憎しみの結論 1

 件の騎士隊長を無事に副都へ連れて帰った、その次の日。ルージャはレイから、一人でのお使いを命ぜられた。行き先は、副都近郊の、それでも少し遠い場所にある村。その村近辺を守護する騎士隊長に手紙を届けることが、今回の任務。勿論、ルージャに異存はない。ライラを副都に置いて行くのは心配だったが。


「ライラには、本の中にある魔法の勉強をしてもらう必要がある。魔法の制御の方法も」


 ライラの発動する魔法の効果が、大き過ぎる。魔法発動時に味方にまで被害が及んでしまっては意味が無い。レイにはっきりとそう言われれば、頷かざるを得ない。ルージャ自身も、闘い方や、探索の方法など、騎士になる為に学ばなければならないことはたくさんある。それを暗に指摘されたような気がして、内心面白くなかったが、……仕方が無い。ルージャ自身、自分はまだまだ未熟だと思っているのだから。


 村へ行く道では、幸い、何も起こらなかった。だが、副都への帰途。


「有り金全部置いてけっ!」


 突然、明らかに盗賊然とした男達三人に囲まれる。利益は少なそうだが、一人なら多勢に無勢で何とかなるだろうとの判断か。バカにしている。ルージャはちっと舌を鳴らすと、目の前の男の急所を何の前触れもなく蹴り上げた。


「いてっ!」


「このっ!」


 抵抗されるとは思っていなかったのか、目の前の男が身体を曲げて地面に倒れる。同時に、両側に居た男達が短刀を閃かせ、顔を真っ赤にして一斉にルージャに向かって襲ってくるのが、見えた。右側からの攻撃は何とか避けたが、左側からの攻撃は避けきれない。ルージャの白い制服の袖が広く割けた。


「つっ」


 傷の痛みに、思わず呻く。だが両側にいる男達は左右を入れ替え、再びルージャに向かって襲ってきた。今度は、両方ともちゃんと避けて、後退る。ルージャの最初の攻撃から立ち直った奴を入れて三人の男達の背後には確かに、黒い染みが見えた。悪しきモノ、だ。ルージャの心臓が、飛び上がる。ルージャの血で、祓えるだろうか? 首を斬らないといけない事態になってしまったら? ルージャが迷った一瞬に、男達の持つ刃がルージャの目の前に光っていた。

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