後輩の美少女に好き勝手するぜぇ!

「アンタ、最近凄く機嫌が良いじゃないの」

「そう?」

「えぇ。何か良いことでもあったの?」


 氷の女王と呼ばれる後輩をターゲットに決めた夜、俺は部屋に来た姉さんに唐突にそんなことを言われていた。

 こうして姉さんが遠慮なしにやってくるのはいつものこと、威厳を見せるためか分からないが腰に手を当てているのもどこか微笑ましい。


「まあ良いことがあったと言えばあったな」

「ふ~ん? 何よ教えなさいよ」


 ニヤニヤしながら姉ちゃんはベッドに横になった俺の傍に来た。

 ぴょんと跳ねるように俺の隣に横になった姉ちゃん、その距離はとても近く風呂上りということもあって良い香りが漂っていた。

 まあ俺としては隣に居るのが赤の他人ではなく姉ちゃん、興奮もドキドキもあったもんじゃない。


「……ふへ」

「何よいきなり……」


 おっと姉ちゃんに引かれてしまった。

 俺が思い出したのは相坂とのやり取り、催眠状態の彼女に好き勝手した記憶は本当に素晴らしいものだ。

 あの手の平に伝わった感触、顔を挟んでもらった感触、そして甘い香り、その全てが最強のおかず……こほん、素晴らしい体験だ。


「ま、良いことがあったんだよ。別に彼女が出来たとかじゃないぜ?」

「うん。それはもちろん分かってるわ。アンタの姉だものね!」

「……………」


 胸を張った姉ちゃんに俺は悔し涙を流した。

 その後、姉ちゃんは特に俺から聞けることはないと思ったのか立ち上がり扉の方へ向かっていく。


「ま、アンタが楽しそうにしてるなら良いことよ。今年で高校生活は終わりだし、ちゃんと楽しめることは楽しみなさい」

「おう!」


 その楽しみの内容を口にしたら俺は絶対に殺されるだろうが、生憎と姉ちゃんにバレることはないだろうし、姉ちゃんだけでなく他の誰にも気付かれることはないはずなので何も心配はしていない。


「とはいえ、そう言う油断がもしかしたらを招くんだよな。俺も色々と気を付けないとだな」


 今のところ絶対的な力を見せる催眠アプリ、正に神にもなれるし悪魔にもなれる力と言えるだろうか。

 まあ俺の使い道は完全に悪魔的なものではあるが、せっかくの力なのだから使わねばなるまいて。


「ぐふ……ぐふふ」


 マズイ、気持ちの悪い笑みが零れて止まらない。

 相坂に対する一方的なスキンシップはこれからも続けていくつもりだし、もしも仮に彼女が新しい彼氏を作ったとしても変わらない。

 あの柔らかさと温もりを知ったらそう簡単には抜け出せない、精々これからも相坂は俺の好きにさせてもらう。


「次のターゲットも決まったしな」


 次なるターゲットの名前は本間ほんま絵夢えむ、俺の一つ下で二年生の美少女だ。

 セミロングの黒髪に鋭い眼差し、相坂ほどではないが良いおもちおっぱいをお持ちである――ちなみに相坂はFカップらしい、これテストに出るぞ。


「氷の女王って今更だけどすげえよな」


 氷の女王、まさかそんな中二病的な名前を聞けるとは思わなかった。

 別に彼女が名乗り始めたわけではなく、単純に数多の告白を断り続けているからこその渾名である。

 彼女は今まで何十回と告白を断っているが、その断り方もかなりキツイらしく反感を集めている……わけではないようで、どうも美少女の彼女に罵られると妙な興奮を覚えるとかなんとか。


「変態ばっかだようちの高校は」


 全くけしからん、だからこそ俺が彼女の体を好き勝手してやる!!

