変わる未来 2
ラウドを先頭に、上階の謁見の間に行く。
謁見の間にいたのは、女王リュスと、女王の血縁者である白い髪に怯えた顔をした幼い少女達に囲まれたラウドの異父妹ロッタ、そして心配そうに顔を歪めたラウドの実妹リディア。
「ラウド! 何故?」
「砦にいたんじゃ?」
「新しき国の兵士達と戦って行方不明になったと」
現れたラウドに、三人の女性が叫ぶ。
「このルージャが、ちょっと無茶をしましてね」
リディアとロッタ、二人の妹に両脇を挟まれたラウドは、それでもあくまで冷静に、女王に向かって言葉を紡いだ。
「それに。……悲劇を減らす策を、考えついたので」
そう言って、ラウドはルージャ、ライラ、リヒトを女王の前に押し出した。
「今、この場所に『女王の宝物』は二組あります」
古き国の女王の『証』となり、悪しきモノを滅ぼす力を持つ騎士達を叙任する為に必要な女王の宝物とは、古き国を創った初代の女王が持っていた王冠、剣、首飾りのこと。その三つの宝物はどのような魔法を使っても複製できず、それ故に、置いて逃げることができないもの。
「でも、二組あれば、片方を置いて逃げても問題は無いわけです」
置き去りにされた片方を、新しき国の王である獅子王レーヴェが見つければ、彼はその宝物を再生ができないほどに破壊し、それで目的は果たしたと満足するだろう。例え後世に『女王の力を持つ者』が出てきたとしても、女王であることを証明し、悪しきモノを滅ぼす力を持つ騎士を叙任する為の宝物が無いのだから。
「なるほど」
「確かに」
ラウドの言葉に、リディアが目を丸くし、女王がにっこりと微笑む。
「みんな、逃げなくても助かるのね」
ロッタがほっとしたように呟き、少女達をぎゅっと抱き締めたのが見えた。
女王が徐に、身に着けていた宝物を外す。そしてその宝物三つ全てを玉座に置くと、女王はひらりとラウドの前に降り立った。
「それならば、……妾も生きていて良いのじゃな」
「はい」
ラウドが頷くと、女王は微笑みを浮かべたまま静かに床に膝をつき、床の一部分を椿の留め金でそっと撫でる。すぐに、かつてルージャとライラが地上に出る為に上ってきたのと同じ螺旋階段が現れた。
「ラウド、先導を務めよ」
「仰せのままに」
女王の命令に、ラウドは腰を屈めて了承する。そしてラウドは、従者であるアリの方へその小さな手を差し出した。
「おいで、アリ」
幸せそうな笑みを浮かべたアリと一緒に、ラウドが地下へ消える。
その様子を、ルージャは晴れやかに見詰めて、いた。
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