第17話 王命の結婚
「俺は…結婚していない。」
「はい?」
「結婚したのはローゼリアが初めてだ。」
「えええ?」
どういうこと?亡くなった奥様は?お子様は?
結婚していないって、籍を入れていなかったということ?
「最初から説明するね。
俺の妻だと言われているのは、隣国の第4王女ジュリア様だ。
なんでも、隣国で国際会議があった時に陛下の護衛をしていた俺を見て、
国王にあの騎士なら結婚してもいいと言ったらしい。」
「…第4王女様。」
「第4王女は…騎士が大好きで大好物で…隣国では有名な男好きだ。
だから隣国の貴族では貰い手がいなくなってしまったらしい。
そんな時にちょうど俺が隣国に行って、目に留まってしまった。」
有名な男好きの王女様に見初められてしまったから結婚した?
でも結婚してないって言った…。どういうことなの?
「王女の結婚相手に困っていたジャガルアド国王はうちの陛下に話を持ちかけた。
関税を低くするから、俺に第4王女を娶らせるようにしろと。」
「王命でしたの?」
「王命のようなものだ。
俺ではなく、俺の父親ハングロニア侯爵が承諾したんだ。
そのため俺は挨拶すらしたことのない王女と結婚することになった。
だが、準備している間に第4王女は護衛騎士の子どもを身ごもってしまった。」
「は?」
「わかる?俺と結婚したいって言った後も、騎士たちと浮気しまくってたわけ。
しかも誰の子どもなのか特定できないくらいだったらしい。
それが国王にバレて、国王も結婚させるのを考え直した。
さすがに身ごもっているのに他国の俺に娶らすのはまずいと思ったんだと。
だけど本当のことを公表するわけにもいかないだろう。
とりあえず第四王女は俺が娶ったあとで身ごもった。
でも流産してしまい、そのために亡くなった…ということになった。」
「その王女様は?」
「身ごもっているのが周りにバレる前に、
俺に嫁いだことにして離宮に幽閉されたそうだ。
産まれた子はジャガルアド国王の側妃が産んだことして引き取ったらしい。」
「…第4王女様は、この国に来ていないのですか?」
「この国に来る前に騒動が起きて、そのまま向こうの離宮に幽閉されたからな。
俺は一度も会っていないし、この屋敷にも来ていない。
この屋敷は迷惑料ということでもらって、
勝手に結婚を承諾した父親とは縁を切らせてもらった。
その上で、もう二度と王命で結婚話を持ってこないという約束で、
妻と子供を一度に亡くしたという設定を受け入れたんだ。」
「…設定。でも、王命の結婚話…みたいなものですよね、私。」
「王命だったとしても、相手がローゼリアなら喜んで受けたよ。」
「…本当ですか?」
「ああ。俺にとって、ローゼリアは特別に感じていた子だったから。
8年前に突然会えなくなって…寂しかったよ。
第4王女に振り回されて、こうなって、いつの間にか近衛騎士隊長になって、
忙しくしてても…ローゼリアが一人で苦しんでいないか気になっていた。
また無理しているんじゃないかって。」
あの頃…私がつらいとか嫌だと思っても我慢していることに、
気が付いてくれたのはジークフリート様だけだった。
ローゼリアは何でもできる。天才だから普通の人とは違う。
努力しなくてもできるんだから辛い思いなんて無い。
いつも笑顔なのは優しいから、だから王子たちの嫌がらせにも寛容なんだ。
周りの大人たちが勝手に私のことを作っていく。
いつでも優秀で完璧で、まるで理想の人形のような私。
それを否定してくれたのは…ジークフリート様だけだった。
特別に感じていたのは私だけじゃなかったんだ。
「私…ジークフリート様が婚約したって聞いて…。
もう私だけの特別でいてくれないんだって。
甘えちゃダメだって思ったら…つらくて。
王宮へ行く勇気が無くなってしまったんです。
だから…。」
「え?もしかして…8年前、陛下と王妃にもう王宮に来ないって言ったの、
俺の結婚話のせい…だった?」
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