里紗のお願い

「…おはよう」


「ああ、おは…ってどうしたんだ

 暑くないのか?それに首」


爺ちゃんの喫茶店で在庫を確認していると

挨拶されたので振り帰ると

里紗がいたが、首が隠れる厚着の服を着ていた。


「あぁ...少し昨日首を痛めてね

 湿布貼ってるんだ」


そう言い服の隙間から首筋の包帯を見せてきた。


「包帯巻いてんのか?」


「…えぇ、湿布が剥がれて仕方ないから」


「そうか、じゃ今日接客は」


「えぇやめておくわ、湿布臭いしね

 マスターにも言って在庫管理とか

 内向きの仕事に変えてもらったから」


「そうか、わかったまぁ

 お大事に」


「…チッ、誰のせいだと」ボソッ


里紗は、何か呟いた後

更衣室に去って行った。


「なんて言ったんだ...?」

        ・

        ・

        ・

「おーい里紗って、日菜姉?

 何でいるの?」


孝介は、客足が落ち着いたタイミングを見て

里紗の様子を見に来たが、

そこには、里紗と共に日菜姉がいた。


「やっこうちゃんこんにちは、

 何でって言っても午後から

 バイトの予定だし早めに来たの」


日菜姉は、そうは言ったが

午後からバイトに入ると言ってもあまりにも

早すぎる。


「なるほどねでも、日菜姉夏休み前半は、

 忙しいって聞いてたけど

 今日は、暇だったの?」


「うん、午前中に会うはずだった友達が

 風邪引いちゃってね、

 …それに里紗の事心配しちゃって」


日菜姉は、里紗の頭をポンポンと叩く。


「お姉ちゃんは、心配しすぎなのよ」


「それは、心配するわよ

 帰ってきたと思ったら、

 包帯巻いてきたんだから」


「それは…ごめんなさい」


里紗は、気まずそうに謝っている。


「まぁいいわ里紗とは家に帰ってから

 話すから」


日菜姉は、ニヤリと笑っていて、

里紗は、うんざりした顔をしている。


「……さて!

 まだバイトの時間には、早いけど

 早めに入ろうかな」


と言って日菜姉は、

更衣室に向かおうとするが

途中で何かを思い出したのだろう

立ち止まってこちらに振り返ると


「あっそうだ、こうちゃん明日暇?

 私暇になったから、遊ぼう?」


「…明日か…ごめん用事がある」


「えっ…そっかわかった。

 急に誘ってごめんね」


「いや、早めに言ってもらったら

 絶対に予定空けるから、

 また誘って?」


「うんわかった、ニヒヒそれじゃまた後で」


日菜姉は、そう言うと更衣室に向かっていった。


「…さて、それじゃ里紗

 俺も戻るとするよ」


孝介は、そう言って仕事に戻ろうとするが

里紗が話しかけて来る。


「…ねぇ、孝介」


「うん?どうした」


「鈴先輩とは、どうなった?

 昨日の今日で変わるとは、

 思わないけど」


里紗が心配そうにこちらを見る。


「大丈夫だよ、

 昨日覚悟を決めて話したけど」


「大丈夫って、あの人は」


「俺は、鈴姉さんを信じると決めたんだ」


孝介は、振り返り里紗の目を見つめる。

里紗は、少し呆れたようにため息をつき。


「…わかったわ、

 孝介がそう決意したんだったら、

 私は、言わない」


「ごめんな、あんなに言ってくれたのに」


「いいえ、私もこれ以上関われないから」


「えっ?どうゆう事?」


「…いろいろあるのよ」


里紗の言葉に納得は、

できなかったがこれ以上話す気もなさそうなので、大人しく引き下がり

バイトに向かおうとすると


「…孝介!あの

 とにかく色々言えないけど一つだけ」


「なんだ?」


「お姉ちゃんの事ももう少し

 見てやってくれる?」


里紗は、真剣な顔でこちらを見る。


「よくわからないけどわかった

 気をつける。

 ありがとう里紗」


深くは、理解できなかったが、

里紗の事だから何かあるのだろうと

了解してから、

孝介は、バイトに戻っていった。




その背中を見て里紗が


「…本当に頼むよ…孝介」


と囁いた。

 



こんにちは、ここまで読んでいただいてありがとうございます。

次回で三章が終わりです。

4章からは、各ヒロインとの話などが中心と

なりますのでよろしくお願いします。

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