第25話 襲撃

「そろそろ着くころだよな」


 空は私たちの後ろをついてきながら言った。


「あぁ、あと一つ山を越えればな」


 飛影は前を向きながら空に返した。


「マジか、山一つってあの煙が出てる方か?」


 空はその黒煙が出ている山を指さす。


「あの方角……紅花!」


「分かってる!」


 私は伊織村の様子を見るために走り出した。私の目で細かい情報を得るには、まだ距離が遠すぎる。


 私は周囲を警戒しながら伊織村へ急いだ。


「飛影、空。私が視てる範囲に敵はいないけど、警戒は怠らないように」


 私は無線で指示を飛ばす。


 伊織村の入り口に着くと民家は焼かれ、村の人たちの死体が積み上げられている。


「っ……」


 まだ村が襲われてからそう時間は立っていないはずと思い、村を襲った人物を探そうとした。


 私に向かって突進してくる男が視えた。


「きさまぁ」


『速い!』


 かけてくる男はあっという間に私の間合いに入ってきた。


 銃を取り出している暇はない。


 私はとっさに腰に着けてある短刀を逆手に持って、相手の刀を受けた。


 金属がぶつかり合う音が辺りに響く。


「その刀……やはり貴様が!」


 私の抜いた刀を見るなり、男は間髪入れずに刀を振るう。


 私は受けるので手いっぱいだ。


 私は体勢を立て直すために、距離を取ろうとする。


 だが動きを予測されているのかそれもできない。


 私は男の刀を受け続ける。


『このままだといつか斬られる』


 私は男から距離を取るために何とか隙を作ろうとする。


 男の刀をよけながら私は思考を巡らせた。


『受けてるだけじゃダメ、でも反撃もできない。なんとかして攻撃を止めないと』


 私は空達が来るであろう場所に視線を一瞬移す。


 この男はそのすきも見逃さないだろう。


「どこを見ている!」


 男の攻撃が大振りになった。私は紙一重でその刀をよける。


 相手の刀がのけぞった私の髪を掠める。


 私はその勢いのまま空中で一回転し、後ろに下がった。


 その一瞬のうちに銃を抜き、相手に一発撃った。


 その一発も刀で受けられたが、何とか距離をとることが出来た。


 私は左手で持った銃を向けながら相手を見る。


「紅花!大丈夫か?」


 空が追いついたようだ。空はこの状況を見るなり弓を構えて男に向けた。


「仲間がいたのか」


 男は冷静に戦力を分析しているように見えた。


 そして刀を鞘に納めた。


 空は男が刀を納めたのを見ると、弓を持つ手を緩めた。


「空!」


 私が声を出す前に男は走り出していた。


 男が刀を納めたのは抜刀術を使うため。


 空が気を抜いた一瞬を男は逃さなかった。


 私は銃で狙いを定める。


 だが、男は巧みに射線を外しながら空のもとへ走る。


 空も慌てて構えるがすでに遅い、男の間合いに入っている。


 男は刀を抜き、横一閃に切りつける。


 空を切り裂く音が静かに響いた。

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