狂気か愛情か ②


「…んっ」


瞼を開ける

どうやら泣き疲れて寝てしまったのだろう


全身の力が入らない

何もやる気も起きない

ただぼーとしていた。


そのまま数分後ふと


「…………あ

 最後の手紙読まないと」


鈴は、のっそりと最後に残った一枚の手紙を取って読み始めた。


『お姉ちゃんへ

 お元気ですか?

 お姉ちゃんは、

 頑張り屋で弱音を吐かないで

 溜め込む癖があるので心配です。』


「フフ…こうくんには、お見通しみたいね」


『もうお姉ちゃんと別れて、三年近くなり

 俺も中学生になりました。』


『あっそうか、もう三年になるのか

 こうくんたら、僕から俺に変えたのね

 …フフ』


鈴は、別れる前の小ちゃいこうくんが

中学の制服を着てる姿を想像して

微笑ましくて笑ってしまった。


『中学は、まぁまぁ楽しいです』


「…そう、フフ照れちゃって…良かったね」


『それで、そのもう手紙送るのを

 やめようと思う、

 お姉ちゃんも迷惑だと思うし』


「いや…じゃない…よ

 …でも、そうだよね」


鈴は、諦める

いつまでも、返事も寄越さない人間に

手紙を出し続けるわけがない。


『だから、最後に言いたいこと

 書かせて欲しい』


『まずお姉ちゃん、 

 お姉ちゃんに会えて毎日が楽しかった。

 一緒に遊んでくれたのもそうだし

 病気になった時も優しくしてくれたよね』

 

「こうくん…」


『お姉ちゃん、

 俺の姉になってくれてありがとう』


ポロッポロッと涙がこぼれる


これは、…お別れの手紙だ


『これからは、別々の人生を歩むと思うけど

 お姉ちゃんの事は、忘れない』


「…嫌…」


『本当は、一緒に暮らしたかったけど

 もう諦めるよ』


「………」


『それじゃ、いつまでも

 書いちゃいそうだからそろそろ

 終わるよ』


『それじゃ、バイバイ大好きなお姉ちゃん』


…これで手紙は、終わっていた。


鈴は、項垂れていた……が、


「フフ…フフフフフハハハハハハ」


突如不気味に笑う。


「こうくん…ダメだよお別れなんて、

 …そうだよ…許されない…

 私から離れるなんて」


鈴は、ゆらりと立ち上がる。

前髪の間から見える目には、

妖しい光が灯る



…さぁここから始めよう…

 


鈴は、フフフと笑い


「逃がさないからね

 覚悟してね…こうくん♡」


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