孝介と姉とムサカ?

ガチャ

「ただいま…」


孝介は、里紗と別れた後一直線に

家に帰って来た。


「…うん、姉さんは来てないようだね

 いつもならいる時間なのに」


孝介は、鈴がいない事にホッとしていた。

今あってもどう接すれば

いいかわからないから。


「よいしょ…フウ」


孝介は、ベランダに座りテレビを見るが、

一向に内容が頭の中に入ってこず

気づけば、鈴姉さんの事を考えていた。


「里紗が言った通りお姉ちゃんじゃ…

 いやそれは、無いと思う

 だってあの笑顔は、お姉ちゃんだった…」


「でもそれなら、

 なんで今接触して来たんだろう

 考えたく無いけどやっぱり…ハァ」


孝介は、頭を抱えながら考える…

       ・

       ・

       ・

       ・

       ・

トントントン


「…んっ、寝ちゃったのか」


孝介は、目をくすりながら起き上がる。

キッチンの方から、いい匂いがしている。


パタパタ

「あれこうくん、起きたの?

 おはよう」


ビクッ

「あっはい、おはよう…って!

 どうしたんですかその包帯!!」


鈴姉さんの方を見ると両手とも包帯がぐるぐる巻きしてある。


「あっこれ?」


姉さんが手を後ろに隠しながら、

気まずそうに目を逸らす。


正直、鈴姉さんと話すのが

緊張すると思っていたが、

包帯を見てそんなのは、

頭から吹っ飛んでいった。


孝介は、立ち上がり

鈴に近づき追及する。


「姉さん、隠さないで下さい

 何があったんですか!?」


「…う〜ん」


「姉さん!!」


「…ちょっとね、引っかかれたの」


「何にですか!?」


「……猫?」


「何で疑問系なんですか?」


「いや、少しばかりじゃれ合おうとしたら

 手痛い反撃食らっちゃて…フフ」


姉さんは、恥ずかしそうに呟く。


「なっ本当に大丈夫ですか?

 てか、ちゃんと消毒とかしましたか?」


「大丈夫、ちゃんと処理はしたから、

 これは、ちょっとガーゼだけだと

 動きずらかったから固定する為に

 巻いてるだけだから心配しないで」


それを聞いて孝介は怒る。


「なっそんな心配しますよ、

 取り敢えずほら座ってて下さい」


「えっでも料理の途中」


「そんな両手を包帯巻いてる人に、

 料理を作らせるなんてとんでもない

 後は、俺がしますから」


「えっでも、

 今作ってるのだよ?」


「ヘっ?………ムサカ?」


(なっなんだムサカって、

 人生で一度も聞いたことも

 見たこともないぞ)


「…えっとその…ムスカ?」


「いえ、ムサカよ

 ギリシャの家庭料理よ

 簡単に言うとグラタンみたいな物よ」


(…………そんなん知らんて!!)

孝介は、頭を抱えた


「…なんでよりによって

 怪我してる今そんな

 手の込んだ物作ろうとしてるんですか」


鈴姉さんは、困った顔をして


「だって、せっかく夏休み入ったんだから

 手が込んでて珍しいものを

 食べさせたいなと思って、

 それに、下準備ほとんど終わってたから」


「そっそうなんですか」


俺の事を考えて作ろうとしてくれたのだと

聞き強く怒らなくなった。


「取り敢えず、残りの作業は自分がするんで

 …あの姉さん」


「なに?」


「作り方だけ教えてもらいませんか?」


「えっ大丈夫よわかったわ」


孝介は、鈴に有無も言わさなかった。


「それじゃ、キッチンに行きましょうか

 姉さん」


「うん」


その後、鈴が指示を出して

孝介が実際の作業を行う形で

料理を行った。





(…あれ、猫に引っかかれるだけで

 腕全体に傷つくほどの怪我になるのかな?)

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る