第20話 新たな場所へ
村の人たちにあいさつを終えて私と飛影は門を出た。
「おーいまてよー」
私と飛影はその声を聴いて振り向いた。
すると空が村の方から走ってきていた。私たちは足を止めて空が来るのを待つ。
「どうした?いまから戦場に行くみたいな格好して」
飛影が装備の整っている空に聞いた。
「俺も連れてってくれよ」
空は唐突にそう言った。
「俺はあんたらみたいに使命感なんてもんは持ってねぇ……けどせっかく戦える力があるんだから、人のために使いたい」
空は自らの手をぎゅっと握り見つめた。
「まぁいいんじゃねぇの?あいつらと戦うときには戦力は必須だし、こいつは目も持ってる」
飛影は私を見ながらそう言った。
「な、飛影もそう言ってるしいいだろ紅花」
私の目をまっすぐに見つめながら空は言った。私は肩を降ろし
「いいわ。一緒に行きましょう」
と空が私たちと一緒に行くことに同意した。
「よっしゃ、じゃあこれからもよろしくな。紅花、飛影」
空は私たちの名前を呼んで先頭を歩いた。
「で……どこに行けばいいの?」
空は振り向いて私たちに聞いた。飛影はやれやれと肩をすぼめて言った。
「やっぱお前は面白いな。まぁとりあえず鳳仙花の仲間を探しながら情報を集める。そこから得られた情報を使ってまた何か考えるよ」
飛影の言葉を聞いた空は
「飛影ってもしかして頭良かったりする?」
と目を見開きながら言った。
「さあ?どうだろうな」
飛影ははぐらかした。が、私からみても飛影は相当な切れ者だと思う。黒の月に単独で潜入し情報を得ることは相当難しい。飛影だからこそできたことだと言えるだろう。
「それで?最初はどこに行くの?」
私は飛影に聞いた。
「そうだな……まずは伊織村に行くか。あそこはここからそう遠くないし鳳仙花にも何人かあそこ出身のやつがいる」
伊織村……私は行ったことは無いが紅月に聞いたことがある。周りと違う環境で独自の武器を作り出し、高い戦闘能力を持っていると言っていた。
蒼月と互角に戦えるほどの実力者がいるとも言っていた。その人も鳳仙花に誘ったが断わられたと紅月はがっかりしながら言っていたのを思い出した。
「伊織村って結構閉鎖的な村だった気がするんだけど……」
空は不思議そうにそう言った。
「あぁ……まぁそうだな。俺たち以外とはあまり接点を持ちたがらない奴らだったからな。けど鳳仙花とは長い付き合いだから平気だ」
飛影は空に言った。
「そっか、まぁ何かあってもこっちには紅花がいるからな。心配はしなくてもいいよな」
空は私を見て安心だと確信している。私はそんな空の方を向いて
「私に頼らないで一人でも戦えるようになってもらわないと困るわ」
と言った。
「ははっ、確かにな。いつでも紅花がいるとは限らないし、それにこいつ基本単独行動だから戦闘時に俺らと一緒にいるなんてことほとんどないぞ」
飛影は笑いながらそう言った。
「え?じゃあ俺……もっと頑張んなきゃじゃねぇか」
「あぁ、そう言うことになるな。せめて俺程度にはならなきゃだな」
飛影は空の言葉を聞いてそう返した。
「がんばってね、空」
私は空に応援の言葉をかけた。
「はぁ……道は遠いな」
空はそう言って少しうなだれた。がすぐに顔を上げて話題を変えた。
「ところで伊織村にはどうやって行くんだ?近いとは言え道なりに歩いて行ったら三日はかかるぜ」
その言葉を聞いた飛影は
「ちょっと急ぎたいから森の中を突っ切って行こうと思ってる。それなら一日で着くはずだ。ついてこれるか?」
と挑発的な笑みを浮かべながら空に言った。その笑みを見た空は
「当たり前だ。森の中歩いていくぐらい楽勝だぜ」
と自慢げに言った。
「よし、じゃあ行くか。紅花もそれでいいだろ」
飛影が私に聞いてきた。
「えぇ任せるわ」
私は飛影の考えたルートに同意し、森の中を歩き始めた。
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