光の聖女⑤
「昨日は、楽しみすぎて眠れなかったよ〜」
「私も〜」
「生徒会長が出るんでしょう?」
「ああ、凄いぞ…とにかく凄い」
「語彙力なさすぎだろ」
「いや!!見ればわかるって」
ガヤガヤガヤガヤ
今日、教会で行われている、
発表会も終盤に差し掛かっており、
礼拝堂の中は、人でいっぱいになっている。
その中には、うちの高校の生徒も多数いる様だ。
「フフフ、満員だね〜」
礼拝堂の端の方で立っていた孝介に、
シスターが話しかけて来て、
その顔は、ニヤニヤと笑っていた。
「孝介くん、日菜ちゃんと仲直りできた〜?」
「えぇ、シスターのおかげで」
「私は、何もしてないよ」
孝介とシスターがいた部屋は、
奥にあり、日菜姉が普通ならくるはずもない
場所である。
つまり、誰かのおせっかいがあったのだろう。
「いや〜それにしても、
発表会も無事に終わりそうで
良かったよ。」
「そうですね、みんな楽しんでいる様で」
「ええ、あっそろそろ
日菜ちゃんの出番だよ」
シスターが促した方向を見ると
日菜姉が礼拝堂の舞台へと歩いて行く…が?
「えっなんで日菜姉、…シスター服なの?」
日菜姉は、シスター服を着て颯爽と歩いている。
「シスター服と言うか、修道服ね
私の古着だから
ちょっと大きかったかな?」
「いや、なんで日菜姉が着てるんですか?」
「え?だって似合うかなと思って」
「……また、怒られてもしらないぞ
シスター」
声の方を見ると雪弘先輩がいた。
その顔は、渋い顔だった。
「まぁお説教は、甘んじて受けるわ
それより楽しみましょう」
そう言ってシスターは、日菜姉の方を見る。
それにつられて孝介と雪弘も
日菜姉が立っている壇上を見る。
壇上では、日菜姉が発表の準備をしていたが
ふとこちらに気づいたのだろう
こちらに、ウインクしてして来た。
「あらあら、良かったわね孝介くん」
「なっ何がですか」
孝介は、日菜姉を見て何故かドキドキして、
照れてしまう。
そうこうしている内に、出番が来て
日菜姉が、厳かに歌い出した。
ガヤガヤしていた観客席が、
一瞬にして静かになり、
皆、日菜姉の歌声に衝撃を受け魅力されて行く。
「…やっぱり凄いわね」
「えぇ」
歌声は、小鳥のさえずりのように、美しく
お日様の様に暖かで、
心の隅々まで広がって行く、
歌詞が日本語では無いのに
不思議と情景すら浮かんでくる。
「……綺麗」
ポツリとどこからか聞こえて来る。
この礼拝堂の中にいる人たちには、
そう呟いた人の気持ちが心から理解できた。
礼拝堂の設置されているスタンドグラスの
窓から光が差し日菜姉に降り注ぐ。
余りにも、神秘的で美しいその光景は、
見るもの全てを魅力し、
あるものは、涙をこぼし
あるものは、祈りを捧げた。
(光の聖女か…)
日菜姉がそう言われ始めたのは、
ちょうど一年前、この場所で歌った時。
日菜姉の歌声の魅力に気づいた。
シスターが日菜姉に、頭まで下げて
この舞台に挙げた。
そして、その時も観客の心を掴んで離さなかった。
その後、歌声を聴いたうちの生徒が
その素晴らしさを伝える為に言い始めたのが
光の聖女と言うあだ名だった…
夢は、いつかは覚めるもの
曲は終わりを迎え
礼拝堂には、静寂がおとずれた後
ワーーー!!
と言う大歓声と拍手喝采の音がいつまでもら鳴り響いていた。
・
・
・
・
・
「…こうちゃん!!
お疲れ様、さぁ一緒に帰ろう?」
教会の門の前に立っていた、
孝介の元に私服に着替えた
日菜が走って来た。
教会での発表会は、
その後もつつがなく進行し無事に
大成功で終わりをむかえた。
「うん、でも良かったの?
打ち上げに誘われたんじゃ?」
「いいの!
こうちゃんと帰る方が大事だから」
そう言って孝介の手を取り歩き出す。
「日菜姉」
「いいじゃん今日頑張ったんだから」
そう言われてしまったら、どうしようもない。
「それで私のどうだった?」
「…綺麗で、すごかった。」
そこは、正直に伝えた。
日菜姉は、一瞬呆気に取られていたが
すぐに満面の笑顔で、
「ニヒヒ、ありがとうこうちゃん」
言って走り出す。
「ちょっ日菜姉!!」
「今日は、疲れちゃった
マスターの所行ってケーキ食べて
帰ろう?」
「わっわかったから、
ちょっと走るスピード下げて!」
二人は、夕暮れの日に照らされた道を
走って行った。
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