姉さんとフリーマーケット ③

「グラスですか?」


姉さんが手に持ったグラスは、

美的センスの薄い孝介でもわかるぐらい

青色で美しい花の模様があるグラスだった。


「えぇ、里紗さんこれは

 ボヘミアングラスかしら?」


「えぇその通りです」


「ボヘミアングラス?」


「チェコの有名なグラスよ、

 こうくん綺麗でしょ?」


「えぇ、本当に綺麗です。

 里紗これ値段いくら?」


「2万円」


「…え?」


「だから、二万円」


「………」


孝介は、その値段に目が点になる。


「2万...安いわね」


「えっ!?」


驚いて姉さんの方を見ると

少し考えている様子だった。


「そうですね、本当は6万円ぐらい

 だったらしいですけど、

 それじゃ売れないだろうって、

 二万円で」


「そう…なら本物なのね」


「ええ、そこら辺はうちの父親は、

 しっかりしてますから」


「わかった信じるわ

 二万円ね買うわ」


「ありがとうございます。」


里紗は、営業スマイルで商品を袋に詰めて行く。


「姉さんよかったんですか?」


孝介は、二万という高校生では、

大金を躊躇もなく渡した鈴に対して驚いた。


「うん、欲しかったしこれぐらいの

 出費わね」


姉さんは、そう言いながら里紗にお金を渡す。


「それにしても私でよかったわね」


里紗が商品を渡しながら言う。


「もし昨日だったら、

 店番してたのお姉ちゃんだったし

 今日の午前中ならお母さんだったから」


「うっ!それは…」


もし店番が、日菜姉やあの人だったら

今頃とてつもなくまずい事になっただろう

孝介を冷や汗だすが、


「あらフフ、それがどうしたの?」


鈴は、フフと笑っている。


「私とこうくんは、姉と弟なのよ?

 一緒に手を繋いで買い物するのは、

 普通の事よそれに、何か文句つける方が

 おかしいんじゃない?フフフ」


「……それが目的ですか?」


「いいえ、


「……」


「……」


「…フフ、こうくん」


「えっ!?はい」


蚊帳の外にあった孝介だが、

急に話しかけられて驚いてしまった。

鈴は、それを気にもせず。


「行こっか」


「はっはい、それじゃ里紗」


鈴は、孝介の手を強く握りしめ

人混みの中に消えていった。


それを見送った里紗は、

深いため息を一度吐き

再び

手に取り読み始めた。





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