25 転生について

 八本脚の馬はまさしく飛ぶような速さで、あっという間に神殿まで到着した。


 私はネヴィルとともに馬を降り、神殿に入った。


「この先に来てくれ。見せたいものがある」


 彼の案内で歩き出す。


「話は歩きながらでもしよう」

「では、さっそく……私の転生が不完全だと言っていたな」

「そうだ。だからお前は前世の力を完全には発揮できない」


 私の問いに、ネヴィルが歩きながら答えた。


「それは、この少年の体だからだろう。大人の体とは違って、私の全力には耐えられないんだ」

「体のことだけではない。力そのものも――お前の最強の力は封じられている」


 ネヴィルが言った。


「『力』そのものも――では、私は体と不完全な力と、二重のハンデを背負っているような状態なのか?」

「その通りだ」


 私の問いにうなずくネヴィル。


「どうすれば完全な力を取り戻せる?」


 私は重ねてたずねた。


「もう一度、『転生』装置をつかえば、おそらく上手くいくだろう」


 と、ネヴィル。


「装置は、万物の運命を司る女神――ヴァルファリアと交信するためのものだ。女神に頼み、了承を得て、対象を転生させる」

「運命の女神……」

「ただ、装置は今、一部が破損している」

「破損――」

「お前の転生が不完全になってしまった原因もそこにある……と、着いたぞ」


 私たちの前に巨大な扉があった。


 高さは十メートル以上あるだろうか。


 ネヴィルはそれを片手で軽々と開けた。

 すさまじい膂力だ。


「君は……ただものではなさそうだな」


 ギギィィ……ッ。


 扉が完全に開く。


 その向こうには淡い白光に包まれた空間があった。

 中心部には巨大な球体状の装置が見える。


 そう、塔の最上階で見たのと同じ『転生装置』だ。


 装置の前には、眼鏡をかけた理知的な印象の青年がたたずんでいた。

 白衣を身に付け、さながら学者のような風貌である。


 ただ、そこから放たれる雰囲気は、まるで武人のそれだった。


「これは――」

「装置はこの異空間に本体の半分を置いて守っている。塔にあるものは残り半分――つまり二体が一対になっているわけだ」


 ネヴィルが説明した。


「そういうことさ。案内ご苦労、ネヴィル」


 学者のような青年が声をかける。


「主の命のままに」


 ネヴィルは彼の前に恭しく跪いた。


 一体、彼は何者なのか――?


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