突然の襲撃

「……ジャ! ルージャ!」


 大声と衝撃で、目覚める。


「やっと起きたっ!」


 夢のことでまだ混乱の最中にあるルージャの視界に、顔を真っ赤にした伯母の姿が映った。


「早く逃げる!」


 何が起こったのかルージャが理解する前に、伯母はその頑丈な片手だけでルージャをベッドから引きずり下ろす。そしてそのまま、伯母の腕はルージャを小屋の裏口まで運んだ。そして。


「ルージャ、ライラを守って!」


 胸の中に押し付けられた小さな塊の温かさに、ルージャの頭がやっと起動する。次に感じたのは、物が焦げる匂い。しかし、はっとして辺りを見回しても、まだ少し薄暗い空間に炎は見えない。しかし伯母の背中のずっと向こうには、煙らしきものが確かに見えた。


「母様!」


 ルージャの胸に押し付けられた従妹で幼馴染みのライラが、伯母の方へと手を伸ばす。そのライラの手を、伯母は優しく、抑えた。


「私は、大丈夫」


 普段通りの笑顔をルージャとライラに見せてから、伯母は二人に背を向ける。伯母の腰で揺れている細長いものに、ルージャははっとして伯母の背中を見た。伯母が、いつも柔らかく笑顔で、母を知らないルージャにも優しかった伯母が、ルージャの父が丁寧に手入れをしているのを見たことがある細身の剣を佩いている。その事実が、ルージャに、切羽詰まった現在の状況を理解させた。何が起こっているのかは、分からない。だが、伯母からライラを託されたことは、分かる。だから。


「早く、逃げなさい!」


 淀みない動作で剣を抜いた伯母の背中に、頷く。ルージャはライラをしっかりと抱えるように掴むと、朝霧の濃い、集落裏の山林へと飛び込んだ。

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