才華はやっぱり凄いんだぜぇ!
『またいつでも来たい時に来てね?』
「……うおおおおおおおおおっ!!」
茉莉の家に行った夜のこと、俺は彼女から送られてきたメッセージを見て雄叫びを上げていた。
クラスの女の子の部屋に行くだけでなく、こうやって向こうからお誘いをもらえることの幸せったらないぜ!
「やっぱり茉莉の体は良いよなぁ……柔らかくて良い匂いがして……しかも催眠中は凄く積極的だしエロいし、段々と色々上達してるし」
時には勉強だって教えてくれる心優しいギャル……なあみんな、優しいギャルってのはやっぱり存在するみたいだぜ俺が保証する。
「……って、誰に言ってんだって話だな」
茉莉の心優しい提案をもらって俺が考えることは彼女のエロさ……いやね、これはもう思春期の男子からしたら普通なんだ。
茉莉に返事をすることも忘れて今日の彼女の感触を思い出し、俺はしばらくの間素晴らしい記憶の中に浸るのだった。
「……でも一つだけ分からないのがあるんだよな」
いつもならこうやって思い出すとちょっと興奮してしまって処理をするというのがいつもの流れのはずなのだが、今日は一切それをしようと思わないくらいにスッキリしてしまっている。
もちろん全く興奮しないわけではない、それでも今日はもう良いかなと俺はずっと思っていた。
「ま、良いか。取り敢えず一週間後とか凄い楽しみだ」
一週間後、それは既に茉莉たちと話していたことの一つで街の中に出来た新しいレジャー施設に遊びに行こうという計画を立てている。
俺、茉莉、絵夢、才華の四人で行くことになっているわけだがそれも今から本当に楽しみで仕方ない。
「三人とも高校生離れした体だし、どんな水着を見せてくれるのか……ぐへへ」
流石にプールの中にスマホを持っていくことは無理だが、それでも何とか空き時間を作って水着姿の三人とイチャイチャしたいものである。
その後、俺はしっかりと茉莉に返事をしてから眠りに就くことに。
「ふわぁ……じゃあおやすみっと」
明日の予定は特にないけど……いやあったわ。
「……そう言えば水着なかったわ。買いに行かないと」
明日の予定は一瞬にして決定した。
そして翌日のこと、俺は家で昼食を済ませてから街に出た。
買いに行こうと考えているのは水着のズボン一つだけで特に他に何か用事があるわけでもない。
「暑いしやってらんないわこれ」
もう八月に入ってしまったので夏真っ只中だ。
気温もかなり高く、ニュースで何度も熱中症には気を付けろと言われているほどなので本当に暑い。
たぶん昨日茉莉の家に行った時より更に暑い気がした。
ただ歩いているだけなのに額から汗が噴き出すほど、俺はすぐにデパートに駆け込んで水着売り場まで足を進めた。
「シンプルなので良いよなこういうのは」
女性と違って男の水着なんてものは簡単なもので良い。
とはいっても見るからにダサい模様とかは嫌なので、ちょっとかっこいいなと思える感じのものを俺はチョイスした。
「ありがとうございました~!」
会計を終わらせてその場から去ろうとした俺だったが、ふと女性の水着売り場の方へ視線を向けた。
そこに居るのは当然女性たちばかり、だが中にはカップルの片割れだと思われる男の姿も本当に少ないが居た。
「……え?」
だがその中に見覚えのある顔が居たのを俺は見逃さなかった。
ジッとビキニタイプの水着を手にして見つめているのは長い黒髪巨乳の女の子、俺にとって本当に親しい間柄の女の子になった才華だった。
「……?」
「あ……」
当然こうやって見つめていると才華も俺に気付くわけだ。
分かりにくかったが少しだけ頬を緩ませた彼女は水着を元あった場所に戻し、俺の方に向かって歩いてきた。
「こんにちは甲斐君」
「お、おうこんにちは才華」
俺は別に覗き見をしていたわけではないぞ、そう言おうとは思ったが才華のことだしそんなことは思ってないだろう。
水着の入った紙袋を持っている俺を見て才華は察したらしく、だからなのか俺にこんな提案をするのだった。
「実は約束の日に着ていく水着を選んでいたの。甲斐君の好みを聞かせてほしい」
「俺の好みで良いんか?」
「うん」
ほ~……それはそれは何とも素晴らしい提案をいただきましたよっと。
俺が頷くよりも早く才華に手首を掴まれ、そのままさっき彼女が居た場所まで連れて行かれた。
「……やっぱり女性の水着っていっぱいあるんだな」
「そうだね。ねえどれが良さそう?」
これは重大任務である。
普段なら男の俺が来るような場所ではないため、緊張もしてしまっているが才華に似合う水着を選ぶために脳を必死に働かせる。
(……白のビキニ……やっぱりこれだな)
特に捻りはないがさっき才華が見ていたこの白のビキニが良い気がする。
白というのは何にも染まっていない清廉な色って感じだし、長い黒髪の才華にとても似合う気がする。
そしてビキニということで当然露出度は高く、あの豊満な胸を支えることが出来るのかという怖さすらも一つの刺激として見れるだろう。
「それが良いの?」
