戻ってからの叱責
それから、何処をどう歩いたのか、覚えていない。
気が付くと、ルージャとライラは元の入り口の手前まで戻って来ていた。
「早かったな」
ランタンを地面に落として蔓が伝う壁に寄りかかっていたユーインが、二人を見て安堵の声を上げる。落とし穴に気を付けろよ。この廃城に入ったときと同じ言葉をユーインから聞いてやっと、ルージャにも戻って来た実感が湧いてきた。
しかしながら。
〈あれは、一体何だったのだろうか?〉
夢の中に出て来たのと同じ人々。ラウドと名乗った、騎士団長には見えない優しげな青年。そして女王を名乗る女性が見せた、慈悲に満ちた笑顔。廃城の中での出来事が、ルージャを捕らえて離さない。
「……おい、ルージャ! 大丈夫か?」
ユーインに肩を揺すられて、やっと我に帰る。
「お宝、小さいのでも良いから拾ってきたか?」
ユーインの言葉に、ルージャは戸惑いを隠しながらポケットから金貨を取り出した。
「おっ、良いもの拾ってきたじゃん」
確かに、好事家の貴族達が自慢しているのとそっくり同じ、古き国の金貨だ。ルージャの掌の金貨を見てユーインが歓声を上げる。これで、他の見習い騎士達に馬鹿にされることも無いだろう。ユーインはにっこり笑ってそう言うと、二人に帰宅を促した。
「帰ろう。まだ夜明け前だから、レイにばれずにベッドに潜り込める」
だが。
暗い道を軽い足取りで帰った三人を騎士団詰所の玄関ホールで待っていたのは、目を吊り上げて腕組みをしたレイ。そのレイの後ろには、頬を赤く腫らしたアルバが椅子に項垂れて座っていた。
「こんな深更まで、どこに行っていた?」
明らかに怒っている声で、レイが三人に問う。これは絶対殴られるな。ユーインの呟きに、ルージャは背中が震えるのを感じた。アルバの頬を見なくとも、レイの鍛えられた腕を見るだけで、殴られたらどうなるかはすぐに予測がつく。
と。そのレイの腕が不意に、ルージャの方に伸びる。あっと思う間もなく、レイの手はルージャの襟を掴み、ルージャの身体を床から浮かび上がらせていた。だが。再び唐突に、ルージャの足が床に着く。レイは唇を震わせてルージャと、ルージャの左肩を睨みつけると、何も言わずに玄関ホールから出て行った。後に残ったのは、戸惑いを隠せないルージャとライラとユーイン、そして頬を押さえて小さく呻くアルバ。
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