友の夢 【詩織視点】

「ねぇ…詩織」


「うん?」


ここは…病院の一室

目の前には、ベットにいる親友が

一つの本を読んでる。


「あのね、男の子を女装させる風習が

 あるらしいよ」


「ふーん…で、それが?」


親友の顔を見るとあちらも

本から顔を上げ私を見た

その顔は、思い悩んでいる顔だった為

何か嫌な予感がした。


「いや、それでさ」


親友は、膨らんだお腹をさすり、

「この子も女装させた方がいいのかなって」


「…は?いやいやいや、

 なんで、あんたの子がそれで

 女装しなくちゃいけないの?」


また変な事を言い出したよこの親友は、

いつもは、真面目で礼儀正しい子なのに、

こんなふうに時々変な事を言い出す。


「えっだって、

 可愛いと思うし」


「そりゃ可愛いと思うけどさ」


「それに、魔除けとか身体が丈夫になるとか

 言われてるから」


なるほど、親友は、体が弱く学生の時もよく体調を壊していた。

その為、産まれて来る子には自分の虚弱体質を受け継いで欲しくないと言う思いから、

女装させようとしているのだろう。


「…ふぅん、まぁいいんじゃない?

 やりすぎなければ」


「そうよね!楽しみだな〜

 ねぇ君は、どんなのきてみたい?」


親友は、お腹の中にいる子に話しかける。


「セーラ服?それともワンピース

 あっゴスロリもいいね!」


「ちょっと待って!!」


色々思いを馳せる彼女を止める。


「何?」


「えっ?一回ぐらいだよね、

 女装させるの?」


「えっ?週にニ日」

「それでいつまで?」

「成人するまで」


………何言ってんだ?


「…ハァ、やめなさい

 子供が可哀想よ

 せめて二、三回ぐらいにしときなさい」


「えっでも、それじゃ子供の身体が…」


少し泣きそうになっている。


「大丈夫だから、

 信じなさい自分の息子を」


彼女の手を握り落ち着かせる。


こんな事を言い出したのは、

不安なんだろうな、

自分が苦しめられている為余計に、


私だって、日菜やお腹の中にいる子供が

なるんだったらと思ったら…


「…信じる」


「そう信じるの私だって、

 もしうちの子がと考えて

 怖くなった事があったわ」


「でもね私は、母親が子供を

 信じなくて誰が信じるのと

 思い直したおかげで乗り越えたわ」


「じゃあなたは、どうする?」

 

彼女は、私の言葉を聞いて少し考えた後

「私は……信じたい」


「…うんそれでこそ

 私の親友よ」


「ありがとう詩織」


「いいえ、それで女装は?」


「うん…四年に一度にするわ」


「オリンピックかよ」

       ・

       ・

       ・

       ・

       ・

ちゅんちゅん

「…うん…朝…夢か」


私は、ベットから起き上がる

…ずいぶん懐かしい夢を見た。


トントン

「お母さん、起きてる〜?

 今日、こうちゃん呼んでるんでしょ?

 早く起きないときちゃうよ」


日菜が起こしに来てくれたようだ


「ありがとう、もう起きたわ」


返事を送り身支度を整える。

そういえば今日孝介くんを

倉庫整理に呼んでたんだ。


「……女装させるか」


ああ…いい考えかもしれない

前の様にあの子のお墓に見せに行こう


「ね?いい考えでしょ?


そう今はいない親友に語りかける。

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