大団円と言っても良いと思うぜぇ!
那由さんと真冬さんにお姉さんの包容力を味わった翌日のこと、ついに土曜日になり元々約束していたみんなが集まる日となった。
那由さんの家の場所を知らない子たちも居るので、他のみんなは一旦別の場所で集まってから向かうことになった。
「……これ凄いな」
「あはは、本当にね」
俺の言葉に隣を歩く茉莉が苦笑した。
那由さんを除く俺の恋人たちが揃って歩いているのだが、この行進のような光景が目立たないはずもなく、彼女たちを引き連れる先頭の俺に対してそれはもう凄まじいほどの視線が注がれていた……特に男からの視線が多いのは仕方ない。
「絵夢ちゃん、才華ちゃん、愛華ちゃん、フィアナちゃんだね。よろしく!」
背後では初対面の彼女たちによる自己紹介が行われているのだが、本当に俺の目から見ても異様というか……目の保養には変わりないものの、嫉妬に駆られた誰かに包丁を持って襲われても文句は言えない光景には違いない。
「私たち全員、将来の甲斐君のお嫁さんなんだよね。ふふっ、気が早いけどどんな未来になるか楽しみで仕方ないよ」
「俺もだよ。何もしなくても、こうやって話をするだけで幸せになのにさ。この先もずっと一緒に……それこそ一つ屋根の下で過ごすことになると思うと、なんか泣けてきそうだ」
ただただ彼女たちと過ごすだけ、それが幸せで溢れていることは容易に理解出来るのだが、きっとその上で更に俺を幸せにしてくれる何かが起こると同時に、彼女たちにもそれは同じだと思っている……俺はもう一度後ろを見た。
「?」
「先輩~♪」
茉莉は隣に居るが、背後を歩く絵夢と才華が俺に目を向けた。
その後ろで愛華とフィアナに抱き着く真冬さんという構図になっており、あまりに賑やかな光景だった。
「ねえ甲斐君、私たちも手を繋ごうか」
「それは良いけど……なんとなく、この後の展開が読めるぞ俺は」
「さ~てどうなるんでしょうかねぇ♪」
ニヤニヤと楽しそうに笑みを浮かべ、茉莉は俺の手を握りしめた。
するとドンと背中から絵夢が抱き着き、握られていない方の手を才華が握りしめ、そしてダダダっと足音を立てて愛華とフィアナ、真冬さんも傍に来た。
「嬉しいけど……嬉しいけどこうなると思ったよ!」
「抜け駆けは……あぁでも、もう抜け駆けも何もないのよね」
「そうだよぉ♪ でも目の前で甲斐君がイチャイチャしてたら引っ付きたくもなるってばぁ!」
「……若いねぇみんな。お姉さんとして見守るのも悪くない気分だね」
真冬さんも十分というかかなり若いですけどね。
その後、俺たちはまるで生きた引っ付きもっつきのようなことになりながら那由さんの家に向かった。
玄関に出てきた彼女は俺たちを見て目を丸くしたが、一瞬の隙を突くようにして俺の唇にキスを落とし、みんなを家の中に招き入れた。
「つ……疲れたぜ……」
「お疲れ甲斐君」
「おう」
身体的というよりは精神的に少し疲れたので、俺はみんなが見守る中ソファの上で横になっていた。
ジャンケンで誰が俺に膝枕をするかで激闘が繰り広げられ、見事に勝ち上がったのは才華だったわけだ。
「それにしても壮観じゃないか。私も含めてそうだと思うけど、こんなに大勢で過ごすことになるとは思わなかったよ」
那由さんの言葉にその通りだと俺を含めみんなが頷く。
せっかくの集まりにこうして膝枕をされているのはどうかと思うが……そんな風に考えていると茉莉が口を開く。
「こうして私を含め、みんなが甲斐君を通じて知り合った。この縁はとても大事にしたいと思ってるし、みんなとも強い絆を育んでいきたい……ふふっ、甲斐君にも言ったけど本当にこれからが楽しみなんだよね。那由さんと真冬さんには大人の女性としてのいろはを叩きこんでもらいたいし!」
「それを私に頼ったら終わりだよ?」
「そうだね。あたしはともかく那由さんはダメだよ」
「おい」
ぺしっと那由さんが真冬さんの肩を叩いた。
「これも全部、先輩と相棒さんが繋いだもの……なんですよね」
「そうだな……相棒のやつ、この状況を見て絶対に喜んでるぞ。それかやり過ぎたかもって苦笑してるかのどっちかだろ」
まあおそらく、相棒は満足した様子で俺たちを見守ってるんだろうなとは思う。
そんな風に苦笑していると、俺の顔におっぱいが降ってきた。
「むぐっ!?」
この体勢でそれが出来るのは才華だけで、彼女の特大サイズのバストが俺の顔の上で潰れている。
「やり過ぎってつまり、甲斐君の相手を作り過ぎたってこと? それはダメだよ、私たちはもう甲斐君から離れらないんだから。その言い方はダメ、だからこれは甲斐君への罰だよ」
「……これは罰なのか?」
「間違いなく罰だよ。おっぱいでむぎゅの刑」
