俺は正義の味方ではない、当然だろうが!
「……あ~、最高だぜマジで」
二人の美女に挟まれるこの時間、それは正に至高とも言える瞬間だ。
昨日の不完全燃焼感は既に解消され、俺は腕の中で大人しくしている我妻を抱きしめていた。
時折体勢を変えてもらってその胸に顔を埋めたり、或いは髪の毛の香りを嗅いだりして自由にしている。
「こうして我妻を抱きしめているのもそうだし、茉莉に抱きしめられているのもやっぱり良いねぇ」
そう、俺は背後から茉莉にも抱きしめられているのだ。
「気持ち良い?」
「あぁ最高だ」
「嬉しい」
嬉しいのは俺の方だぞと後ろを向くと、まるで見計らったかのように茉莉が顔を近づけてキスをしてきた。
突然のことに驚きはあったものの、催眠下の彼女とこうやってキスをすることに抵抗はなかった。
「……ぐへ……ぐへへ」
ヤバい、めっちゃキモイ笑い声が漏れて止まらない。
予約催眠と呼んでいる一定時間を置いた後に発動する今の状態、これを利用して俺はいつものように二人をここに呼び出したわけだが、当然二人には色んなことをしてもらった。
『二人とも、脱がなくて良いから胸元を開けさせるんだ』
『よし、そのまま背後から俺の顔を挟むように近づけ』
『それじゃあ二人で今みたいに挟んでもらおうかなぁ!』
思い出すだけでも興奮する記憶であり、同時にどれだけの欲望を解放してるんだよと呆れてしまうくらいだ。
「二人とも、ちょっと前に並んでくれよ」
そう言うと二人は俺から離れて目の前に並んで腰を下ろした。
前と後ろから離れてしまった感触が名残惜しいが、命令したのは俺だろと苦笑しながら改めて二人を見た。
「……おぉ」
感動に打ち震える声が出た。
決して服を全て脱いでいるわけではなく、シャツのボタンを外してその豊かな胸の谷間を俺に見せるというだらしない姿だ。
だがそれが良い! 普段の彼女たちからは決して見られないこのだらしなさが俺の興奮を煽るのだ。
「……え? 嘘だよな?」
そんな彼女たちを見ていると再び元気になってきた。
先ほど二人に解消してもらったというのになんて節操のない……俺は困ったようにため息を吐きつつ、二人に服を正すように命令したが様子がおかしい。
「おい、どうした?」
服を元に戻せと言った俺の命令を二人は聞かずにジッと見つめてくるだけだ。
まさか催眠が解けたのか、或いは効果が薄まったのかと怖くなったがどうもそうではないらしい。
「苦しそうだよ? 私たちでもう一度するね」
「うん。ジッとしてて真崎君」
「え?」
その後、二人に再びされてしまった。
こうして自律的に彼女たちが行動をすることも最近は増えてきたが、やはり俺は単純なので彼女たちから齎される快感に身を委ねるしかない。
その間もスマホで画面を確認していたが、ちゃんと催眠アプリは起動しているし充電も後二十八パーセントも残って……めっちゃ消費するなやっぱり。
「この香り、好きだよ凄く」
「クセになる……はぁ♪」
……あまりにも二人がエッチすぎる。
これは是非とも、ここに本間も交えて更に濃厚な絡みをしたいものだがまあその時はすぐに訪れるだろう。
「学年の違いがマジでネックだなぁ。面倒だけど仕方ないかそれは」
とはいえ、そんなことを考えながらも俺は最近になってこのアプリは一体どこまでの力を持っているのかが非常に気になっている。
同性でも異性でも催眠に掛けられるのは確かめているし、異性に対してこのように性的な命令すらも簡単に出来ることも分かっている。
「……う~ん」
「どうしたの?」
「……………」
悩む俺に気付いたのか茉莉が聞いてきた。
催眠状態の彼女たちにこの悩みを話すのはどうかと思うので、俺は何でもないと伝えた。
「取り敢えず二人とも、最初の時みたいにまた俺を両方から挟んでくれ」
むにゅっとした感触に両頬が挟まれた。
何が取り敢えず何だと笑ってしまうが、俺はそんな世の男子が羨むであろう状況でまだ見ていないアプリの項目を見ていく。
それでも目新しい部分は一切見えないが、注意事項の部分を少しゆっくり読んでみた。
“この催眠アプリを使う時はしっかりと相手のことを考えてください。どんな要求にも従い、どんなことも可能としますが、決して万能ではないことを覚えておいてください。深層心理に根付いた嫌悪は大きくなり、もしかしたら大変なことになるかもしれません”
「……深層心理ねぇ」
つまりこうやって俺が彼女たちに対して酷いことを続ければ続けるほど、俺に対する嫌悪感が大きくなるということか……。
そうはいってもこうして催眠下の彼女たちは不思議と俺にはかなり好意的だし、実際に催眠状態でなくても仲は良好だが……まあそれでも、意志の働いていない時に好き勝手するのは最低なことだしな。
「なあ二人とも」
こんな注意書きを見たからかどうかはともかく俺はふと呟いた。
「ずっと続けるのも難しいか?」
俺のそんな呟きに返事があった。
「そんなことない」
「止めたら嫌、許さない」
それは明らかに強い圧が込められていた言葉だった。
俺はビックリしたものの、やっぱり単純なのでそんなに好き勝手してほしいのかと機嫌が良くなったのは言うまでもない。
最後の最後、また二人の胸に顔を埋めさせてもらうのだった。
