みんな良い子たちばかりだぜぇ!

「やっぱり真崎くんだぁ!」

「まさかここで会えるなんてね」


 そう言って愛華と染谷が近づいてきた。

 まさかここで二人と会えるとは思っておらず、俺はビックリしながらも彼女たちの水着姿に少なからず興奮していた。


(おいおい! 二人とも茉莉たちと同じ感じの水着かよ! しかも染谷に関してはちょっと布面積少なくねえか!?)


 そんな装備で大丈夫か?

 ついそう言いたくなるほどだったが異国の血が入っているからこそなのか、まあなんにせよ素晴らしいの一言だ。

 愛華の水着には花柄の模様が刺繍されていて可愛いし、染谷に関しては水着の色が赤色ってのもエッチだし……ヤバい、語彙力がなくなっちまう。


「……あ」


 近づいてくる二人を見て俺はちょっと待てよと落ち着いた。

 目の前で愛華と染谷が近づいてくるのは別に良いし、俺にとってはもう知り合いなので会ったから気まずいなんてこともない。

 しかし、こうして茉莉たちと彼女たちが出会うのは初めてになるわけだ。


(……いや、別に慌てたりすることはねえよな)


 何も慌てることがないことに気付いた俺はゆっくりと背後を向いた。

 茉莉たちも当然二人のことが気になっているようでジッと見つめているが、俺が何かを伝えるよりも早く茉莉がこんなことを口にした。


「それで甲斐君、どんな人助けをしたのかな?」

「え?」


 その言葉に俺がポカンとしたのは言うまでもなかった。

 その後、せっかくということで五人を連れて俺は休憩スペースまでやってきた。

 まだ何もしていないので休憩も何もないのだが、茉莉たちに二人のことを紹介しておきたいと思ったからだ。


「そういうことだったんだね」

「何というか、先輩らしいです」


 当たり前だが催眠アプリに関してのことは伏せており、俺が伝えたのは街中で質の悪いナンパに引っ掛かりそうになった二人を助けたことだ。

 俺としてはそれだけを伝えるつもりだったんだが、まさかの愛華の方から自分たちの秘密について口にした。


「甲斐君には助けてもらっただけでなく、過去のトラウマを乗り越える意味でも少しだけ協力してもらってるの。まだ時々会う程度だけど、男性と触れ合う時間を持てたことで少しずつ改善に向かってるわ」

「そうなんだよぉ! 真崎君とは漫画の趣味も合うし、すっごく良いお友達なのぉ」


 だからそっちの二人も俺を調子に乗らせるようなことを言うんじゃないよ。

 五人の美女、しかも俺好みのスタイル抜群の彼女たちに囲まれているとあっては色々と俺の何かが爆発してしまいそうだった。

 惜しむらくはこの場にスマホがないことで、もしも手元にあったら速攻で五人に催眠を掛けて楽しんでいたところだ。


(……いや、でも五人同時に長い時間ってのはどうなんだ? 三人でも結構スマホへの負担が大きいし……もしかして五人同時ってのはちょっと夢を見過ぎか?)


 そう考えると気持ちが萎えてしまった。

 だが今この状況で色々なものが萎えるのは逆に良かったかもしれないと、俺は五人の巨乳を目にしながら思うのだった。


「でもそっか……ふ~ん」

「……なるほど」


 そんな中、茉莉と愛華がやけに見つめ合っていた。

 もしかして百合の花が咲き誇ったのかと勘繰りをしたがそうではなく、何やらお互いに頷いては納得した様子で俺は首を傾げるだけだ。

 二人のような雰囲気は彼女たちだけでなく絵夢と才華、染谷もどこか見つめ合って頷いていた。


「……どうしたんだ?」

「何でもないよ」

「何でもないわ」


 クスッと茉莉と愛華に微笑まれた。

 どこか釈然としない部分があったが、俺としては取り敢えず五人それぞれが仲良くしてくれそうで安心していた。

 まだ知り合って間もないとはいえ、五人がそれぞれ良い子だというのは俺自身分かっているので特に心配はなかったが、それでもホッと息を吐いた。


「ところで真崎君!」

「あ、はい」


 そんな中、グッと染谷が俺に近づいてきた。

 才華に匹敵する特大サイズのバストを揺らして近づいてきた彼女に俺はビックリしてしまい後ろに下がったのだが、背後に居たのは才華でピタッと背中にくっ付いてきた。


「大丈夫?」

「お、おう……」


 背中に感じる柔らかさに興奮しつつ、俺は何事かと染谷に目を向けた。

 染谷の様子に愛華だけは理由が分かっているようでクスクスと口元に手を当てて笑っているのだが、果たして染谷は俺に何を言いたいのだろう。


「どうしてぇ!」

「……………」

「どうして愛華は名前呼びなの? 私は名字のままなのにぃ!」

「あ……そんなこと?」

「そんなことってひどいよぉ!」


 染谷は目元に手を当ててしくしくと声を上げ始めた。

 それがウソ泣きであることは百も承知だし、愛華はずっと笑っているし……とはいえもう名前を呼ぶかどうかで照れる時代はとうに過ぎている。


「……フィアナ?」


 そう染谷……ではなく、フィアナと名前を呼ぶと彼女は顔から手を離した。

 その顔は当然泣いたりしておらず、フィアナは満面の笑みを浮かべながら俺の両手を握りしめた。


「うん! 甲斐君!」

「……………」


 ……なんつうか、凄い今更なことを俺は考えた。

 確かに彼女たちと知り合ってからというものの、催眠アプリを使ってそれはもう表ではカミングアウト出来ないことをしてきたものだ。

 俺が彼女たちに求めているのはただただこの欲望を発散してほしいとそれだけだったというのに、やっぱり女子の笑顔ってのは心を幸せにしてくれるんだなと改めて俺は思うのだった。


