夢のような光景だぜぇ!

「……ねえ甲斐」

「……なあ甲斐」

「……なんですかお父様にお母様」


 俺はその日、真剣な表情を浮かべた父さんと母さんに尋問……というわけではないが問い詰められて……もいないか、ちょっと部屋の隅に手招きされていた。

 俺としても二人が何を気にしてこのような表情になっているのか理由は分かっている、その原因は間違いなく庭に居る五人の女の子たちだ。


「思ったよりいっぱいみんな持ってきたんだね」

「はい。お肉もそうですがお野菜も大切ですし」

「……でも、これはちょっと多いかも?」

「大丈夫よ。フィアナは大食いだから」

「ちょ、ちょっとそれはどうなのぉ!?」


 賑やかだ……非常に賑やかだ。

 まあ今日は約束されていたバーベキューの日ということで、俺が催眠アプリを通して知り合い仲良くなった五人が一堂に会している。

 しばらく前に茉莉と愛華は仲良くなったのだが、今日知り合ったばかりの絵夢と才華も愛華と仲良くなり、そして当然フィアナとも親交を深めることとなった。


(……茉莉もそうだけど本当に仲良くなるの早かったな)


 それはもう驚異的なスピードだった。

 まあ俺としては仲良くしてもらえることに越したことはないので嬉しかったし、みんながそれぞれ笑いながら楽しそうにしている姿を見れるのも良かった。

 そして何より! 五人それぞれの暑さに対応するための薄着が本当に素晴らしい!


「甲斐?」

「……おっと」


 いけないいけない、俺は今両親を前にしているんだった。


「あの子たちとどういう関係なの? 別に疑っているわけじゃないのよ? でも突然だったから少しびっくりしちゃってね?」

「あぁ。自慢の息子で心優しいお前が女の子にモテることに疑いはないんだが……それでもやっぱり気になってしまってな」


 ナチュラルに俺を喜ばせるんじゃないよ二人とも……。

 とはいえ流石に催眠アプリについて話すわけにもいかないので、俺としては学生生活の中で仲良くなったとしか言えない。

 五人にそれぞれ仲良くなるきっかけになった出来事があるわけだが、それに関してはいくら親であってもベラベラと喋るわけにはいかない。


(……もしかしたらいずれ、話をすることになるかもだけど)


 俺ではなく両親が彼女たちと仲良くなれば自然とそんな会話をすることはあるだろうし、俺としては今はまだ彼女たちの抱える秘密については話さないことにした。


「色々と縁があって仲良くなったんだよ。みんな凄い良い子たちだぜ? って同級生に向ける言葉じゃないかもしれないけど……えっと」


 しかし……だ。

 明確に仲良くなった理由を言わないのだとしたら言葉に迷うな……ちょっと俺は言葉に詰まってしまったのだが、どうも両親からすれば満足したらしい。


「そんなに焦らないで? さっきも言ったけど別に疑ったりしてるわけじゃないからね。でもそっか、甲斐もあんな可愛い子たちを家に呼べるようになったのねぇ」

「そうだな。今まではずっと晃君や省吾君ばかりで女の子の影はなかったからな」

「あはは……まあそれはそうだね」


 確かに今まで男友達しか家に呼んだことはなかったので、こうして彼女たちが家に来たことは両親にとって凄く新鮮なんだろう。


(風邪を引いた時には二人とも居なかったしな)


 ちなみにこうして困惑していた両親だが、一応既に五人とは挨拶を交わしている。

 その時点で五人がそれぞれ良い子だというのは分かっているだろうし、俺は特に何も心配はしていなかった。

 その後、風呂に向かった父さんとキッチンに向かった母さんに背を向けて彼女たちに元に戻った。


「あ、お帰り甲斐君。何のお話をしてたの?」

「うん? あぁあの五人とどんな関係なのかって。今まで晃たちしか家に呼んだことなかったら凄く驚いたんだってさ」

「そうなんですね」

「……つまり、あの時を含めて私たちが初めてってこと?」

「だな」


 そう、君たちが俺にとっての初めての相手だ色々とな!!

 それから五人と協力する形で焼肉パーティの準備を整えるのだが、本来ならここに姉ちゃんも参加したかったみたいだけどあっちはあっちでいつメンとご飯に出掛けたのだが凄く残念そうにしていた。

 もしかしたら途中で帰って来る可能性も無きにしも非ずだが……たぶん酒入るだろうし誰かの家に泊まりそうかな。


「……しかし」


 目の前の景色……正直に言って俺はムラムラしていた。

 さっきも言ったがここに来た時の彼女たちは上着を羽織っていたものの、流石に暑いということで薄着へと変わったわけだが……本当に目の毒だ。

 才華と絵夢に至っては服の上からブラの模様が僅かに見えたりしているほど……いやいや、良く見たら他の三人も同じようなものだった。


「先輩?」

「のわっ!?」


 そんな風にジッと見ていたらいつの間にか絵夢が傍に来ていた。

 俺を見上げてくる絵夢の角度からだと、首元からその胸の谷間がこんにちわしていてとてもエッチな光景だ。


(……絵夢に限らず俺はもう彼女たちの全裸を何度も見ている。それどころか舐めてもらったり挟んでもらったり色々しているにも関わらず、この着衣状態から薄らと見えるエロスも悪くないもんだなぁ)