その後、二人には先に教室に戻ってもらい俺も少し時間を置いて教室に戻った。
「……いやぁ毎日が充実してるぜ。茉莉に本間、我妻の三人にはこれからも俺を癒してもらわないとなぁ」
果たしてこの学校に居る何人の男子が彼女たちに想いを馳せているのだろうか、それを想像するととてつもない優越感に気持ち良くなってしまう。
俺は午後の授業の間、先生や他の生徒たちにバレない範囲でニヤニヤしていた。
「それじゃあ甲斐、行こうぜ」
「おうよ」
そして時間は流れて放課後になり、久しぶりに友人二人とのお出掛けだ。
美少女たちと乳繰り合うのも最高だが、こうして友人たちと男同士で過ごすのもまた大切な時間である。
何より高校生になってから付き合いでかなり仲が良いというのもあり、この繋がりは大人になっても続いて行ってほしいとさえ思うものだ。
「こうして甲斐と出掛けたのは他でもないんだよ」
「何が?」
さて、そんな風に三人で街中を歩いている時だった。
ふと省吾が俺に対してそう言い、俺はどうしたのかと首を傾げた。
「どうやったら今の甲斐みたいに女の子と仲良くなれるんだ?」
「……はぁ?」
きっと今の俺はポカンとした表情だったが、何を言われたのかは理解しているので考えた。
おそらく茉莉たちのことだろうが、茉莉と我妻に関しては俺が少しばかり彼女たちの事情に介入したことは知られているのでそこが理由だ。
とはいえそれが出来るきっかけになったのが催眠アプリというのもあるし、まさか彼女たちの悲惨な事情を伝えるわけにもいかず結局詳細は伝えなかった。
「モテる秘訣は秘密ってことかよ!」
「余裕じゃねえかこの野郎!!」
「だああああうぜえええええ!!」
せっかく付き合ってやったのに帰るぞ俺は!
まあ二人もそこまでして聞き出そうとは思ってないらしく、すぐにこの質問をすることはなくなり適当にブラブラと歩くことになった。
「カラオケ行こうぜ」
「だな。ちょっと空いてるか聞いてくるわ」
カラオケ店の近くを通りがかり、省吾がそう言って中に入って行った。
晃もトイレに行くと言って付いていき、俺は少しの間待つことに。
「……え?」
二人が戻るのを待つ間、俺は見覚えのある二つの背中を見つけた。
その二つの背中は俺が昨日好き勝手するのを断念した佐々木と染谷の百合カップルのもので、二人は質の悪そうなナンパ二人組に行く手を遮られていた。
「……なんか、もうその気はないのにエンカウントすんのな」
あの二人は確かに魅力的な見た目をしているが、既に俺の中には彼女たちに対しての欲求は失われていた。
あんな風に本気で泣かれるとやっぱり気持ちは萎えてしまうし、どうしようもなく罪深いことをしている気になってしまう……まあ今更気にしても仕方ないんだが。
「……あ」
関わる必要がないのであれば無視が安定……しかし、ナンパ男の片方が染谷の肩に手を置いた。
その手を佐々木が振り払ったが染谷の様子がどこかおかしい、それこそ俺が胸を触ったあの時と似たような感じだ。
「……くそっ、しゃあねえな!」
そしてやっぱり、見て見ぬフリが出来なかった。
俺はスマホを手に近づき、体を震わせる染谷のことを考えながらこんなセリフを口ずさんだ。
「嫌がる女子を無理やり触る行為、真に度し難し」
「あん?」
「なんだ?」
俺の言葉にナンパ男が視線を向け、佐々木と染谷もビックリしたように振り向いたのだが、染谷の体の震えは収まっていた。
「誰もが見て見ぬフリをする中、俺だけは見逃していない。さて、貴様らのような奴らのことを何と呼ぶか教えてやろう。人それを、外道と呼ぶ」
「あ……」
そう、これは染谷が好きと言って俺も読んでいた漫画で登場するキャラの台詞をオマージュしたものだ。
正直自分で何を言ってんだと脳内は恥ずかしさで狂いそうだが、それでもこの外道共は俺が成敗する……俺も外道だがな!
「なんだてめえは!!」
「お前たちに名乗る名はない!」
そしてスマホのアプリを起動し、彼らを含め佐々木と染谷にも催眠を掛けることに成功した。
ボーっと俺を見つめる四人の元に近づき、一応話を聞く。
「アンタら、この二人に何の目的で近づいたんだ?」
「良い女だったから目を付けた。断ったから力づくで連れて行こうとしたんだ」
「女は男を気持ち良くさせれば良いんだよ。何も間違っちゃいねえ」
何とも下半身に正直な連中だ。
取り敢えず二人には近くにゲイバーがあるのでそこに今から猛ダッシュで向かうように命令をした。
猛スピードで走って行った二人を見送り、俺はその場から離れるのだった。
「ま、簡単に言うことを聞かせられる瞬間は見せられねえからな」
ジッと見つめてくる佐々木と染谷から離れ、俺はそろそろ良いかと思って催眠アプリを解除した。
「おぉ……ちょうど電池切れだわ」
そこでちょうどスマホの電池が切れた。
一応遠くから彼女たちの様子を見ていたが、染谷が辺りをチラチラと見回したもののすぐに佐々木と一緒に歩いて行った。
しかし何度も後ろを振り返っては佐々木に注意をされていたようだ。
「あ、どこ行ってたんだよ!」
「部屋取ったぞ?」
「悪い! 今行く!」
さてと、人助けもしたし思いっきり歌って楽しむとするか!
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