思い出とこれから ①

「それじゃこうくん、

 さっそく見ようか」


鈴は、箱を開けて中身を取り出す。


「それは、アルバムですか?」


「うん、ほらっこれ出会った頃の写真だね」


鈴姉さんが指差した写真には、

ちっさい頃の二人の姿があった。


「こうくん明らかに、

 笑顔がガチガチだね…フフ」


「確かにお姉ちゃんは笑顔なのに、

 俺は、ガチガチですねなんでだろう?」


「フフ、覚えてないの?

 あの時は、初めて私と写真を撮るって

 言って緊張してたじゃない」


「…あぁ、なるほど」

 

その後も学校行事の写真や家族旅行の写真

など様々な写真を見てい行き

一枚の写真にたどり着く。


「これは、お姉ちゃんの誕生日の写真ですね

 懐かしいこれは、はっきりと憶えてますよ

 …ほらこれ」


孝介は、写真の中のお姉ちゃんが持っている

熊のぬいぐるみを指差す。


「これ、自分のお小遣いを貯めて

 プレゼントしたんですよね

 お姉ちゃんとても喜んで…」


そう言って鈴を見ると

何故か悲しそうな顔をしている。


「…そうねとても嬉しかったわ

 毎日寝る時は、一緒に寝るぐらいね

 でも…ごめんなさいもうこの子

 うちにいないの…」


「そうなんですか、まぁ何年もたってますし

 古くもなるでしょうから気にしなくても」


鈴は、首を横にふり


「違うの、私…その…捨てたの」


「えっ?」


「だから、捨てたの!ぬいぐるみも

 いいえ、それ以外のこうくんに

 関係していた物をほとんどを…」


「そっそうですか…」


鈴の言葉を聞いて孝介は、

ショックを隠しきれなかった。


自然に古くなり捨てるならわかるが、

今の言葉の意味は、

お姉ちゃんが自分との思い出を捨てようとしたと言う事であり


つまり、お姉ちゃんにとって

孝介との日々は、

思い出したくもない物だったのだと

孝介は、感じてしまった。


「まぁ、仕方ないですよははは…」


孝介は、苦笑いをする。


「…こうくん」


「…でも…それじゃ、

 何で今頃会いにきたんですか?」


「それは、偶然」


鈴が誤魔化そうとするが、


「偶然な訳がないですよね、

 普通に考えておかしいですよ

 たまたま同じ高校で、

 偶然隣に引っ越してくるなんて」


「………」


「姉さん」


鈴は、少し考えた後ポツポツと

話し始めた。


「そうね、こうくんが思ってる通り、

 全てが偶然と言う訳ではないわ」


「この高校に入ったのは、

 ここが一番こうくんに会える可能性が

 あったから、」


「隣になったのは本当に偶然で

 こうくんがここに住んでるのは、

 わかっていたから、

 ここに引っ越せば近づけると

 思って引っ越したけどまさか隣だとは

 思わなかったわ」


「…なんでそこまで、俺に会おうと?

 やっぱり、お金」


「それは、違う!

 ただ単純にこうくんに会いたくて!!」


鈴は、大声で否定した。


「でも、じゃなんで今何ですか?」


「それは……うん

 わかった全て話すわ、何で今なのか

 そして、私の過去を」


鈴は、覚悟を決めた目で孝介を見た。


「わかりました、鈴姉さんの話を聞かせてください」


孝介が話を聞くために姿勢を正すと

鈴が話し始めた。

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