7 ルーファスとナターシャ


「ねえ、私の用件もいいかしら?」


 ナターシャが切り出した。


「君は……えっと、ナターシャだっけ?」

「覚えていてくれたのね」


 ナターシャが顔を輝かせる。


 その頬が赤らんでいた。


 彼女は、ルーファスのことを本物の天才だと呼んでいた。


 彼の存在は、同じ魔術師としてショックを受けるほどだと。

 それほどまでに彼の才能は突出している、と。


 だからナターシャが彼に会いたいのは、憧れや敬意によるところが大きいのだろう。


 ……と思っていたのだが、あるいは恋心の類も含まれていたのだろうか?


「君は才能に優れていたし、特に死霊術はかなりのものだったからね。印象に残ってたんだ」


 と、ルーファス。


「えへへへ……ルーファスが、私を覚えていてくれた……うふふふ」


 いきなりデレデレになるナターシャ。


 塔の戦いでは彼女の凛々しくクールな面しか見なかったから、こういう一面があったとは意外だった。


 ルーファスの方はにっこりとした笑顔のまま。


 ふむ、悪くない雰囲気だな。

 若者同士、本当に微笑ましい。


 私は彼らを見守る気分になって、うんうんとうなずいていた。


「それで……用件っていうのは?」

「私は――あなたからどう見える?」


 ナターシャがルーファスに顔を近づける。


「うん?」

「さっき『才能に優れている』って褒めてくれたわね? あれは本音? それとも社交辞令?」


 ナターシャが畳みかけるようにたずねた。


「私は知りたいの。不世出の天才であるあなたから見て、私はどのレベルなのか……」

「君は――天才と呼ばれたいの? 一番になりたい?」


 ルーファスが微笑んだ。


「僕に認められたい……それが君の用件ということかな」


 ナターシャは一瞬、息をのんだようだった。


「……そうね」


 一拍置いて、うなずくナターシャ。


「私の中でも上手く感情が整理できていなかったけど……結局は、そういうことかもしれない。私は、あなたに認識されたい。ナターシャって魔術師は、けっこうやるじゃないか……って。ふふ、子どもみたいでしょ」

「いいんじゃないかな。うん、君は面白いよ」


 ルーファスが嬉しそうに笑った。


「友だちになれそうだ」







***

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