プール、それは最高の場所だぜぇ!
『最近マジで暑いよな』
『冷房の効いた部屋から出られねえ』
「暑すぎて今日アイス三本くらい食ったぞ俺」
スマホから聞こえてくる声に俺はそう返した。
今は夜なのだが、スマホにインストールされたボイスチャットアプリを使って晃と省吾の三人で会話を楽しんでいた。
主に二人が喋っているのを俺が相槌を打ち、時には今のように言葉を挟むようにしているが……当然いつもはこうではなく、俺もバチバチに会話に参加し喋りまくっている。
「……ふへ」
『なんか変な笑い声聞こえなかったか?』
『甲斐?』
おっと、ついついキモイ笑いが出ちまったぜ。
今俺が笑いを零したことからも分かるように、ついに明日に迫ったビッグイベントのことを想像してしまっているのでおかしくなっているというわけだ。
(明日には水着の三人と会える……いやぁ最高だねぇ)
才華に関しては既にどんな水着かは分かっているのだが、他の茉莉と絵夢に関しては完全に初見となる。
どんな水着だろうが絶対に似合うであろうことは予想出来るものの、いやらしいだが俺は彼女たちとプールに行けることも当然楽しみだ。
(それ以上にその後のムフフなお楽しみの時間が良いんだよなぁ)
ただプールで三人と遊ぶだけ? そんなの冗談ではない。
俺は常に自らの心の中で燻っているリビドーを発散させたいと強く考えており、そのためには彼女たちという存在は必要不可欠だ。
『なあ甲斐、明日なんか予定とかあるのか?』
「ある」
『そ、そうか』
『食い気味だったな……』
何も予定が無かったらきっと何かの誘いをするつもりだったようだが、残念ながら明日の予定は既に埋まっている。
その後、二人と他愛無い話をしてから俺はベッドに横になった。
茉莉の家に行く前日のように心臓がドキドキしておりとてもではないが簡単に眠れる状況ではない、しかし幸いなのはちゃんと眠たかった。
「……ふわぁ」
欠伸も出てきて寝る準備は万端だった。
夜更かしして寝坊なんて目も当てられないので、俺はジッとするように瞳を閉じて意識がスッと無くなっていくのを感じた。
そして、翌日のこと。
「……くっそおおおおおおお!!」
俺は盛大に待ち合わせに遅れていた。
一応茉莉に三十分ほど遅れるとは伝えたが、女の子との待ち合わせに三十分も遅れるなんて絶対にしてはいけないことだと理解している……理解しているけれど、それでもこうして俺はやってしまったわけだ。
「なんで……なんであんなタイミングで……っ!!」
実はしっかりと余裕を持って家は出た。
普通に約束の時間より早く着くくらいには完璧な計算だったが、それを御破算にしてしまう出来事が目の前で起きたのである。
「なんであんな時に事故なんかしやがるんだ!!」
目の前で軽トラが電柱に突っ込むという事故が発生したのだ。
運転していたのはお年寄りの方で呆然としていたが、体を痛めたのかその表情は苦痛に歪んでいた。
それなりに大きな音だったので近くの人も何事かと顔を見せたが、誰一人として運転手のお爺さんの元に駆け寄る人が居なかったのだ。
『大丈夫か爺さん!! そこのアンタ、救急車呼んでくれ!』
『わ、分かった!!』
仮に俺が駆け寄らなくても誰かが代わりをしたとは思うが、それでももしどこか怪我をしていて大事になってしまうのは嫌だった。
救急車を呼んでもらったが、その間ずっと俺は痛みと戦う爺さんと傍でずっと励まし続けていた。
救急車が来た後に警察も当然やってくるわけだが、そこで実際に事故現場を見ていた俺はそこそこの時間拘束されてしまい、そして解放されて今こうやって急いでいるというのが事の顛末である。
「……あ、居た」
待ち合わせをしたのは駅前、そこに三人が待っていた。
俺は爺さんを助けたことに時間を取られたとは思っているが間違ったことをしたとは思っておらず、人として当然のことをしたまでだと自負しているのであの爺さんに文句を言ったりするつもりは微塵もない。
それでも遅れたことについてはちゃんと謝らないとだ。
「あ、甲斐君!」
茉莉が最初に俺に気付き、大きく手を振ってくれた。
絵夢と才華も俺に気付いて笑みを浮かべてくれたが、俺はすぐに彼女たちに駆け寄って深く頭を下げた。
「真に申し訳ない!!」
取り敢えず爺さん、もう会うことはないだろうけど無事に病院から出てこないと許さないとだけ言っておく。
現れた瞬間に頭を下げた俺にまず茉莉が口を開いた。
「頭を上げて甲斐君。きっと甲斐君のことだし何かあったんじゃないの?」
「……それは」
わざと遅れたわけではない、それは察してくれたようだった。
もちろん絵夢も才華も同じらしく、才華に至ってはハンカチを取り出して顔に流れていた汗を拭き取ってくれた。
「ありがとう才華」
