嬉しいことを言ってくれるぜぇ!
今まで俺にとって定期テストというものは鬱陶しいモノだった。
その学生生活における学力の調査という名目はあるものの、やはりテストというものを好む学生はそう居ないはずだ……かくいう俺だってそうだ。
しかし、今回だけは違った。
(見える……見えるぞ。俺にも答えが見える!)
そう、俺にはテスト問題の答えが見えていた。
まあこの見えていたというのはカンニングとかそう言う意味ではなく、単純に出題されている問題を簡単に解くことが出来ているのだ。
(この問題は茉莉のおっぱいを見ながら教えてもらった公式で……こっちは才華のおっぱいを見ながら教えてもらった公式……)
覚え方が不純? 黙れ黙れ!
ちゃんと俺は彼女たちの教えを忘れたわけじゃなく、しっかりとその時のことを思い出しながら問題を解いているのだ。
ただ問題を解くときに教わったことを思い出そうとすると、それに付随して素晴らしい記憶が蘇るだけに過ぎない。
「……くふふっ」
カンニングを疑われたくないので周りをチラチラと見るようなことはしない。
だが難しい問題に頭を捻りながら呻くような声も時々聞こえており、多くの生徒がそれなりにテストに苦戦している様子が感じ取れた。
『甲斐君、もっと揉んで?』
『まだ満足できないよね?』
ジッとテストに取り組む俺だったが、やっぱり勉強中の合間の記憶がこれでもかと蘇ってくる。
催眠中の茉莉と才華のスキンシップは激しく、それこそ俺のことを取り合うとまでは行かないがとにかく触れようとしてくるし、何より積極的に俺を興奮させようとしてくるので困ってしまう。
「……ふぅ」
妄想しながら問題を解き終え、俺はテスト用紙を裏にした。
今の俺はピンと姿勢よく背筋を伸ばして前を向いているが、当然のように俺の分身もピンと背伸びをして元気な様子を主張している。
「……はよ昼休みになれ」
今日は絵夢が相手をしてくれるので今から待ち遠しい。
その後、煩悩と戦いながらテストと格闘していき何とか午前のテストは満足する形で終わった。
まだ結果は出ていないものの、手応えはしっかりと感じられた。
「うあああ……やべえよ」
「赤点……うおおおおおっ!!」
晃と省吾は満足できない手応えだったらしく悔しそうだった。
そんな中、友人たちに囲まれている茉莉と目が合うと彼女はジッと俺を見つめながら口を動かした。
「……どうだった……か?」
そのように口の動きがあったと思ったがたぶん間違ってないはずだ。
俺も口の動きだけで言葉を返すように、バッチリだとゆっくり伝えると彼女は嬉しそうに笑った。
きっと茉莉は俺の頑張りが一番だよと言ってくれるだろうが、俺は自信を持ってこう言える――テスト勉強をする中、俺の目の前に常に守り神のように彼女たちの胸がぷるぷる揺れていたからこそだと。
「なあ甲斐、その様子だとめっちゃ満足した感じか?」
「相坂とアイコンタクトなんかしやがって……そういやテスト前に我妻を交えて一緒に帰ってたけど……まさか一緒に勉強なんてしたんじゃ!?」
「したわ」
「……裏切者が」
「リア充め……」
くくくっ、何とでも言うが良いその嫉妬さえも俺の養分となるんだから!
「……………」
まあでも、それが友人だからこそ笑って済ませられるが相変わらず睨みつけてくる陽キャ連中には気を付けないといけない。
流石に滅多なことを仕出かすとは思わないが、それでも気を付ける越したことはないし何より友人を含め色んな人に心配を掛けたくはないからな。
「それに俺には頼れる相棒が居るし……まあ大丈夫か」
俺はポケットに入れているスマホを触りながらそう呟いた。
今日もそうだし昨日もそうだったが、“図に乗るな”だの“消えちまえカス”などといった言葉が書かれた紙が下駄箱に毎日降臨しているのだが、本当に気にならないほどに今の俺は心に余裕がある。
「……ふっ」
だからこそ、今も尚睨みつけてくる連中を鼻で笑ってやるのだ。
俺はその後、友人たちに少し出てくると声を掛けて空き教室に向かうと既に絵夢が椅子に座って待っていた。
「早いな。いつもは俺の方が早いのに」
ちょっと友人たちと話し込んでしまったが基本的に俺の方がいつも早いのでちょっと驚いてしまった。
絵夢の状態はしっかりと催眠に掛かっているのが分かるのだが、彼女もまた催眠状態になると茉莉や才華同様に俺へのスキンシップは結構激しい。
「先輩、会いたかったです♪」
椅子から腰を上げた彼女はパタパタと足音を立てて俺に抱き着いた。
俺の胸に顔を埋めて匂いを嗅いでくる彼女の様子に、後輩というのもあってやはり愛らしさというものを感じた。
「絵夢、早速服を脱いで奉仕しろ。テスト中もずっと色々と考えてて溜まりに溜まってるんだ」
