第27話 三日ぶりの出勤(ジークフリート)

三日間の休みのほとんどをリアと二人きりで過ごし、

もっと休みを取ればよかったと思いながら王宮へと仕事に来ると、

待ち構えていた公爵に捕まった。


リアとは髪の色だけ同じだが、それ以外は全く似ていないシャルマンド公爵。

何度か俺の屋敷に来ようとしていたようだが、

どうやらリアが指定する人物以外には屋敷が見えない結界を張ったようで、

屋敷の周りをぐるぐると回っては帰って行ったのを報告で聞いた。

…俺に用事は…心当たりが多すぎてどれだろうと思う。

まずは、リアを返せ、とかかな。


「何か御用ですか?公爵。」


「何かじゃないだろう!ローズを返せ!」


やっぱりか。だけどリアを返せと言われてもな…。

相手にしたくはないけれど、ここでずっと叫ばれても困る。

何を言ったところで納得してくれるような人ではないと思うが…。



「シャルマンド公爵、返せとはどういうことでしょうか?

 ローゼリアはもうすでに私の妻です。」


「あんな騙し討ちのような結婚、認めるわけ無いだろう!」


「そもそも騙し討ちで婚約させようとしたのは公爵じゃないですか。

 やり返されたとしても文句は言えないはずですよ?」


「うるさい!俺は認めないぞ!」


「…いいんですか?陛下が認めた結婚ですよ?

 俺たちは王命で結婚したようなものなんですけど…

 それを大っぴらに反対するようなこと、王宮で言っていいんですか?」


「ううっ。」


さすがに陛下が認めた結婚を認めないとは言えないだろう。

婚姻証明書には王印が押されている。

今さら公爵が何を言っても、どうやっても覆らないだろう。

おそらく陛下にはもうすでに言った後で、

どうにもならなくて俺に文句を言いに来たのだと思う。


「では、俺はこれから仕事なので失礼しますよ。」


そう言って謁見室に向かおうとすると、まだ後ろでごちゃごちゃと叫んでいる。


「おいこら、まて!

 ローズに会わせろ!なんで屋敷に行っても会えないんだ!」


「すみませーん。急いでるのでー。

 陛下の護衛なので、遅刻できないんですよー。」


これ以上は何を言われても真面目に聞くのは無駄だと足早に離れようとする。

それに気がついた公爵が叫んでいる。


「話を聞いてるのか!おい!俺はまだ話しているんだぞ!

 ローズが子どもを産んだら、公爵家によこせ!いいな!」


リアの産む子どもね…。

何も聞こえなかったふりして、返事をせずに角を曲がり、公爵から遠ざかる。

騎士爵しかもたない俺と公爵家では、もちろん公爵家を継ぐ方が良いに決まっている。

だけど、リアはそれを望まない気がしている。


何のために公爵家が必要なんですか?いらないでしょう?

あの日、リアはそう言っていた。

その言葉は嘘じゃないと思う。

公爵家がなくなっても、ちっとも困らないのだろう。


一応、帰ったらリアにも報告だけしておくか。

直接屋敷にくることはなくても、今後夜会で会ったらからまれるかもしれない。


朝から疲れたなと思いながら謁見室に入ると、

三日ぶりに会う陛下がげっそりとした顔で座り込んでいた。


「…陛下、どうしました?」


「ジークフリート…やっと来たか…。」


俺がいなかった三日間、何があったんだ?

近くにいた近衛騎士を見ると、全員に目をそらされる。

宰相は呆れたようにため息ついているし…。

…陛下に聞くしかないのか。

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