3 追放者ゾーリンの旅路2(追放者視点)

「バーンレイド帝国……?」

「そこで一人の少年が上位武官としてスカウトされる、という噂があるのよ」

「少年が……」

「年齢は十歳ほどだっていう噂だし、あなたが探している人間かもしれないわね」

「むむむ……」


 ゾーリンがうなる。


 ガーラに対する気持ちが逆恨みであることを、頭の片隅では理解していた。

 だが、長年蓄積した怒りを、憎しみを、誰かにぶつけなければ、もはや気がすまなくなっていた。


 その相手はガーラ以外にあり得ない。


「……本当にガーラが憎いのね」


 リーザロッテが笑う。


「名前が同じだけの、ただの別人でしょう?」

「別人じゃない。そいつはガーラだ。そう――きっと転生したんだろう」

「ち、ちょっと大丈夫なの? さすがに考えがめちゃくちゃ……」

「あり得なくは、ない」


 ゾーリンがリーザロッテをにらんだ。


「……あなたが『ガーラ』という名前の少年を追っているという噂を聞いたから、昔のよしみで情報提供に来たけど、そこまで歪んでいたとはね」


 彼女の口元に笑みが浮かぶ。


「面白いじゃない。あたしも行ってみようかな」

「お前が来てくれるなら心強い。奴への、復讐の旅路だ」

「復讐……ね。いいわよ、その歪みっぷり」


 リーザロッテがくすくすと笑うが、彼はもう聞いていなかった。

 ガーラへの怨念で完全に凝り固まっていた。


 彼を追放したことから、すべてが始まったのだから。

 理不尽であろうと、なんであろうと、ゾーリンの中ではそう筋道が立っていた。


 すべてはガーラのせいだ、と。


「行くか、バーンレイド帝国に」


 そしてゾーリンは復讐の旅路へ。


 理不尽で、自分勝手な、復讐という名の逆恨みの旅路だった。

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