第26話 幸せな朝(ジークフリート)
隣で寝ているリアが身じろぎしたような気がして目が覚めた。
覗き込むとまだ目を閉じたままだが、起きているような気がする。
「起きた…?」
「…ぅ?」
「あぁ、喉乾いてるかな。ちょっと待ってて。」
やっぱり起きたところだったようだが、声がかれてしまっている。
主寝室と続いている俺の私室に入ると、思ったとおり果実水と軽食が置いてあった。
窓から差し込む光を見ると、もう昼近くになるだろう。
果実水と軽食を持って主寝室に戻ると、
先ほどと同じ体勢のままリアがぐったりしていた。
身体を起こして俺にもたれさせるように座らせると、果実水の入ったコップを渡す。
こくこくと飲み干したのをみて、もう一度注いで渡してやる。
それも飲み干して、ようやく落ち着いたようだった。
「大丈夫?もう少し飲むか?」
「もういいです…。」
「お腹空いてないか?
ハムサンドや焼いたトマトを乗せたカナッペとかあるぞ。」
「…まだいいです。もう少し休みたいです。」
「わかった。」
コップを近くのテーブルに置いて、
リアを後ろから抱きかかえるようにして寝台に横になる。
思ったように動けないのか、リアが小さい声で何か言ってもぞもぞしている。
「どうした?」
「ジークフリート様の方を向きたいんです。
だけど、身体が動かなくて…。むぅ。」
「言えば俺が動かすのに。ほら、これでいいか?」
くるんとひっくり返すように俺の方を向かせると、
安心したように腕の中に入ってくる。
胸に頬を摺り寄せてくるリアを見て、思わず笑いがこぼれてしまった。
「…なんで笑うんですか?」
「ごめん、悪い意味じゃないよ。リアが可愛いから思わず。」
「私が甘えてるのがおかしいですか?」
「おかしくないよ。めずらしいのだろうとは思ってるけどね。
あまり人に甘えたことは無いだろう?」
「…ジークフリート様以外に抱き着くことなんてありません。」
「うん、知ってる。だから、好きに甘えてくれていいよ。」
下手に笑ってしまったのがいけなかったのか、少しだけ頬がふくれている。
眠いのもあるんだろうけど、今はいつもよりも機嫌を損ねやすいようだ。
「…何か嫌だった?」
「子どもみたいって思われたのかなって…。」
あぁ、なるほど。
体格の大きい俺に甘えてこうして腕の中にいるリアは、
見方を変えたら親に甘えている子どもと変わりないと思ったのか。
「子どもだなんて思ってないよ。
…子どもだなんて思ってたら、リアをあんな抱き方しないよ。」
「…っ。」
からかうつもりは無かったけど、一気に赤くなったリアの耳に思わず唇を寄せる。
感じたのかリアの腰がひけるのを抱きしめて、俺の方に引き寄せた。
「もう少しリアが慣れるまで待つつもりだったんだ。
最初は誓約の期限まで一か月って言われて、一か月しかないのかって思ったのに、
結局十日も我慢できなかったな。
リアが色っぽくて、可愛くて、早く俺のものにしたくて。
あんな風に余裕なく抱いてごめんな?」
「…余裕なかったんですか?」
「そうだな…女を抱くのが久しぶりだったのもあるけど、
好きな女を抱くのは初めてだったんだ。
あんなに自分を制御できないとは思わなかった。」
「初めて?」
驚いたように目を見開いて、俺を見上げてくるリアに軽くくちづける。
それだけで色気のある表情に変わるリアに、手遅れになりそうだと感じた。
下半身に熱が集まってしまっているのを、何とか逃がそうとしながら話す。
「どんな女も、誰のことも大事にできると思えなかった。
だから結婚せずに生きていくつもりだったんだ。
リアに会えなかったら、ずっとそうやって生きていたと思う。
…もうリアがいないことなんて考えられない。」
「私も、もう離れるのもあきらめるのも嫌です。
…ずっと一緒にいます。」
「あぁ、もう煽っちゃダメだよ。
昨日無茶しちゃったから、今は我慢しているのに。」
「我慢しなくていいですよ?」
「…リア。言ったな?」
「はい。」
返事と共に俺にくちづけてきたリアに完敗だと思う。
昨日みたいに無理しないように、優しくしないといけないのに、
必死に俺を求めるリアの声が健気で…また制御しきれなかった。
大事にしたいと思うのに、ぐったりするリアを抱きしめて、
またやってしまったと反省しながら眠った。
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