第21話 気づく想い(ジークフリート)
陛下について会場に入った時、近くを見渡したがローゼリアの姿は見えなかった。
もしかしたら目立たないように認識阻害をかけているのかもしれない。
そう思ったけれど、陛下の護衛をしながらもローゼリアの姿を探してしまっていた。
卒業パーティーが始まり、陛下のすぐ後ろについて警戒していたが、
しばらくして広間の中央がざわついているのに気がついた。
まだダンスも始まっていないのに、何を騒いでいるのだろうか。
目を凝らしてみると、あれは第二王子?
側近候補も連れて、何を騒いでいるのだろう。
「陛下、何かあったようです。
中央にいるのは第二王子ですね。」
「何?俺は何も聞いてないぞ。あいつは何をしているんだ。」
一応は陛下の耳に入れておこうと小声で伝えると、
陛下も知らないようで首をかしげている。
卒業パーティーの余興にしてもおかしい。
護衛騎士の誰かを行かせて確認してきたほうがいいだろうか。
「おい、どこにいるんだ!ローゼリア!
まさか卒業パーティに出席していないってことはないだろう。
これに出なきゃ卒業できないはずだからな。
どこだ!ローゼリア・シャルマンド!」
は?思わず漏れた殺気をそのままに、陛下を見る。
俺の殺気に気がついたのか怯えている陛下に近付いて、耳元で問いただす。
「陛下?第二王子は何を言ってるんですか…?」
「わっ…わからん。何をしようとしてるんだ。あいつは!」
「…もし、何かあれば対応できるように、ここを離れてもいいですか?
護衛は他の近衛騎士を呼びます。いいですね?」
「あ、ああ。わかった。…すまん。」
すまんってなんだ?もしかして何か心当たりでもあるのか?
少し遠くにいた予備の近衛騎士二人を呼んで、俺の代わりに陛下の護衛をさせる。
そうしている間に、広間の中央にローゼリアが来ていた。
黒のレースを重ねたドレス。綺麗に結い上げた髪を結ぶのは黒いリボン。
首のアクセサリーも黒のチョーカーに黒貴石。
そして、これまで意識していなかったけれど、左手首の収納の腕輪も黒だった。
これでもかと、全身を黒に染め上げたローゼリアに、言葉を失う。
黒いドレスを着て夜会に出席する令嬢や夫人はいない。
皆が黒以外の色鮮やかなドレスを選ぶから、
目立つように近衛騎士は黒の騎士服になっている。
この卒業パーティで、ただ一人黒を身にまとったローゼリア。
その色を意味するものを考えて、一気に身体の熱があがった。
…ドレスを作るのにはどれだけ時間かかかるのだった?
残念ながら、今まで一度もドレスを作って贈ったことがない。
だけど、時間がかなりかかることだけは知っている。
…俺と結婚してから作ったのでは間に合わないことくらい知っている。
ローゼリア?
いつ、そのドレスを作ったんだ?
そんな前から俺の色のドレスを用意していたのか?
いろんな思いでいっぱいになりながら、少しずつ広間の方へ近づく。
そこでは第二王子とその側近候補の集団と向き合うように、
ローゼリアが一人で立たされていた。
あまりいい雰囲気では無いと感じ、間に入るべきかどうか悩んでいると、
第二王子から信じられない言葉が飛び出した。
「どうしてそう可愛げが無いんだ。
いいかげんにしないと、婚約解消するぞ!」
「は?」
は?第二王子…今、なんて言った?
婚約解消するぞ?…はぁ?
何を考えているんだ、あの馬鹿王子…殴っても良いか?
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