 服を着ているからこそ感じるエロス……か、最高じゃねえか。


「……っと、どうしたんだ?」

「あぁいえ、ボーっとしていたみたいなのでどうしたのかなって」

「あぁすまん。普段はあり得ない光景だからさ」

「そういうことですか。確かに私も凄く新鮮な気分ですよ」

「だよなぁ」

「はい!」


 元気な返事と共にこっちまで頬が緩んでしまいそうな可愛い笑顔である。


「ちょっと、何二人の世界を作ってるのかなぁ?」

「うんうん」

「おわっ!?」


 そんな声と共に背中にそれなりに強い衝撃を受けた。

 脇の下を通るように腕が回り、誰かが抱き着いてきたようだが……この背中に当たる胸の感触は茉莉だな。


「茉莉?」

「およ? 良く分かったね?」

「俺が茉莉を間違えるとでも?」

「っ……えへへ、そっか」


 たぶん絵夢でも才華でも間違えることはないと思うぞ絶対に。

 茉莉だけでなく才華の声も聞こえた気がしたのだが、才華は隣からひょこっと顔を出すようにして俺の正面に立った。

 そのまま才華は両腕を広げるようにして距離を詰め、正面から思いっきり俺に抱き着いてきた。


「茉莉が後ろから攻めるなら私は前から攻める」

「……おぉ」


 前と後ろから感じる圧倒的な柔らかさを前に俺は感動に似た声を漏らす。

 しかし同時にちょっと前屈みになってしまいそうになり、俺はどうにか不審に思われない形で二人の抱擁から抜け出した。

 ……ていうか本当にこの子たちは催眠状態でないにも関わらず距離が近い。

 そのことに対して疑う気持ちは一切ないし怖いとも思わない、むしろ嬉しい気持ちでいっぱいなのだが……くぅムラムラするぜぇ!!


「本当に仲が良いのね」

「あなたたちも来て。みんなで甲斐君を囲もう」

「よし来たぁ!」

「おい!?」


 愛華とフィアナもかなりノリノリな様子で俺に近づいてきたのだが、特にフィアナに関しては手をワキワキとさせて逆に俺が襲われる立場ではないかと錯覚する。

 焼肉パーティなんて投げ出して今すぐ五人を連れて静かな場所に行きたい、しかし相棒は部屋で良い子にしているため手元にはなかった。


「……? はっ!?」

「フィアナ?」


 手をワキワキとさせて俺をロックオンしていたフィアナだったのだが、何かに気付いて胸元をパンと叩いた。

 その衝撃でプルンと揺れた特大バストだったが、どうも谷間の部分をちょうど蚊に刺されたらしく赤くなっていた。


「刺されちゃったぁ……」

「あらあら……薬あるから塗ってあげる」

「お願いぃ!」


 谷間を狙う蚊だと? 奴らもやはり生き物である以上エロスに惹かれるのもしれないな……んなわけないとは思うけど。

 痒み止めを愛華がフィアナの谷間に指を差し入れるようにして塗るのだが、その光景もまたエッチで俺は更に動けなくなってしまう。


「ねえねえ、そろそろお肉とか焼こうか」

「せ、せやな!」

「なんで関西弁?」


 気にしないでくれ頼むから。

 網の上に肉を置いていくと心地の良い音と共に美味しそうな香りが漂ってくる。


「……美味しそう」

「まだなのぉ?」

「まだよ。大人しく待ちなさい」

「は~い……」

「フィアナさんって食いしん坊なんですね」

「大食いって言ってたし」


 そしてその栄養は胸に行くんだな分かります。

 もう少しで肉を含めて野菜の方も食べられるといった頃合いになり、みんなでコップに注がれたお茶を片手に丸い円を作った。

 彼女たちに見つめられる中、俺は少し照れ臭い気持ちになりながらも口を開く。


「えっと……今日は本当に集まってくれてありがとな。俺としても、まさかこんな風にみんなと時間を過ごすことが出来るなんて思わなかったよ」


 本当に感慨深いものだ。

 最初は茉莉と知り合い、絵夢と知り合い、才華と知り合い、そして愛華やフィアナとも知り合った。

 彼女たちと過ごすうちに欲望だけでなく大切だとも思い始め、素の彼女たちに伝えることはないだろうけど好きにもなって……本当に充実した日々が続いている。


「その……悪い、言いたいことはいっぱいあるけど肉の方が早く食ってくれって言ってるみたいだしな。だからこれからもよろしく! 乾杯!」

『かんぱ~い!!』


 さあ腹いっぱい肉を食べるとしようか。

 夏休み最後のイベントである焼肉パーティを俺は五人の美女と過ごすことになったわけだが、間違いなく最高の思い出になるはずだ。


(この後は……ぐへへ)


 おっと気持ち悪い笑みはその時まで取っておくんだ俺よ。

 俺は五人と過ごす中、ある意味で素晴らしい光景を目にしながらムラムラを我慢することになるのだった。






“食事にはデザートが付き物ですよね?”


 そう誰かが囁いた。

 とあるスマホの画面に映るのは長い茶髪の少女と、銀髪セミロングの少女――愛華とフィアナだった。

 まるで時が来たと宣言するかのように、妖しく何かが動き出したのは言うまでもない。



【あとがき】


フィアナとフィリアがごっちゃになっていましたが自分のミスです。

正しくはフィアナですね。

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