「ううん、どういたしまして」
「先輩、取り敢えずどうしたんですか?」
「……あぁ実は――」
俺は先ほどあったことを三人に伝えた。
一応遅れること自体は茉莉に伝えていたが、何があったかは伝えていなかったのでそれを知った三人はどこかホッとした様子になり、そして何故からしいねと言って微笑んだ。
「甲斐君に何かがあったとかじゃなくて安心したよ」
「はい。もちろん事故をされたお爺さんのことは心配ですけど……でも凄く立派な理由じゃないですか」
何だかんだ、こんな空気になるような気はしていた。
それにしても事故があったのは確かだしお爺さんを助けたから遅れたのは何も嘘ではないのだが、やけにあっさりと信じてくれたなと俺は聞いてみた。
「甲斐君の言うことを疑う必要があるの? 何もないでしょ」
「あ、はい」
才華にいつもの無表情でそう言われてしまった。
茉莉と絵夢もどうやら同じらしく、才華の言葉に何も違和感を持たないどころかその通りだと言わんばかりに頷いていた。
(……俺、信頼されてるんだなぁ)
場所が場所なら感激して大声を出していたかもしれない。
こうして俺は三人と合流したわけだが、遅れを取り戻すために早速目当てのレジャー施設に向かうことになった。
「……?」
「どうしたの?」
全員揃っての移動になったわけだが、俺はやけに茉莉に視線を吸い寄せられた。
服装などを除けば特にいつもと変わりはない茉莉のはずなのに、こうして見つめていると自然とドキドキしてくるのは何なのだろうか。
いつもよりも色気というかエロさをダイレクトに感じるというか……自分でも上手く言葉を言い表せない。
「……えへへ」
「っ……」
俺と違って何かを察した様子の茉莉は照れ臭そうに笑ったのだが、その笑顔の何と魅力的なことか。
「茉莉先輩……やっぱり何かありましたよね」
「……………」
どうやら絵夢も気になったらしく、才華に至ってはジッと茉莉を見つめていた。
色々と問題はあったものの、俺たちはそれからすぐにレジャー施設に辿り着いた。
「……ったく、どんだけ視線を集めるんだっての」
ここに来る途中、やはり三人の美女を連れているとなれば大量に視線を集めた。
明らかにナンパ慣れしているようなチャラ男の姿も見られたが、やはり俺には相棒が居るためいつでも掛かってこいやという気持ちだったのは大きかった。
「さてと、それじゃあしばらく待っててくれな相棒」
着替えと共にスマホをロッカーに保管し、俺は早速プールの所まで向かった。
「……おぉ人がいっぱいだぁ!」
思えば俺はこういったレジャー施設に来たことはなく、市民プールくらいが今までだと普通だった。
なので色々とアトラクションが充実しているのも分かるが、とにかく利用客が多く中でも親子連れが群を抜いていた。
「お待たせ~」
「お、来た……か」
振り向いた瞬間、俺は言葉を失った。
水着に身を包んだ三人を見た時、俺は咄嗟にいつもスマホを入れているポケットの位置に手を当ててしまった。
(……って俺の馬鹿、相棒は今手元にはないんだった)
恐ろしい、ただ一目見ただけで俺の欲望をこれでもかと煽ったその光景にはただただ恐ろしいという表現しか出来ない。
「どうかな?」
「先輩、どうですか?」
「私はもう感想もらってるけど一応」
才華の白ビキニは既に見ていたが……言ってしまえば茉莉と絵夢もビキニだ。
茉莉はオレンジ色のビキニ、絵夢は胸元にフリルが付いているタイプでヒラヒラと揺れて可愛らしい。
特大サイズの二人に挟まれている絵夢の膨らみは少々控えめに見えてしまうが、それは隣の二人が大きすぎるだけだ。
「……っ」
「あ、鼻血」
マズイ、鼻の頭が熱いと思ったらヌルッと赤い液体が垂れてしまった。
女子の水着姿を見て鼻血を出すなんて如何にも興奮していますと言っているようなものなので、俺はこれ以上ないほどに恥ずかしかった。
(まあでも、この光景は本当に素晴らしい!!)
もうね、俺は心から感動していた。
ちょっと鼻血の方が落ち着くまでゆっくりしようとのことで、まだ誰も遊ばずに俺の傍に居てくれたのだが、やはり近くで揺れる三人の果実から目が離せない。
ちくしょう相棒、何故お前は防水仕様ではないんだ!!
「それだけ興奮したってことかな?」
そう茉莉に耳元で囁かれ、色々なモノがイライラ状態だ。
後少し、後少しで鼻血も止まるかと思われたその時……俺は目の前に歩く二人の女性と目が合った。
「……え?」
「……あ!」
「真崎君だぁ!」
なんと愛華と染谷の二人だったのだ。
しかも二人とも当然水着ということで……また少し、ティッシュが必要になったのは言うまでもなかった。
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