第13話 守る壁(ジークフリート)

「何があったんですか?急に結婚だなんて。」


みんなには何も説明をしてなかったから、

きっとどういうことだと思ってるんだろうと執事室に行くと、

ちょうど全員が集まって話をしているところだった。


戻ってきた俺の顔を見て、不安そうにグレッドが聞いてくる。

おそらく前回の妻のように無理やり押し付けられたのではと心配しているのだろう。

さきほどローゼリアの挨拶を聞いて、

わがまま令嬢ではないようだとほっとした顔していたのは見ていた。

それでも俺がどう思っているか心配ってところか。



「ああ、俺も驚いたよ。まぁ、これも王命になるのかもしれない。

 あ、誤解するなよ。今回は俺も承諾している。

 俺がローゼリアを娶るのには何も問題ない。

 昔から知っている間柄だし、とても素直でいい子だよ。

 ローゼリアも…嫌がっていないというか、喜んでくれている、と思う。」


そう言うと、あきらかにパッと明るい顔になった。


「そうですか。まぁ、それじゃあ俺たちに言うことはありません。

 あんな素敵なお嬢さんを連れて来てもらって、文句を言ったら罰があたります。」


「そうですよ!絶対に逃がさないでくださいませ!」


どうやら第一印象でのローゼリアは合格だったようだ。

あの笑顔で使用人に挨拶してくれるような令嬢は、どこを探してもいないだろう。

老夫婦三組しかいないこの屋敷にも何一つ不満な態度は見せなかった。

公爵家なら、この何十倍も多くの使用人がいるだろうし、

わざわざ挨拶することも無いだろうに。

俺が使用人を紹介したことにも何も疑問を持たないようだった。


ローゼリアなら、この6人ともうまくやっていける。

そう思ったからこそ、先に話しておかなければいけないことがあった。


「わかったよ。逃がすつもりは無いから安心してくれ。

 というよりも、これから話すことをちゃんと聞いてほしい。

 ローゼリアは各国から狙われているこの国の宝の姫だ。

 この屋敷にも結界魔術をかけてあるが、

 その魔術式もローゼリアが作り出したものだ。

 治癒も回復も防御も、

 お前たちが普段からお世話になっている魔術式すべてだ。」


「あ、あのお嬢様が!?まだ成人前なのでは??

 もうずっと前から魔術式ってありましたよ?」


「驚くのも無理はない。ローゼリアが最初の魔術式を作ったのは3歳だ。

 それから親元を離れ、一人で生活してきている。

 たいがいのことは一人で出来るだろう、だけど、俺は彼女を一人にしたくない。

 俺がいない間はみんなで守っていてくれないだろうか。

 強い子ではあるけど、それが平気ってわけじゃない。

 ちゃんと彼女の心も守ってほしい。」


「わかりました。できる限りのことはしましょう。」


「そうですとも!お坊ちゃんと同じくらい大事にするって約束しますよ。」


「…エレン~そろそろお坊ちゃんって呼ぶのやめない?」


「そう言われましても…お乳をあげて育て上げたのはこのエレンですからね!」


「坊ちゃん、あきらめてください。今さらですよ。」


「ミレーまで。まぁ、仕方ないか。

 じゃあ、みんな頼んだよ。」


少しでもこの屋敷の安全性を高めようと、

屋敷だけにかけていた結界を、敷地内全体にかけ替える。

ローゼリアに相談した方が良いとは思うが、今日はもう疲れているだろう。

明日ゆっくり相談することにして、今日は今ある魔術式だけで何とかしよう。


見回りついでに魔術式がうまく展開していることを確認してから、二階にあがる。

自分の私室で湯あみして着替えた後、ローゼリアが待つ寝室へと向かった。


そこでは、ローゼリアはもう気持ちよさそうな寝息をたてていた。

…それは予想通りだったから、いいのだが。



寝相が悪いのか、掛け布を蹴飛ばすように寝ている。

そのローゼリアは薄い生地の夜着姿で…胸元がはだけ、

両胸がこぼれ落ちそうになっている。

もう少しで胸の先端まで見えてしまいそうだ、と思った瞬間、

薄い夜着がすけて…ローゼリアが下着をつけていないことがわかってしまった。


見なかったことにしよう。

俺は何も見てない。形のいい乳なんて見てない。

桃色だったなんて…見てない。見てないからなっ。


目をそらしたままローゼリアの掛け布を戻し、その隣に静かに入り込む。

誰かが隣に寝ているということに落ち着かないのではないかと思ったけれど、

先ほどの衝撃がすごくて、それどころじゃなかった。

これを耐えろって…あまりにもつらくないか?


それでも寝つきが良い方だからか、いつの間にか眠って朝を迎えていた。

なぜか、俺の上にローゼリアが半分乗っている状態で…。






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