23 最上階へ


「アリスたちを元に戻してもらえるか?」


 私はフロアの隅に視線を向けた。


 そこにはピクリとも動かないアリスたちの姿。

 戦いの序盤で麒麟から受けた【停止】によって、完全に動きを止めたままだ。


「ああ。負けを認めた以上、もちろんだ」


 うなずいて麒麟は片手を突き出した。


「離れてくれ。【停止】を解除する」




「あの化け物に一対一で勝った……!?」


 シュナイドが驚きの表情を浮かべていた。


「すごい……やはり我が師匠は、素晴らしい」

「いや、師匠になったわけじゃないが」

「本当、すごいね……ガーラって……」


 アリスが目をキラキラさせていた。


「すごい……」


 なぜか、少し頬が赤いのは気のせいだろうか?



「……ちょっと年下だけど、いいかな」


 などとポツリとつぶやいている。


 どういう意味だ?


「恐るべき戦士ね、君は」


 ナターシャが肩をすくめた。


「私は初手ですべてを封じられ、まったく役に立てなかったわ。反省……」

「いや、麒麟は強いし、あれは完全な不意打ちだった。仕方がない」


 私はナターシャを慰めた。


「ともあれ、一人も欠けずにここまで来られたんだ。まずそれを喜ぼう」


 と、私。


「後は最上階まで行くだけだ」


 そう、いよいよこの塔の探索の目的――。


 ルーファスを呼び寄せるためのマジックアイテムを手に入れるときが来た。




 その後は特に大きなトラブルもなく最上階に到達した。


 麒麟を倒した後は、モンスターも罠もほとんどなかった。

 そして、


「ここが最上階か」


 巨大なホール状の部屋だ。


 59フロアまでと違い、迷路にはなっていない。

 このフロアは部屋が一つあるだけなんだろう。


「……なんだ、これは?」


 部屋の中央に巨大な球体が置かれていた。


 その下部にはなんらかの装置のようなものが据え付けられている――。



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