をそらそうと1枚の紙を渡してきた。


日菜姉に渡された紙を見ると

そこには、

『夏の星空を見よう、天体観測』と

書いてあった。


「あのね、うちの天文学部が

 天体観測するイベントするの

 場所は、教会で」


詳しく話を聞いて見ると

天文学部が天体観測をしようとしたが

学校の屋上では、

街中の明かりでうまく見れなかったそうだ。


それを生徒会に相談があったらしく

雪弘先輩から、

『それなら教会でするか?

町外れの所に教会があるから、

星が結構見れるぞ』

と言う提案があり、

今回の天体観測が決まったらしい。


「それでよければ、

 生徒会の皆さんや保護者の方もどうぞ

 って誘われてね、こうちゃんどうする?」


孝介は、日付を確認し、

この日は、予定がない事を確認し

参加する旨を伝える。


「わかったわ、参加っと

 ありがとうこうちゃん

 ってもうこんな時間!!」


「どうしたの?急に」


「これから友達と買い物行く予定なの

 私、忘れてた急がないと」


そう言って、日菜姉は、

目の前のチーズケーキをすべて口にいれ

席を立つ。


「もぐもぐ…ごちそうさま、

 こうちゃんお会計」


「あっ私が払うわよ、

 気をつけて行って来なさい」


「ありがとうお母さん大好き、

 それじゃこうちゃん、マスター

 もまたね」


そう言い日菜姉は、急いで店を出て行った。


「忙しないわね、ごめんなさいマスター」


「はっはっは、元気が良くていい事じゃないか」


「元気良すぎるのも問題だけどね」

そう言葉を挟みつつ

孝介は、皿などを片付けていた。


すると

「ーーー、ここは!ーー」


「ん?」


外から、何処か聞き覚えのある声が聞こえた。


「どうしたの孝介くん」


「いや、知り合いの声が聞こえた様な」


そう言い外を見ようと入り口の方に向かうと

ちょうど入り口がカランコロンと開いた。

どうやら、お客様が来た様だ。


孝介は、ひとまず接客を優先し

入ってきた女性に挨拶をした。


「いらっしゃいませ、

 何名様でしょうか?」


「あっ二人です。

 って、先生どうしたんですかほら早く!」

 

女性がそう言うと一度外に出て、

もう一人の手を掴み喫茶店の中に入れた。


「かしこまりました。

 では、こちらに………えっ?」


「…こうくん」


女性に手を掴まれて入ってきた

女性は、…鈴姉さんだった。

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