32 塔を制覇する3


「こ、この動きは――」


 ネヴィルが初めて動揺したような声を出した。


 それでも、その斬撃はまったく乱れない。

 むしろ、さらに加速していく。


 さすがだ――と感嘆し、その感嘆すらも次の瞬間には消え失せる。

 完全な無の心境で、私は斬撃の雨を避け続け、やがて。


「これで幕引きだ」


 渾身の一撃を、ネヴィルの腹部に叩きこんだ。


「ぐっ……」


 うめきながら吹き飛ぶネヴィル。

 そのまま倒れこみ、起き上がれなくなった。


「たった一撃でここまで……ふふ、私の負けか」

「危なかったよ」


 私はネヴィルにうなずく。


「君が本気できていたら、私は斬られていたかもしれないな」

「本気だったさ」

「謙遜だな」


 苦笑する私。


 そう、ネヴィルの剣にはわずかだが手加減するような気配があった。


 彼にとって、私との戦いは勝負ではなかった。

 おそらくは――稽古だったのだ。


 そして、私が『無心の境地』に至れるように誘導していたような気がする。

 戦いが終わり、いちおうの決着がついたことで、ようやくわかったのだ。


「手合わせの本当の目的はこれか」

「ふん、お前の力はあまりにも不安定で見ていられんと思ってな」


 ネヴィルがようやく立ち上がる。


「雑魚相手ならともかく、今後の敵にはさらに高い次元の戦闘能力が求められる。忘れるな、ガーラ」

「忠告、痛み入る」


 私は一礼した。






次回から第6章になります。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

***

〇『いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。』

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