今度は守られたぜぇ!
「なるほど……あ、じゃあここはこうなるんですか?」
「そうだな。その公式を使うことで答えが出る……よし、そうだ合ってるぞ」
「うしっ! ありがとうございます先生!」
「いやいや……それにしても真崎」
「はい?」
「最近のお前はどうしたんだ? 別に元から授業態度が悪かったというわけじゃないんだが、最近の真崎は随分と勉強に力を入れているだろう?」
「あ~……」
授業が終わった後の休憩時間、職員室で俺は先生にそう聞かれた。
勉強に力を入れているのは将来を安定させる一端になれば良いなという気持ちからなのだが、そう思ったのはやはり彼女たちの存在が大きい。
別に勉強に力を入れたからといって将来が約束されるというわけではないが、それでもやらないよりはやった方が遥かに良いと思っている。
「でっけえ男になりたいんですよ俺。だから頑張るんです」
流石に本当の理由を言うことは出来ないのでそんな風に言ってみた。
すると先生は少し目を丸くしたが、そこそこにツボに入る言葉だったせいかお腹を押さえるように笑った。
そこまで笑うことかよ、そう思ったけどまあ俺も先生の立場からしたら笑っちゃうかもな。
「そうか。頑張れよ真崎」
「はい」
言われずとも、俺はでっけえ男になるために頑張るさ。
それから教室に戻る際、これから体育館での授業なのか移動する二年の集まりの中に絵夢を見つけた。
基本的に絵夢は女子に囲まれているものの、当然同じように移動する中には男子も居るのだが、絵夢にはそれはお構いなしらしい。
「先輩♪」
「おう絵夢」
友人たちに声を掛けた後、絵夢はパタパタと足音を立てて駆け寄ってきた。
女子たちはそうでもないが、相変わらず男子は悔しそうというか恨めしそうに俺を睨んでくる。
今となってはその向けられる視線すらもどこか気持ちが良く、それだけ俺の心に余裕と自信が出来た証拠だろうか。
「先輩、ちょっとあちらの方にお願いします」
「え? あぁ」
そう言われて絵夢に手を引っ張られたのは人の目が届かない陰だ。
すぐに授業が始まるというわけでもないのでそこまで急ぐ必要はない、なので俺は絵夢に抵抗することはなかった。
陰に移動した瞬間、サッと絵夢は俺の胸元に顔を埋めるようにして抱き着いた。
「おっと、いきなりだな」
「えへへ、こうして元気を体の中に入れるんです。先輩ぃ、好きぃ♪」
「……………」
クンクンと匂いを嗅ぎながら更に身を寄せてくる絵夢にムラムラが溢れてくる。
いくら目が届かないとはいえここは学校なので……いや、今まで何度もやっていたことだけど改めて相手が素の状態だとストッパーが掛かるな。
「先輩、ムラムラしてきませんか? 昼休みに呼んでください♪」
「分かった。いつもの場所に来い」
「あぁ……はい♪」
絵夢ももう自分の性癖を隠さなくなってきたな……別に既に俺を含め他のみんなにも知られてしまっていることなので今更ではあるが、パッと見は清楚な絵夢だからこそ強烈であり凄まじさのある性癖だ。
本当のお楽しみは昼休みまでお預けということで、俺も自分から絵夢にキスをしてから彼女から離れた。
「体育頑張れよ絵夢」
「はい。ちょっと濡れちゃいましたけど頑張ります!」
だからそういうことを自信満々に言うんじゃないよ……。
誰にも聞かれていないよなと不安になったが流石に絵夢もそこは考えてくれていたらしく、ちゃんと周りに誰も居ないからこその言葉だったようだ。
その後は早く昼休みが訪れないかなとムラムラした気分で過ごし、そして昼休みになったことで俺は空き教室で絵夢だけでなく茉莉と才華とも合流した。
「ほら、改めてどんな風か見たいじゃん?」
「それにこうして素の状態の私たちが集まるのも新鮮でしょ?」
「……それはまあ確かに」
確かにこうやって催眠アプリ無しにみんながここに集まるのは初めてだ。
俺の目の前には荒く息を吐く絵夢がその瞳にハートマークを浮かべるようにして見つめてきている。
「……絵夢?」
「どうしたの……ってこの匂いは」
「……はぁ♪ はぁ♪」
俺も絵夢が前に立った時点で少し感じていた――むんわりと漂う甘い香りに。
「先輩、早くご奉仕をさせてください♪」
「あ、あぁ……」
それから茉莉と才華に見られる中、俺は絵夢からの奉仕を受けることになった。
待ちきれないと言わんばかりにサッと腰を折って屈んだ絵夢は俺のズボンに手を伸ばし、そのまま俺に天国のような時間を与えてくれた。
賢者タイムバフをこの身に受けた俺だったが、まだ絵夢は息が荒く幸せそうに体を震わせているのが本当におかしかった。
「絵夢、あなたもしかして何か入れてる?」
「……あぁそういう?」
二人の言葉に絵夢は頷き、ポケットからピンク色の丸いものを取り出した。