「それじゃあねぇ!」

「ここでまた会ったらお話しましょう」


 その後、俺たちは愛華とフィアナとは別れた。

 二人とも女子校の友人たちと遊びに来ているとのことで、今日はお互いに自分たちの知り合いとの時間を優先しようということになったのだ。


「あの子たち、結構面白い子たちだね」

「女子校ってことで聞ける話は割と新鮮だな」


 特にフィアナは重度のオタクだし、そう伝えると才華は目を丸くした。

 どうやら才華からしても彼女たちはれっきとしたお嬢様という感じに見てたみたいで、そうなるとアニメや漫画が大好きという部分に結び付かなかったらしい。


「茉莉先輩!」

「よし来い!!」


 俺と才華の視線の先では茉莉と絵夢が柔らかいボールを使って遊んでいた。

 二人が体を動かせば動かすほど別のボールも変幻自在にブルンブルンと揺れており大変眼福だ。


「ねえ甲斐君」

「う~ん?」

「茉莉と何かあったの?」

「……なんで?」


 茉莉と何かあったとはどういうことだろうか、確かに今日の茉莉はいつもより一段と魅力的に見えるような気はしていたが……まあ何かあったと言えば彼女の家に行って好き勝手またしたくらいだが、それはいつもと同じだしなぁ。


「ま、何となく分かるけど」

「どういうことなの?」

「ううん、何でもない。でもこうなるとちょっと謎だね……」

「才華さ~ん?」


 しばらく何かを考え込んだ才華だったが、ふと何かを思い付いたのかこんなことを口にした。


「ねえ甲斐君、今度うちに来ない? お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも、改めて甲斐君に会ってみたいって言ってるし」


 良いのかよ才華、俺を誘うということはつまりヤルってことぞ?

 相変わらずの無表情でジッと俺の顔を見つめてくる才華に、俺は少し考えた後に分かったと頷いた。

 こうして才華の家に行くことが決まったわけだが、当然今の段階から俺は少しビンビンギンギンになってしまいちょっと大変だったのは言うまでもない。

 そして何より……その後にイベントが一つ俺を待っていた。


「あ、甲斐君! あれやらない!?」

「フィアナ?」


 遊んでいた茉莉と絵夢に俺と才華が混じった後、休憩がてら適当に俺は一人でブラブラと辺りを散策していたらまた見かけることになったフィアナが俺を呼んだ。

 傍には愛華とおそらく女子校の友人が数名居たのだが、やはりまだ男子禁制の花園にはまだ見ぬ美女が多く居るようだ。


「誰なの?」

「あ、もしかしてあの人が愛華たちの言っていた?」

「そうよ。私たちにとって恩人になる大切な友人なの」


 くくっ、嬉しいことを言ってくれるじゃねえか。

 にやけそうになる口元を何とか抑え、フィリアの傍に近づくと彼女は俺の手をギュッと握ってある物に指を向けた。


「あれやろう!」

「……ウォータースライダーか」


 かなり高い場所から滑り落ちるスライダーだった。

 実を言うと少しばかり俺は高いところが苦手というものがあるのだが、それでも美少女と遊べるなら喜んで向かうことにしよう。


「……嫌、だったかな?」


 ただ不安は顔に出ていたらしくフィアナにそう聞かれてしまったが、俺はすぐに笑みを浮かべて逆にフィアナの手を取って歩き出した。


「ちょっと高いところが苦手なだけで大丈夫だ」

「本当に?」

「あぁ」


 そしてスライダーに向かい、俺たちの順番がやってきた。


「これに座ってください。どちらが後ろになりますか?」

「私、甲斐君に背中を預けたいかなぁ」

「よし来た任せろ」


 怖い、確かに怖いのだが怖さと興奮でテンションがおかしくなっている。

 まず俺が敷物の上に座り、その俺の足の間にフィアナが座った。


「っ……これ、ドキドキするね?」

「……おう」


 フィアナにそんなことを言われたわけだが、やはり俺はすぐには動くことが出来なかった。

 係員や後ろで待つ人たちがとても良い人たちだったので、ただ微笑ましく見つめられていたわけだが俺も腹を括った。


「……行くぜ」

「うん。あ、そうだ甲斐君」

「うん?」

「途中で怖くなったら思いっきり抱きしめても良いよぉ? おっぱいとか掴んじゃっても全然良いからぁ」

「……………」


 その瞬間、自分で言うのもなんだが俺は凛々しい顔付きになった気がした。

 もう逃げ道はなく突き進むだけ、俺はフィリアと共に出撃した。


「フィアナよ、今が駆け抜ける時!」

「お~う!!」


 結果、物凄く怖かった。

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