「あ……はいぃ♪ ご奉仕させてくださいご主人様ぁ♪」
ずっと溜まってたから仕方ないんだ。
しかし……絵夢がMというのは分かっていることではあるが、催眠状態の彼女に命令口調で声を掛けると途端に表情を蕩けさせるのもエッチだ。
凛としてクールな印象を与える絵夢だからこそ、この変化を見た時に驚いで腰を抜かす人も現れるんじゃなかろうか。
「……あ~」
椅子に座った俺に対し、床に膝を突いて相手をしてくれる絵夢の頭を撫でながら俺はこんなことを口にした。
「こんなお前を見れるのも俺くらいか、将来絵夢と付き合ったり結婚する人くらいなもんか当然だけど」
なんてことをちょっと呟いてしまった。
「っ……!!」
「絵夢?」
チラッと俺の顔を見上げた彼女の瞳は鋭かった。
絵夢が何を思ったのか分からないが、途端に力が強くなり俺は驚く声を上げる間もなく止めを刺された。
「……えっと、絵夢?」
「……知りません。こうしててください」
「おう……」
シャツのボタンを外したまま、絵夢は俺の腰に座るような位置に居た。
腕は背中に回し、足もガッシリと絡みつくようにしているのでダイレクトに絵夢の感触全てが伝わってくる。
声の様子もどこか不機嫌そうだったが、それでもやっぱりこうして美少女に抱き着かれているというのは気分が良い。
「良い感触だなぁ」
「……でも先輩、茉莉先輩たちに比べたら小さいですよね?」
「何言ってんだよ」
確かに茉莉や才華に比べると小ぶりと言えるDカップだが、高校生にしては十分に成長している大きさだろう。
しっかりと手の指の間から柔らかな肉がはみ出る感触もあるし、しっかりと大きい方だと俺は思っている。
「先輩、私こうやって触ってもらうのが好きです。乱暴にしてもらうのも全然好きなんですけど、こうやってただ優しく触れてもらうのも好きなんです」
「そうか? でも俺もこうやって触るのは好きだぞ」
「嬉しいです♪」
絵夢だけでなく、茉莉や才華たちに触るのが本当に大好きだ。
言ってることもやってることも相変わらずの外道だが、催眠状態の彼女たちにこんな風に喜ばれたら調子にも乗ってしまう。
「絵夢」
しかし、やはり今の俺は賢者である。
なので絵夢の僅かに抱いているであろう不安にも気付くことが出来た。
「絵夢、何か不安に思ってることがあるだろ? 俺に話せ」
「っ……はい」
それから絵夢は隠さずに話してくれた。
以前に俺が警察に行かせたあの男がいよいよ保釈されたらしく、それを絵夢は気にしていたようだ。
確かにストーカーをしていた奴が自由の身になったというのは絵夢にとって怖いことのはず、たとえそこまでの気にしていなかったとしてもその気持ち悪さを忘れることは出来ないようだ。
「……もしもまた何かしてくるならちょっと試してみるか」
「先輩?」
「何でもない」
ちょっと試してみる、これも催眠アプリの実験のようなものだ。
まあその時が来ないことを祈るばかりだが、でもどうしてか俺はそこまで不安に思ってはいない。
あの男は絶対にもう絵夢の前に現れない、そんな得体の知れない確信があった。
「絵夢、何かあったら必ず俺に言え。俺に言えなくても茉莉や才華でも良い、とにかく誰かに伝えろ。絶対に助けてやる」
「……先輩♪」
とはいえ守りたい気持ちは本当だ。
どんな反応をしてくれるのか、好奇心に突き動かされるように絵夢に対して色んなおもちゃを使ったりしたお詫びとも思ってくれていい……まあ絵夢はその度に思いっきり喜んでたけど。
「先輩は優しくてかっこいいです。そんな先輩に出会えて良かったです」
「優しくてかっこいい? 嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。でも俺はお前を含め茉莉と才華に催眠を掛けたことで出会っただけだ。ただの屑だよ」
現にこう良いながらも絵夢の胸を揉みながらその匂いを嗅ぐっていう変態行動をしているからなぁ。
「それならこう言います」
「う~ん?」
「その催眠というのがどういうものか分かりません。でも、その力を持ったのが先輩で良かったと私は……ううん、私たちは思っていますよ♪」
「っ……」
その言葉は強く俺に衝撃を与えた。
ふと絵夢の表情を見た時、彼女はしっかりと催眠下ではあったが俺を見つめる瞳はとても優しかった。
ジッと見つめ合っていれば顔が近づくのは当然のこと、俺は絵夢と少しだけ長いキスをするのだった。
「……俺で良かった……か」
昼休みが終わり、教室に戻ってからもずっと俺は絵夢から伝えられた言葉を何度も思い返していた。
そして午後のテストが始まり、当然のように俺は満足する手応えを感じた。
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