22 最終フロアボス戦、決着


「ば、馬鹿な、まだ速くなる――まだ、重くなる……!?」


 信じられなかった。


 今はまだ、自分の方がガーラより上だろう。

 だが、一秒ごとに彼のパワーもスピードも飛躍的に上がっていく。


 異常なまでの成長性。


 ようやくわかってきた。

 ガーラの、もっとも驚異的な能力は『見切り』だ。


 こちらの攻撃を見極め、パターンを予測し、先読みしてくる。

 だから、こちらの攻撃はまったく当たらなくなり、逆に彼の攻撃は的確にこちらの体を捉え始めている。


(ま、まずい――)


 麒麟の心に初めて焦りが生じた。

 そして。


「ぐあっ……」


 とうとうガーラの拳がまともに腹部に命中した。


「はあ、はあ、はあ……」


 麒麟はその場に膝をつく。


「信じられん……人間が、魔法ならともかく、武術で俺を上回るだと……!?」


    ※


 私は全身全霊の連打を叩きこんだ。


 余力のすべてを吐き出すような、渾身のラッシュだ。

 さすがの麒麟も痛打を受けて、とうとう膝をついた。


 肩で息をしている。


「どうする? まだやるか」


 私は続行の意志を確認した。


 まだ警戒は解かない。

 九割がた勝負はついたと思うが、相手は麒麟だ。

 だが、


「――いや、降参だ」


 麒麟はため息をついた。


「悔しいが認めざるを得ない……」


 最初の段階では、麒麟は私を大きく上回っていたはずだ。


 だが、私は拳や蹴りを交える中で成長を重ね、適応を重ね、やがて――あらゆる面で麒麟を上回った。

 戦いの中で限りなく進化し、強くなる。


 これが私の力。


 あるいは、人間そのものの力かもしれない――。


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