 幾多の男性たちがフラれた彼女をこの催眠アプリで操り、今度こそ俺はこの身に抱える欲望を完全に解放する――俺は握り拳を作ってそう誓った。


「……明日も頼むぜ相棒」


 俺にとってはもうこのアプリは相棒だった。

 アプリの画面を開いてトントンと何度か画面をタップし、その後スマホの電源を切って部屋の電気も切った。


「宿題も終えたし明日の準備もバッチリ、悪事を働く前に俺も一人の学生だ。しっかりとやるべきことはやることが大切だぜ」


 そうして気持ち良く俺は眠りに就くのだった。

 そして翌日の放課後、すぐにでも本間の元に向かいたかったのだがここで少しアクシデントが発生した。


「おぉ真崎、すまんがこれを仕舞っておいてくれないか?」

「……えっと」


 物理の先生に呼び止められ、忙しいから道具を仕舞ってくれないかと頼まれた。

 面倒だと思ったし催眠でそのままスルーしようかとも考えたが、俺は分かりましたと頷いて先生から道具を受け取った。


「……はぁ、めんどくせえ」


 そう愚痴を零しながら道具を仕舞ったのだが、もう既に部活に所属していない生徒たちは下校を始めている。

 本間は部活に所属していないはず、そして基本的にあいつは登校も下校も早いという情報を仕入れているのでもしかしたら既に帰ったかもしれない。


「くそっ! つうか学年が違うから待ち伏せも難しくねえか?」


 今になってそんな問題に気付いてしまった。

 今日は諦めないとダメか、そう思っていた矢先――俺の目の前から後輩の男子が泣きながら走って行った。


「うわあああああああああ!!」


 盛大に涙を流す姿にどうしたんだと俺は首を傾げる。

 彼が走ってきた方向には屋上に続く階段があり、そこから何と目的の人物が歩いてきているではないか。


「本間!?」

「……?」


 つい大きな声が出てしまった。

 堂々と歩く彼女の姿、そして先ほどの男子の様子から何があったのかを察した。


「今の泣いて走って行った奴が居たけど……」

「告白されて断っただけです。すぐに泣くなんて不甲斐ない……」


 素直に答えられるとは思わなかったが、本間からは相手の男に対する落胆の色が見えていた。

 告白を断ったとはいえ、泣きながら逃げていく姿に彼女は呆れたのだろう。


「……良いねぇ」

「何がですか?」


 冷たい眼差しが俺を映している。

 俺はニヤリと笑って催眠アプリを起動し、こう本間に告げた。


「これからお前の家に連れて行け」

「……はい。分かりました」


 冷たい視線は鳴りを潜め、彼女は相坂と同じようにボーっとした様子になった。

 そのまま俺の前を通り過ぎた彼女、俺との距離が開くとどうしたのかと疑問を持つように立ち止まって俺のことを待っている。


「……くくっ、よっしゃそれじゃあ行くとするか」


 ヤバい、ドキドキワクワクの笑みが溢れて止まらない。

 相坂と同じように若干二人で校舎を出ると視線を集めたが、幸いにそこまで人の数は多くなかったので気にはならない。


「親御さんは?」

「いつも帰って来るのは遅いです」

「……仲が悪いのか?」

「いいえ? 二人とも私のことを良く考えてくれています」


 相坂のこともあってちょっと悪いことに敏感になっているようだ。

 単純に忙しい家庭らしく、満足に会話が出来るのは休日くらい……それでもちゃんと仲の良いご家族のようだ。


「ここが私の家です」

「……おぉ」


 本間の家は豪邸だった。

 一体どれだけの金が掛かっているんだと言わんばかりだが、聞くところによると父親は病院の院長らしくそれなら納得の豪邸である。

 俺は少しだけ圧倒されながらも本間に連れられて家の中に入り、そのまま彼女の部屋に入った。


「ほ~」


 相坂に続く異性の部屋に俺は興奮していた。

 白を基調としている部屋ということで、髪の毛の一本でも落ちていれば目立つだろうに汚れは一切見えない。

 掃除にはとことん気を遣っているようで好感が持てる。

 もちろん相坂の部屋も綺麗だったが、本間の部屋はちょっと綺麗すぎるくらいだった。


「……どの口が言ってんだって話だけど」


 まあそれはそれ、これはこれだ。


「さてと、それじゃあ早速……っとその前に、お前何か悩みを抱えていて自殺を考えていたりするか?」

「ありません。悩みはありますが、深刻なモノではないので」

「そうかそうか。それなら良し」


 どうやら相坂の時のように予想外のことは無さそうで安心する。

 俺は本間を手招きし、一切の抵抗を見せることなく近づいた彼女に手を伸ばす。


「胸触るぜ」

「はい」


 同意を得る前に既に触っていたがそれは今更だ。

 相坂よりも若干小ぶりと言ったが巨乳の枠ではあるので、やはり揉んでいてとても心地が良い。

 そのまま顔を押し付けたりして好き勝手しまくった。


「……あれ?」


 しかし、俺はそうやって本間の胸を揉んでいて違和感を感じた。

 それはあまりにも制服越しの感触が柔らかすぎるということ、相坂の時に感じた下着の固さが感じ取れないのだ。


「……もしかして、下着付けてない?」

「はい。今日はもうずっとブラもそうだしパンツも穿いてません」

「……What?」


 ど、ドウイウコトナンダイ?

 彼女から齎された言葉に俺は理解が出来なかった……とはいえ、それならば良い度胸だと俺は更に命令した。


「ぬ、脱げ」

「はい」


 彼女はしゅるしゅると音を立てて制服を脱いだ。

 下着を付けていないのは本当らしく、本当に何も着けていなかった……もちろん大切な部分は全て丸見え、本当に彼女は下着を付けていない状態で学校で過ごしていたようだ。


「な、なんでそんなことを?」


 ヤバい、声の震えが止まらない。

 これは興奮よりも若干のイレギュラーが発生した時に感じる困惑のせいだ。


「それは――」


 一歩を踏み出した彼女の様子に少しだけ体を引いてしまい、それが悪かったのか俺は背後にあったタンスにぶつかってしまった。

 するとガラガラと音を立ててタンスの上にあった一つの箱が落下した。

 落下した衝撃で箱の蓋が取れてたことでその中に仕舞われていたたくさんのアイテムが堂々と俺にこんにちわをしてきた。


「なんだこれ……紐に手錠に……鎖? それに……わお」


 大人の玩具も勢揃い、それはまるで俺が今まで見てきたエロ漫画などで見る女性を責めるアイテムの数々だ。

 俺はそのアイテムと本間を交互に見ながら、ボソッと呟いた。


「もしかしてお前……Мな方で?」

「はい。責められることを想像するのが好きです。願わくば私が酷い言葉を使って逆上して襲い掛かってくれたらなお嬉しいです。あと匂いフェチでもあります」

「……………」


 俺はその日、すぐに片付けを終えて本間の家から帰るのだった。

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