壊れてしまった物 ①

「どっどうしたの鈴、大丈夫!?」


振り向くとそこには、

心配そうにこちらを見る母の姿があった。


「……お母さん」


「とっ取り敢えず落ち着こう…ね」


「あんたが!…ギリッ………わかったわ」


不思議な事に、

母の前では、怒りをかろうじて

抑えることができた。

この時は、まだどこか母を

信じたかったのだろう。


その後祖母の部屋から出て

母と二人でリビングに行き

向かい合う様に座った。

母は、私の顔を見て

少しホッとした様だった。


「それで、鈴どうしたの?

 何か嫌な事でもあった?

 私は、…あんまり役に立たないかも

 しれないけど話して」


母は、心配そうな顔でこちらを見ていた。

だがその態度は、鈴をイラつかせる。


「ねぇ……お母さん

 何か大事な事、隠してない?」


「えっ……どうゆう事…」


分かりやすく目をキョロキョロし、

動揺する。

私は、祖母の日記を出し差し出した。

母は、これは?と受け取り中を見た


「…ねぇ、お母さん

 こうくんに、連絡…取った?」


「うっ…………うん」


母は、話したい内容がわかったのだろう

一瞬黙ったがビクビクしながら認めた。


(…なんで、ビクビクしてるんだろう

 それじゃ私が悪いみたいじゃない。)


鈴は、イライラして母を睨み付ける。

それがさらにプレッシャーになって余計に

母は、ビクビクする。


「…それで?お母さんの口から

 聞きたいんだけど」


「…わかったわ」


母は、こうくんとの事を話し始めた。


最初に手紙を送ろうと提案したのは、

やはり祖母だった。


その当時の事は、精神を病んでた事もあり、

余りおぼえてないらしいが、


祖母から、

『孝介くんの事心配じゃないの?

 あなたも一度は、

 あの子の母となったんだから』と

言われたらしい。


その後、祖母の言う通りに、

手紙を送っていたりしていたが、

突如手紙を止めると言われ

こうくんに会いに行き拒絶されたらしい。


「あの頃の私は、バカだったと思うわ

 言いなりになって、孝介くんを傷つけた」


母は、弱々しく微笑んだ

正直、怒りの前に母を哀れに思った。

私は、聞きたかった質問した。


「……ねぇ、お母さんそれでなんで、

 私に言わなかったの?」

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