これにて終わりだ! みんなありがとなぁ!!

「甲斐君」

「おう」


 今日も今日とて講義が終わった段階で茉莉が声を掛けてきた。


「今日もお疲れ様。もう帰る?」

「あぁ。特に用もないしな」


 荷物を纏め、鞄を肩に掛けて俺と茉莉は歩き出した。


(……あれから大分時間が経ったな)


 ひょんなことから催眠アプリ……相棒に出会い、そして別れてから一年ばかりが経過した。

 俺は高校を卒業し、目指していた大学への進学が叶った。

 高校時代に共に過ごした友人二人とは別れたものの、茉莉と才華は同じ大学に進学したので家以外でも顔を合わせるのは変わらない。


「才華も待ってるだろうし迎えに行こっか」

「そうだな」


 学科が違う才華を迎えに行くため、彼女の待つ教室に向かう。

 こうして大学内を歩いていると、俺はともかくとして隣の茉莉は多くの視線を集めている。

 高校生から大学生になったといっても一年したまだ経ってはいないが、それでもただでさえ美しかった彼女は更に魅力を増していた。


(ま、それは他のみんなも同じだけどさ)


 一年という歳月は短いように思えるのだが、分かりやすく大人へと近づく彼女たちは本当にどこまでも俺を夢中にさせてくる。

 那由さんや真冬さんは既に大人ではあるけれど、そんな彼女たちも茉莉たちに負けずに際限なく魅力を増していき、彼女たち七人との生活は日を追うごとにどんどんと俺たちの絆は深くなっていった。


「あ、居たけど……全くもう!」


 才華を見つけた茉莉が視線を鋭くした。

 美しい女性に声を掛けようとする男は多いもので、今俺たちの視線の先では才華が一人の男に言い寄られていた。

 もちろん茉莉にもこういうことは多いのだが……既に俺と付き合っていることは公言しているようなものなのでああいったことはやめてほしいんだがな。

 鬱陶しそうな表情を隠そうともしない才華と男に近づくと、才華が俺に気付いてすぐに駆け寄ってきた。


「甲斐君!」

「お待たせ才華。悪いな、ちょっと遅くなったか」

「ううんそんなことない。じゃあ帰ろ」

「おう」


 俺たちは歩き出したが才華を逃がしたくない男は更に言葉を続けようとする。しかし俺と茉莉が睨みつけると黙り込んだ。


「っ……」


 まあこうすると大抵は俺に対して憎々しい視線を向けてくるわけだが、もうこんな視線には慣れている。

 両腕を二人に抱きしめられるようにして俺たちは大学内から外に出た。

 これから絵夢、愛華とフィアナの三人と落ち合う約束をしているのだけど……もう外でも俺たちは関係を全く隠さなくなった。


『外でも思う存分イチャイチャすると良いんじゃないかい? 別に咎められることじゃないし、甲斐君は私を含めみんなの家族から彼女たちを任されたわけだ。なら牽制の意味も込めて見せつけてやると良い』


 那由さんにそう言われたことを思い出す。

 そして同時に、大学に進学した段階で俺はみんなの家族に挨拶に向かい、彼女たちをこれから先も守っていく、だから俺に任せてくださいと既に伝えたのだ。

 本来なら大学を卒業したくらいで考えていたんだけど、彼女たちの家族の方が俺と会いたいと言ったので実現したことでもある。


「何を考えているの?」

「みんなの家族に挨拶したことを思い出してた」

「ふふっ、あったねぇ。甲斐君凄くイケメンだったもんなぁ♪」


 俺はいつも通り……いや、かなり緊張してガチガチだったけどね。

 初対面ではない家族の方も居たけれど、絵夢の両親もそうだし、愛華やフィアナの両親と話をする時は本当に何を言われるか怖かった。

 逆に他の子たちの場合は以前に会ったこともあれば、彼女たちの危機を救ったというのもあって抱かれていた印象は自分でも驚くくらいに良すぎたほどだ。


「まあ良く思われなくても諦めなかったよ俺は。君たち全員とこれからもずっと一緒に居たい、それは俺だけの願いじゃなくてもみんなの願いでもある……だから何を言われても諦めるつもりはなかった」


