26 転生について2


「私の名はアレクという」


 青年が名乗った。


「ネヴィルは私に従う者だ。友でもあるけれど、ね」

「もったいなきお言葉です、主」


 ネヴィルが恭しく頭を下げる。


「いやいや、君は生前、稀代の英雄だった。私の方こそ、君のようなものから『主』と呼ばれるなんて、もったいないと思っているよ」

「主は、私など比べ物にもならないほど偉大なお方。ご謙遜を」


 ネヴィルがまた一礼した。


 アレク……か。

 その名前に聞き覚えはなかった。


 ネヴィルの方は――先ほどの『稀代の英雄』という言葉で思い当たった。


 二つ名を『覇道の騎士王』。


 今から500年ほど前、農民の出から、一代にしてバーンレイド帝国を築き上げた英雄だ。


 もちろん、すでに故人である。


 ならば、ここにいる彼は霊なのか。

 英雄の霊……つまりは、英霊。


「ん、なんだ?」

「いや、かの『覇道の騎士王』と会えるとは光栄だと思ってね」

「ふん、我が素性に気づいたということか。それなら私も名高い『武神』に会えて光栄だよ、ガーラ」


 ネヴィルが言った。


「ふふ、君たちは気が合うかもしれないね」


 アレクが笑う。


「とはいえ、今は親交を深めるのは後にしてもらえるかな。まず、彼の話からだ」

「彼?」

「高位魔族ラーガード」

「っ……!」


 その名に、一瞬息をのむ。


「彼を、知っているのかい?」

「直接の面識はないが――ラーガードの配下と戦ったことがある」


 答える私。


「なるほど、多少の因縁があるわけか」


 と、うなずくアレク。


「彼はこの異空間に侵入した。そして装置の一部を奪ったんだ」

「装置の一部を……」


 だから、下部のところが欠けているわけか。


「ラーガードは転生によって大いなる力を得ようとしている。魔王と同等か、あるいはそれ以上の存在――魔王神クラスの、ね」


 アレクの表情が険しくなった。


「もしそんなことになれば――世界は、かつてない脅威にさらされるだろう。人類滅亡の脅威に――」


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