「先輩、これをどうぞ」
「……ってこれは!?」
丸い物体、その中心にはボタンと共に強弱を示す文字が書かれていた。
これが何かに気付かないほど子供というわけでもないのですぐに分かったが、つまり絵夢はずっとこれを入れているということだ。
どうしてこれを俺に渡したのかは分からない……しかし、絵夢を前にするとちょっとだけ表に出てきてしまう俺のS心が刺激された。
「……ほれ」
「っ!?!?!?!?!?」
一気にボタンの位置を強へと引き上げた。
その瞬間、絵夢はその場に座り込んでしまったが少し大変なことになり……俺と才華は諸々の掃除を、茉莉は腰砕けになった絵夢の介抱に動くことに。
「絵夢も相当だね。でも……こんな風に甲斐君に悪戯をしてもらう分には悪くないかも?」
「やめてくれって……」
「授業中、甲斐君の意志によって私たちに悪戯出来るんだよ? ドキドキしない?」
ドキドキする、最高にドキドキするけどそれは漫画の世界だけにしておくれ。
そんなこんなで刺激的な昼休みを過ごした後は眠たい中で頑張る授業、それを終えれば待ちに待った放課後だ。
愛華とフィアナに会う予定があるので俺はすぐに学校を出た。
どんな話をするかは伝えていないものの、二人もある程度は察しが付いている様子だったな。
「……おっと、すみません」
彼女たちについて考え事をしていたからか、俺は目の前を歩いていた女性にぶつかってしまった。
明らかに俺が悪いことは確実だったのでどこか怪我がないかを確認してから謝罪を口にしたのだが、その相手は俺をキッと視線を鋭くした。
「きっも、男の分際で何ぶつかってんの?」
「……すみません」
いや、確かに悪いのは何度も言うが俺だ。
それにしてはちょっと言い方きつくないかこの人……っていうかあれじゃん、この人以前に化粧道具を落として拾ってあげた女性じゃないか?
相手は覚えていないようだけど……そんな俺の考えは他所に罵声は続く。
「学生みたいだけどきっとパッとしない生活送ってるんでしょ? 女の子に相手されずに日陰に居るようなそんな生活をさぁ? 雰囲気からブ男の空気漂ってんのよクサいわマジで」
「……………」
一瞬、マジで一瞬相棒を使ってボロ雑巾のような目に遭わせてやろうと思ったが我慢した。
こういう相手は言い返せばそれだけ機嫌を悪くするだろうし、不幸な事故に遭ったと思って勝手に気持ち良くさせてやれば良いだろう。
「何澄ました顔してんのよクソガキ」
「……んだよマジで」
「あん?」
面倒だ……マジで面倒だこの人!!
とっととこんな相手から離れて待ち合わせ場所に向かいたい、周りの人は面白そうに眺める人と気に毒そうな目を向けてくる人で半々くらいかな……取り敢えず下手に出ても良いからこの場から離れようとした俺の背後から誰かが抱き着いた。
「甲斐君♪ 遅くなっちゃったぁ」
「……フィアナ?」
声と胸の感触でフィアナだと理解出来た。
背後から甘ったるくもあったがどこか冷たさを纏わせたフィアナの声に、俺はどうしてここに居るんだと首を傾げる。
もちろんフィアナが居るということは彼女も居るということだ。
「こんにちは甲斐君。ちょっと早く来たから辺りを回ってたのよ。凄く良いところで合流出来たわね?」
「……愛華」
目の前の女性のせいで嫌な気分だったというのに、二人が傍に居ることで一気に気が楽になり心は落ち着いてきた。
合流は出来たのでここに用はないからすぐに動こう、そう思ったが見たことがないほどに怖い顔をした愛華が女性に目を向けた。
「色々と私たちの大切な人に好き勝手言ったようですけど、明らかに言い過ぎではありませんか? 少なくとも私はそう思いましたよ」
「何よアンタ……」
「そうだよね。明らかに言い過ぎだし的外れなことばかり。甲斐君は凄く素敵な人だしいつも傍に女の子が居るもん私たちみたいに」
そう言って抱き着いたままのフィアナも加勢した。
多勢に無勢と感じたのか、女性は分かりやすいくらいに表情を悔しさに歪ませて舌打ちをしながら去って行った。
「……酷い目に遭ったな。まあでもありがとう二人とも」
「ううん、全然良いのよ」
「そうだよぉ。でも……ねえ愛華?」
「えぇ。そうねフィアナ」
「??」
お互いに頷き合ってどうしたのだろうと首を傾げる俺に愛華がこう言った。
「今度は私たちが守れたわねって」
「……あ、そういうことか」
確かにそうだなと俺も笑みを浮かべた。
取り敢えずアクシデントはあったが、こうして二人と合流したのでこれからフィアナの家に向かうことに。
さあ、彼女たちとも大切な話をするとしよう。
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