 俺だけが今の関係を望んでいるのではなく、俺たち全員がそれを望んでいる。

 だからこそ、何を言われても諦めるつもりはなかったし、分かってもらうまで彼女たちに対する想いを聞いてもらうつもりでもあった。


「まあつまり何が言いたいかって言うと、俺はみんなとの未来を絶対にどんなことがあっても妨げさせはしないってことさ」

「きゃっ♪」

「っ……♪♪」


 二人を思いっきり抱き寄せた。

 周りを見て人の目がないことを確認し、抱き寄せた拍子に二人の豊かな胸元に手を添えてモミモミ、モミモミとその柔らかさを堪能する。


「もう甲斐君ったら」

「どんどんエッチになってくね……そういうところも好きだけど」


 こんな極上の彼女たちがずっと傍に居るのだから、こうしたスキンシップも本当に多く飽きることは一切ない。

 それだけ俺が彼女たちに夢中であり、どうしようもなく心を掴まれていることに他ならない。


「高校時代もそうだったけど、大学生になってもそれは変わんねえな。俺はいつまで経ってもエロガキみたいなもんだ」

「エッチなのは私たちとしても嫌じゃないし、こうして私たちの体を求めてくれるのは嬉しいから望むところだよ。でも甲斐君はちゃんとかっこいいよ? それだけは覚えておいてね?」

「その通り。甲斐君はどんどん魅力的になってるし、たとえ相棒さんが居なくても私たちを守ろうとする強い心は何も変わらない……だから私たちも日を追うごとに甲斐君に夢中にされ続けてる」


 こういうことを言ってくれるから逆に俺も夢中にされ続けてるんだよな。

 将来に向けて自分を高めるという意味でももちろんだが、しっかりと彼女たちの日常も充実しており毎日が楽しくて仕方ない。


「甲斐君、家に帰ったら好きなだけしても良いから今は絵夢たちの所に行こ?」

「私はずっとこうして居ても良いけど」

「才華?」

「……茉莉が怖いから早く行こ」


 ちなみに、那由さんと真冬さんを除くと茉莉が俺たちを纏める母親みたいな構図になっているのも結構面白い構図である。

 その後、三人と待ち合わせしている場所に向かうと、既に三人とも集まっていて俺たちを待っていたようだ。


「あ、先輩!」

「遅いわよ。もしかしなくてもイチャイチャしてたわね?」

「良いじゃんかぁ。その分私たちがこれから甲斐君との時間を楽しむんだぁ!」


 ぴょんとフィアナが胸に飛び込んできたので受け止める。

 みんなも当然体の成長という部分では変わっているのだが、フィアナは更にその巨乳が成長しており、俺の胸元でそれはもうむにゅむにゅと歪んでいる。


「ズルいわよフィアナ!」

「早い者勝ちぃ!」

「なら私は先輩の腕を拝借して……」


 文句を言うくらいなら俺の傍を勝ち取れ、それが彼女たちに共通する言葉らしく本当に愛されているなと常々思い頬が緩んでニヤニヤしてしまう。

 こうして五人が揃ったことでようやく俺たちは帰路に着く。

 それぞれの実家から近い場所ではあるものの、絵夢を除いた俺たちが進学した時期に那由さんと真冬さんが新しい家を用意し、そこに俺たちは今住んでいた。

 新しい環境に戸惑うことはないに等しく、とにかく傍にみんなが居るというのが何よりも大きかった。


「ただいま」

「ただいま~!」


 家に帰ると基本的に俺たちはそれぞれ自由に過ごすのだが、絶対に俺の傍には誰かが居ることになるけど全然悪くはなかった……むしろ今となっては空いた時間に誰かが傍に居ないと落ち着かないほどで、逆にちょっとそれもマズいのかなと思ったりするのだが、気にするだけ無駄だろうなと結局すぐに考えなくなる。


