ある騎士の夢 7
衰弱が激しかったロッタは、男児を早産してすぐに亡くなった。
そしてその日の夜、リディアは王の寝室へと続く抜け道をこの前とは逆に辿っていた。
「俺を、殺しに来たか」
突然現れたリディアに、獅子王レーヴェは何処かラウドに似た不敵な笑みを向ける。その笑みを総無視して、リディアはマントに包んで胸に抱えて来た、生まれたばかりのロッタの息子を王の眼前に掲げた。
「貴方ね、ロッタを犯したのは」
裸の赤子の左肩にあるのは、獅子の痣。この痣を見たとき、リディアは赤子を王に押し付けることに決めた。そこに有ったのは、怒り。王の好色は、知れ渡っている。異母妹と知らないままリディアまで犯そうとしたのだから、その程度は推して知るべし。しかし何故、まだ子供と言って良いロッタまで犯したのか。しかも、ロッタが必死で守っていた幼い者達を殺したそのすぐ後に。王の残酷さに怒鳴りたくなるのを無理矢理押さえ込み、リディアは眠る赤子をレーヴェの腕に押し付けた。
「痣か。確かに、今この痣を持っているのは俺だけだ」
赤子を押し付けられて、それでも昂然と、王は言葉を紡ぐ。
「しかし時期からするとラウドの子ということも有り得る」
「ラウドは、妹を犯すようなことはしません」
ラウドは、貴方と違う。軽蔑の目で王を見る。こんな奴、殴るだけ無駄だ。リディアの気持ちに気付いたのか、王はふっと息を吐いた。
「分かった、乳母御に預けよう」
レーヴェ王を育てた乳母は、新しき国の高位の貴族の妻であり、夫婦で獅子王から信頼されている。その家に預けるのなら、赤子は大切に育てられるだろう。リディアは承諾の印にこくんと頷いた。
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