ある騎士の夢 4

 獅子王レーヴェに仕えているリディアは王の傍に居ないといけない。だから、ロッタの世話は実質、アリとミヤとマイラが分担して行うことになった。


 ショックが身体から抜けず呆然としたままであるロッタは、屋敷の地下室に設えられたベッドの上に座ったまま、何をされても表情一つ変えない。だが、アリが食事や身体の世話をすると、少しだけ笑うように見えるという。アリも妊娠しているから、だろうか。そのことを聞いたとき、リディアはとっさにそう思った。おそらくロッタは、アリも自分と同じ身の上だと思っているに違いない。


「何だか申し訳無い気がするのですが」


 ある日、ロッタのことを相談に来たアリは、リディアにそう打ち明けた。


 仕方が無い。リディアはアリにそう言った。命をこの世界に留める為には、騙すことも、必要。


「そう、ですね」


 リディアの言葉に、アリがこくんと頷いたのが、切なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る