「那由さん、これ……俺が言うのも何ですけど売上とかヤバくないですか?」

「私も驚いてるよ。まさかここまでヒットするとは思わなくてね」


 俺が手にしているのは那由さんが描いた漫画で、以前に言っていた俺の体験を参考にした物語である。

 電子の方でも販売されているのだが、かなり読者にウケが良くもしかしたらアニメ化なども行けるのではないかと言われているほどらしい。


「あたし、凄く好きだよこの物語。甲斐君の軌跡を見ているような気がするし、何より相棒さんがそこに居るような気がするから」


 真冬さんの言葉に俺と那由さんは頷いた。

 俺の体験した物語とはつまり、相棒を手にしてから欲望のままに行動しようとはするものの多くの女性たちを救っていく物語だ。

 もちろん名前などは変わっておりキャラクターのビジュアルも違うのだが、それでも他人事には思えないほどに読んでくれている読者同様に俺たちもこの物語に魅せられている。


「よし、一旦原稿はこれで終わりにしてみんなのところに戻ろうか」

「そうだね。さあ甲斐君、みんなとのイチャイチャタイムだよ~♪」


 イチャイチャタイムとはいっても、一緒に居るだけなんだけどな。

 二人が先にリビングに向かったのを見送り、俺は手にしていた漫画を見つめながら口を開く。


「催眠アプリ手に入れたから好き勝手する……か、題名まんまだな」


 表紙に描かれているのは主人公はもちろんヒロインの女の子たち、そして忘れてはならない催眠アプリの画面……なあ相棒、見てるか?

 俺と彼女たちの繋がりだけじゃなくて、俺たちの生き様まで形になって残っちまってるぞ?


「……………」


 俺はいつかのようにスマホをジッと見つめ、何も反応がないことに当然だなと苦笑した。


「これからもずっと、呆れるくらいに幸せで居続けてみせる。だから相棒、これからも見守っててくれな」


 そう伝えて俺はスマホをポケットに仕舞い、みんなが待つリビングに向かった。


 他者を意のままに操ることの出来る催眠アプリを手に入れてから全てが変わった俺の物語、それはこれからもずっと続いていくはずだ。

 未来がどうなるかは分からないけど、それでもみんなが居てくれるからこそ俺はどんな壁だって乗り越えることが出来るんだ。


「さてと、これ以上待たせるわけにも行かないし……くくくっ、みんなのおっぱいの感触を楽しませてもらうとするかぁ!!」


 湿っぽいのはダメだ。

 やはり俺の原点はこのエロに忠実な思考……さっきの笑い方とか本当に昔を思い出してしまう。

 待ってろよみんな! もう俺の手に催眠アプリはねえけど、好き勝手お触りしまくってやるからな!!


 だから相棒、俺はずっとこんな風に変わってないけど心配すんなよ。

 その時、ふとスマホが震えた気がしたが俺は特に気にすることなくみんなの元に向かうのだった。





“ずっと幸せに、ご主人”


~催眠アプリ手に入れたから好き勝手する!~


お終い



【あとがき】


ということでこれにて完結しました!

ちょうど100話ということで、つまり100日間ずっと更新が続いたということでなんというか……本当に頑張ったなって感じです。


こうしてここまで頑張れたのもやはり読者のみなさんの応援があったおかげです。

多くの応援コメントや評価に励まされながら自分自身も続けることが出来ましたし、こうして無事に完結させることが出来たと思っています!


最後になりますがみなさん、本当にありがとうございました!



PS,もし皆さんが催眠アプリを手にしても悪いことに使ったらダメですよ? せめておっぱいに触れる程度に抑えてください作者との約束です()

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