それは全然罰でも何でもないんだわ。
「ねえ甲斐君」
「なんだ~?」
上手く声が出せないが愛華に返事をすると、彼女はこう言った。
「甲斐君一人に私たち女性が七人、仕方ないけどそんな風にエッチなイチャイチャは多くなると思うわ。大丈夫そう?」
「全然大丈夫だ。何なら俺が全員……は無理かもしれんけど頑張る」
「そこは頑張るって言わないとぉ!」
やめてください、流石に死んでしまいますから。
こうして才華とイチャイチャしていれば色々と気分が高揚するのは確かで、今誰が慰めているか当ててみてとか言われたり……まだ夜でもないのに大変素晴らしい時間を過ごした。
「……ふぅ」
時間は一気に流れ夜になり、夕食をみんなで済ませた。
俺を含め彼女たちの合計八人で鍋を囲み、すき焼きだったこともあってたくさん肉が腹の中に収まった。
今日はみんな泊まることになっているのだが、既に風呂も済ませたので後はもう寝るだけだ。
「マジで幸せだぞ俺は。なあ相棒、俺の笑顔を見てくれてるか?」
空に向かって問いかけた俺に、パジャマ姿の茉莉が近づいてきた。
茉莉は何も言わずに俺の隣に寄り添い、腕を抱くようにして空を見上げた。
「楽しかったね」
「あぁ。でもこんなもんじゃない、俺たちはもっとこんな時間を長く過ごすんだからさ」
「そうだね。あぁもう、本当に幸せだよ私♪」
そうだな……こうして寄り添ってくれる存在はあまりにも大きく、もう誰かが欠けてもいけないんだ。
これから先、俺はこの繋がりを守り続けていく……それを今日改めて俺は強く誓った。
「あ、そう言えば甲斐君」
「うん?」
「どうして私を一番最初に選んでくれたの? 催眠相手にさ」
「……あ~」
そういえばその辺りのことは一切話をしていなかったっけ。
茉莉を最初に選んだ時、つまり催眠アプリの存在を知ってから本当にすぐのことでとにかくエッチなことをしたいと考えていた時だ。
これを馬鹿正直に伝えていいものか迷ったのだが、俺は素直に口にした。
「怒らないでほしいんだけど」
「怒らないよ」
「……相棒の力が本物だと分かった時、一番最初に興味を引いたのが茉莉だった。見た目が派手だったのもあるし何より体付きがエロかったから」
「そうなんだ」
「あぁ。それでそのおっぱいを好きにしたいとか色々考えて……なあ、この話はやめようぜ」
「どうしようかなぁ。まあでも、つまりはこういうこと?」
俺をジッと見つめ、茉莉はこう言葉を続けた。
「私が一番最初に甲斐君の興味を引いたってことだよね? それ、私からすれば嬉しい以外の言葉が見つからないんだけど」
「……分かってる。茉莉がそう言ってくれることは分かってる。けど、もしも俺がクソみたいな外道だったらどうしたんだ?」
「う~ん、つまりあの世界の甲斐君ってこと? そんなもしものことを言われても分かんないよ。だって目の前の甲斐君が全てだもん」
「……………」
純粋に、真っ直ぐにそう言ってくれた茉莉に俺は見惚れた。
初めての出会いを思い返すことも少なくはないが、俺の出発点は間違いなく茉莉であることは確かだ。
お互いに色んなことがあったけど……そうだな、この子に会えて本当に良かった。
「茉莉」
「ぅん」
キスをしたい、そう言わなくても茉莉は応えてくれた。
しばらくお互いにキスを楽しみ、みんなが待つ部屋に戻る。
「あ、やっと来ました!」
「……二人でエッチなことしてない?」
ちょっとギクッとしてしまったが、顔には出てないので大丈夫なはずだ。
ただ茉莉が唇に指で触れたので、何をしていたかみんなに察せられてしまった。
「おいで甲斐君」
「ほらほらぁ♪」
実は今日、那由さんの家の中で広い部屋にこうしてみんなが集まっている。
こんなこともあろうかと全員分の敷布団を用意してくれたということで、まさかの一部屋で全員が寝れるという形だ。
(……これ、ただ寝るだけじゃないんだろうな)
茉莉が彼女たちの輪に加わり、パジャマ姿の七人が俺を待っている。
この中に入ったら絶対に抜け出せない、捕まって最後の瞬間まで彼女たちの愛に沈められてしまうと脳が警鐘を鳴らしている気もするが、それを求める俺がその警告を聞くわけがない。
「まるでサキュバスの巣に飛び込む物好きな勇者みたいだけど、望むところだ」
これ以上の幸せは望むべくもない、だが……それでも強欲なほどに彼女たちとの温もりを求めるのは悪いことではないのだ。
なあ相棒、見てるか?
俺たちはみんな、こんなにも笑顔でいっぱいだぞ?
【あとがき】
次回、つまり明日で終わります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます