忌まわしき日々 

「よく来たな二人とも」


「…お父様お母様

 これから、よろしくお願いします。」


母と私は、祖父母に頭を下げる。

私たちは、こうくんと別れ住んでいた家から

母の実家に、引っ越してきた。


「いいのよ、さぁ中に入りましょ」


優しそうな祖母に促され中に入る

ここから、新しい生活が始まった。

         ・

         ・

         ・

「初めまして、鈴と言います

 よろしくお願いします。」


「「「よろしくお願いします」」」


パチパチパチ

クラスのみんなが歓迎してくれる。


(よかった歓迎してくれるみたい)


祖父母の家に引っ越した為に、

学校も転校した。

受け入れてもらえるか心配だったが、

この様子なら大丈夫だろう




ガラガラ

「ただいま戻りました」


パタパタ

「お帰りなさい、鈴さん

 学校は、どうでしたか?」


学校から家に帰ってきた鈴に、

祖母が話しかけてきた。


「はい、なんとかやって行けそうです」


「そうですかよかったです」


その後、祖母と別れ母の元に向かう。



コンコン

「………はい」


「お母さん入ってもいい?」


「……鈴?いいわよ」


母の部屋に入る

そこには、髪はボサボサで

どこか焦点が合ってない母が座っていた


「お母さん、ただいま学校に行ってきたよ

 緊張したけど…うまく馴染めそう」


「そう…よかったわね

 にも伝えなきゃね」


母は、そう言って微笑み

電話をかけ始める。


「……お母さん……」


「まったく困ったものね、

 お父さんもこんな時にって

 …あら?…繋がらない…

 …あれ…何で…あ…いや…」


私は、とっさに母を抱きしめる。


「あ…あァァァ!!」


母は、泣き喚く

私は、それを必死になだめる


「お母さん大丈夫だから、お母さん…!」




…母は、壊れてしまった

 引っ越してきた当初は

 落ち込んでてはいたが、

 それでも、まともだった

 

だが徐々に壊れていき

今では、まともな時間の方が少なく

ただ一日中ぼーとしてるか、

今のように泣き叫んだりしている。

         ・

         ・

         ・

「スー……」


「やっと寝てくれた」


泣き疲れたのだろう母は、寝ている


「こんな事じゃ、こうくんとまた一緒に

 暮らすなんて到底無理ね」


母の寝顔を見ながら呟く。


「…さて、お母さんが起きた時の為に

 飲み物持ってこないと」


鈴は、立ち上がりキッチンに向かう

するとリビングから話し声が聞こえる


咄嗟に隠れたあと

聞き耳をたてるとそれは、祖父と祖母だった。


「まったく、あのバカ娘!!

 どこの馬の骨ともわからない男と

 結婚して居なくなったと思えば

 恥ずかしげもなく戻ってくるなど」


「まぁまぁ、いいじゃないですか」


怒る祖父を祖母が宥める


「何がだ、今のあいつを見てみろ

 いい歳して一日中部屋に閉じこもって、

 あれでは、また嫁にも出せん」


「いやですよ、まだあの子は三十代ですよ?

 確かに精神的に狂ってますが、

 あの子には、

 あの美貌があるじゃないですか」


「…そうだな、確かに親の私から見ても

 あいつの美貌は、そそられるからな…

 それに今のあいつは、

 男の庇護欲かきたてるだろう」


祖父は、少し考えニヤッと笑う


「それに、今のあいつなら

 初婚のあの時のように、

 逃げ出さないだろうしな」


「でもあれはあれで、

 よかったじゃないですか、

 慰謝料たんまり貰えましたし」


「それもそうかガハハ」


(何を話してるの…………気持ち悪い)

 鈴は、口元を抑える。

 

「それに、あの子が無理なら

 鈴がいるじゃないですか」


突然私の名前が出て驚きビクッとなる

幸い二人には、気づかれてないようだ


「鈴か〜、でもあいつは、

 余りパッとせんな」


「大丈夫ですよ、

 あの子は、磨けば光りますよ

 それに、若い女は…ね」


「それもそうだな」



…身体が震える…ここにいたくない

鈴が離れる為に一歩踏み出そうとするが、


「おおそう言えば、孝介と言ったか」


鈴は、動けなくなった。







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