夏の距離②
ミンミンミン
夏真っ盛りのこの日
孝介は、バイトに行く為に道を歩いていた。
その足取りは、
決して軽いものでは無かった。
その理由は、最近の鈴との関係が変化した事だ。
あの鈴姉さんの部屋の一件から
徐々に姉さんの私物が部屋に増えて来たり、
頭を撫でてきたりと
妙に、姉さんとの距離というか
何というか近いのだ。
もちろん今の関係が嫌と言うことでは無いが、どうしても、
思春期真っ只中の男子高校生
いやっ、決して姉さんに下心を持ってるわけでは無い……と信じたいが、
とにかく何かと意識をしてしまうのだ。
「…………ハァ」
「フム、どうした少年、ため息ばかりだと幸せが逃げるぞ」
「えっ?」
孝介が振り向くとそこには、
バイト仲間の西宮梓さんが仁王立ちしていた。
今日は、確か梓さんはバイトではなかったはず。
「こんにちは、今日は、大学ですか?」
梓さんが指を鳴らしこちらにむけ。
「正解よ、今日は大学に、
書類を出しに行かないといけないの
よくわかったわね。それより、
孝介くんは何を悩んでいるのかな?
お姉さんに言ってみなさい」
梓さんは、無い胸をどんと叩いて、
「…おいこら」
急に頭を掴まれヘッドロックされる。
「痛い痛い痛いですって、
変な事考えて無いですから!!」
「考えてない奴が、
自分から、変な事考えて無いとか
言わねえんだよー!!」
「ギャーー!!」
梓さん、初対面の時は、
大人な落ち着いた方だと思っていたら、
まさかこんな、らんぼッ
……素敵な性格だとは、思わなかった。
パンッパンッ
「フンッ今回は、このくらいにしとくけど
次は、気をつけなさい」
「はい…すいません」
「それで悩み事は、なんだったの」
梓さんは、どうしても俺の悩みを聞きたい様だ。
こう言う姉御肌的な所は、嫌いでは無いだけどな〜
「本当に、いいんですか?」
「大丈夫よ、お姉さんに任せなさい
ほら!言いなさい」
「…ハァ、わかりました。
実は、距離感がおかしいんですよ」
「距離感?」
最近、家族との距離感に困っていて、
どう接しればいいか、わからないという
悩みを梓さんに打ち明けたその顔は、
後悔した様な感じだった。
「重い相談ね、お姉さん予想外だわ」
梓さんが少し考えて、
「…よしっ!孝介くん今日の予定は、
どんな感じ?」
「バイトですけど」
「わかったわ、それじゃ今日は、
レポートを大学に出しに行くだけだから、
それが終わったら、そっちに行くから
じっくり話しましょう」
「えっ…いやそこまでして、
もらわなくてもいいですよ」
孝介は、申し訳なくて遠慮するが
梓さんは、首を横にふり、
「いいえ、悩みを聞いたからには、
最後まで責任取るわ」
孝介は、その後も遠慮し続けたが
結局押し切られてしまった。
「よし!それじゃ、また後でね〜」
そう言って、俺の言葉も聞かずに
梓さんは走り去ってしまった。
「ハァ…悩みの種が増えたかもしれない」
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