「え? あぁまあ……さっき才華が見てたやつだけどさ。これ、似合うと思うんだけどどうかな?」
「それにする」
似合うと思う、そう伝えると才華は一切考える素振りを見せることなく水着を手にレジに向かった。
簡単に決めたなとは思いつつも、あの水着を身に付けた才華を見たいので俺は自分に良いことをしたと褒めてやりたい気分だ。
「あれ?」
レジに向かったかと思えば才華は何故か戻ってきた。
どうやらやっぱり一度試着をしてから考えてみたいとのこと、確かにそれが良いよなと俺も頷いた。
「じゃあ待ってる……ってのも変だけど、居た方が良い?」
「うん」
待っていた方が良いとのことだ。
試着室の傍で俺は待つのだが、やはりなんとも言えない居心地の悪さをこれでもかと感じていた。
カーテンを一つ通した向こう側では才華が今まさに水着に着替えている最中でありきっと素晴らしい光景が広がっていることはずだ。
「試着できた。甲斐君、どうかな?」
「え?」
カーテンが開き中から才華が姿を見せてくれた。
どうやら俺の感想も欲しかったようなのだが、まさかこうしてこの場で見せくれるとは思わなかった。
白の水着ということで俺が思ったようにかなり才華には似合っており、そして重たい胸をしっかりと支えていた。
性的にしか見ることの出来ない大きな胸を支えるのが清楚なイメージを思わせる純白の水着、そんな矛盾を抱えた光景に俺は瞬時にスマホを取り出し……催眠アプリを使うこともなくポケットに戻した。
「どうしたの?」
「いや……」
今俺たちが居る場所は店であり、まだこの水着は買ったわけではないので店の商品のままだ。
きっとアプリを使った瞬間、俺はこの小さな試着室の中で才華と密着しありとあらゆる好き勝手をするし、それにきっと才華も応えてくれるはずだ。
(それだと水着が絶対に汚れちまう……それだけはマナー違反だぜ)
俺は心を鬼にしてスマホから手を離した。
そして改めて才華の姿を目に焼き付け、俺は親指を立ててこう伝えた。
「良いと思う。凄く才華に似合ってるよ」
「……うん。じゃあ決まり」
こうして才華の水着は購入されるのだった。
これでお別れになるということはなく、俺は才華と一緒にもう少しだけデパートの中をブラブラすることになった。
「お祖父ちゃんが甘いお菓子を好きだから。ちょっと買おうかなって」
「良いじゃんか。俺も何か家族に……お?」
美味しそうなシュークリームの特売を見つけたので俺はすぐに駆け寄った。
才華も同じのを買うとのことで、俺たちは揃ってシュークリームを買って近くのベンチに腰を下ろした。
「……むぅ」
「どうした?」
そこで休憩がてら才華と話をしていたのだが、何故か才華が少し不満げに俺を見つめていた。
何かしてしまったかと不安になったが、別に俺が何かをしたとかそういうわけではなく才華自身も少し分からないらしい。
「良く分からない。ただいつもならあそこで……」
「??」
……おっと、そこで俺は気付いた。
もしかしたら無意識に才華は期待しているのか? 俺が才華の体を好き勝手するということを……むふふ、ならば期待に応えなければ――。
スマホを手にした俺だったが、大きな泣き声が聞こえたので否応にもそちらに目を向けることに。
「おかあさあああああん!! どこなのおおおおお!!」
「……迷子っぽいな」
「うん」
小さな女の子が泣きながら歩いていた。
近くの人たちも気になっているようだが、今のご時世小さい子に近づくと誤解を与えてしまうことも多いらしいし、誘拐と間違われるのも嫌なんだろう。
「ったく、近くに迷子センターあるしそっちに連れて行くか」
「……ふふ」
すぐに立ち上がった俺を見て才華が微笑ましそうに笑った気がした。
泣いている女の子の傍に近づき声を掛けたが、思ったよりも聞き分けの良い子でスムーズに迷子センターまで連れて行くことが出来た。
「お兄ちゃんありがと!!」
「おう。お母さんを行儀よく待つんだぞ~!」
「あ~い!」
決して性的な目で見れないしロリコンの気はないのだが、小さな子の純粋な笑顔というのは心が洗われるかのようだった。
「やっぱり甲斐君は優しい」
「そうかぁ? 老若男女問わず困ってる人が居ればなぁ……まあでも、危なそうな人には近づかないぜ流石に」
「そうだね。でもそこで助けられるのは甲斐君の優しさだよ」
「……あ~」
以前にもこういうことは言ったと思うけど調子に乗るから褒めないでくれ。
俺はくすぐったい気持ちを誤魔化すように才華に催眠アプリを使い、近くのネカフェに連れ込んで最高の時間を過ごすのだった。
「……ネカフェっていう狭い空間でってのも悪くないねぇ」
「♪♪」
妙に機嫌の良い才華と別れ、俺は家に帰るのだった。
そしてついにやってきた三人との遊ぶ日……まさか一緒に遊ぶ相手が三人から五人になるなんて誰も思うわけがなかったのである。
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